二話 義妹が私をあっさりと見つけました
二話 義妹が私をあっさりと見つけました
能はあまり警戒をした様子もなく、部屋に入ってきた。鍵がかかっていたはずだが、すんなりと突破された。
要はあまり脅威を感じずに、能を止めようとはしなかった。前に人間を拒絶して、血があれほど流れたというのに。
エスパーダは自分のフィギュアの陰に隠れた。
「お兄ちゃん、入院以来連絡ないから心配したよ」
エスパーダに夢中な要が彼女との生活を優先した結果である。
「何しに来たんだ?」
「入院費の取り立てをお母さんに頼まれたの」
「そうか。もう結構経つな」
今ある現金を妹に渡してやった。目の色が変わったので、釘を刺す。
「それ、パクんなよ」
「お兄ちゃんじゃないもん」
現金を自分の財布に入れた。その金が無事に母親に渡るかさらに不安になった。
「用済んだろ。帰れよ」
「もう一つ用があるんだよね」
能はスマホを見ながら、エスパーダのフィギュアに近付けてみる。そして隠れていたエスパーダを発見した。
「能、それ」
「想さんからもらった」
「あいつ……」
要は今いない想に怒りをぶつけたくてうずうずしている。でも妹には怒らない。
「はじめまして。宿森要の妹、高星能です」
エスパーダは驚き戸惑っている。
「お義姉様のお名前は?」
「お義姉様⁉︎」
聞きなれない単語に舞い上がったようである。
「だって二人は付き合ってんでしょ? だったらお義姉様だよね」
しばらくの沈黙の後、エスパーダはニヤニヤして、自分のフィギュアから距離を取った。
「私は小人族のエスパーダ・サリナス。コロポックル社で営業をしているわ」
能がへりくだっているので、いつものエスパーダでいくことに決めたらしい。
「小人の会社員さん!」
能は感激した。
「ねえねえ、スーツ着て見せて」
押しの強さに不快そうな顔をしてから、エスパーダは押入れの自室へ消えていった。