最終話 届いて、見て、呆れました
最終話 届いて、見て、呆れました
朝食は小人用に中華粥と油条を作り、自分達は余った油条に砂糖をまぶした揚げパンにした。
能は不満をあらわにして、おかわり用の確実に薄い中華粥を一口食べた。
「味しないよ。これ」
この反対を言われてエスパーダとケンカしたことが懐かしい。だが彼女からそのことを許されたわけではないのだ。
「味覚が違うんだ」
「私がお客のはずなのに」
「ライトハンドとレフトハンドもお客だ」
「うちに来てこんな薄い物が食べられると思うなよ」
能は不吉なことを言い残して去っていった。帰省のときの不安材料が増えた。
「大丈夫。今は出社しないと」
エスパーダに励まされる。
要は頷いた。
「いってらっしゃーい」
スミス姉妹は揃って二人に手を振った。居残りを決め込むつもりらしい。
「あんた達も出るのよ。私と要の家なんだから」
「えー」
「横暴だ」
「この家にいても昼ご飯はないよ。仕事でいないし」
「帰ろう」
「そだね」
要が言うとスミス姉妹はあっさり前言を翻す。
「能さんに服はこそに送ってもらって」
「そんときはまた要さんのポケットに入れてもらうから」
二人は自分達の服に着替え、家から出ていった。
要とエスパーダはスーツに着替えて、カバンを持ち、家を出た。二人は別々の道を歩いていく。
一週間後に小包が届いた。差出人は高星能で、宛名には宿守要、エスパーダ様と書かれてあった。
「二人を呼ばないと」
要がスミス姉妹に電話を掛け、待ち合わせ場所を指定した。例の神社だ。
要は迎えに行き、スミス姉妹を連れてきてから小包を開けた。
「うわぁ」
「さすが能さん」
二人に笑顔が浮かぶ。
そして今度はエスパーダの服だ。パジャマを着て、その上からコートを着た。
「このパジャマシルクじゃん。コートも着心地サイコーよ。あったかいし」
エスパーダ達はそう言うとスマホを取り出し、打ち込んでいる。
「能ちゃん、これでおいしいご飯食べられるかな」
「三人分だから食べられるよ」
「僕等に奢ってくれるかもよ」
希望的な観測であると要は思った。能はそんなに良い人間ではない。よって奢るなんてことは万に一つもありえない。
「それよりももう一着あるのよね。大きさ的には私のっぽいけど」
エスパーダの発言に背中を汗が伝う。あの妹は要が注文した逆バニーの衣装をこともあろうに、一緒に送りつけていたのだ。
「それは……だね。コスプレというか、なんと言うか。俺と二人っきりの時に着るやつだよ」
要が言うとエスパーダの白い目が向けられる。
「要さんが頼んだの?」
「好きだね」
二人のからかいがビシビシ要の心に刺さる。
「私、着ないからね」
「そっかぁ」
要は今年一番ガッカリした。




