表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/103

98、戦利品とかホントに怒られるよ?



「グフっ‥‥‥でござる」


「トシゾウさん、もうやめましょう」


 トシゾウは何度も俺に木刀を撃ち込んできて、空振りするたびに地面に突撃していた。

 ‥‥‥そろそろ体力の限界か?


「‥‥‥まだでござる。拙者のアリス殿への愛は、こんなものじゃないでござるぞ!」


 フラフラになりながらも、木刀を杖代わりに立ち上がるトシゾウ。


「トシゾウさん‥‥‥」


「ニア殿、いい加減攻撃してこいでござる! ニア殿のアリス殿への愛は、そんなものでござるか?!」


「‥‥‥なんの話ですか」


「何度も言うが、この戦いに勝った方がアリス殿を嫁に貰えるでござるぞ! ニア殿は拙者が勝ってもいいのでござるか?!」


 負ける気はしないのだが‥‥‥。


「‥‥‥勝手に戦利品にしてたら、多分アリスさん怒りますよ?」


 いや、確実に怒られるだろう。


「ニア殿、本気で来いでござる!」


 俺の話聞いてた?


「トシゾウさんは、何がしたいの? 勝ちたいの? 負けたいの?」


「‥‥‥ニア殿、これも何度も言うが、拙者負ける気はござらん。本当に、勝ってアリス殿を手に入れたいでござる‥‥‥」


「‥‥‥だから、俺に勝ってもアリスさんの心は動かないと思いますよ」


「うるさいでござる! そんな事はわかってるでござる!」


「じゃあこの決闘自体、無意味でしょ。もうやめましょう」


「うるさいでござる‥‥‥」


 そう言うと、トシゾウは胡座をかいて座り込んだ。

 

「‥‥‥トシゾウさん」


 俺もトシゾウの前に座る。


「‥‥‥ニア殿、このままではアリス殿がかわいそうでござる。言うなと言われているのでござるが、アリス殿は身を引く気でござる‥‥‥」


「身を引く?」


「自分には釣り合わないと、だから見守ってるだけでいいと‥‥‥」


 トシゾウは俯き地面を見つめている。


「‥‥‥何の話ですか?」


「ニア殿の話に決まってるでござろうが?! 拙者に言わせないでくれでござる!」


 急に立ち上がり頭を抱えるトシゾウ。


「‥‥‥ああ」


「‥‥‥ああ、ではござらん! なんとかならんのでござるか?! 拙者はアリス殿を諦める気はないでござる! しかし、拙者ではアリス殿を幸せには出来ないでござる!」


「‥‥‥トシゾウさん、複雑な状況ですね」


「ニア殿が言うなでござる。‥‥‥拙者は自分も幸せになりたいでござるが、アリス殿も幸せになって欲しいでござる‥‥‥」


「それで俺に決闘を?」


「‥‥‥拙者は諦める気はないでござる‥‥‥。しかし‥‥‥拙者には、もう何がなんだかわからないでござる」


「トシゾウさん、人の幸せを考えれるなんて、凄く大人になりましたね!」


「ニア殿が言うなでござる‥‥‥」


「失礼しました」


 暫く沈黙。

 2人共地面を見つめて座っていた。

 そういえばいつの間にか女神様の姿が見えない。

 気を遣って少し離れてくれたのかもな。


「‥‥‥ニア殿、教えて欲しいでござる」


「なんでしょう?」


「ニア殿はアリス殿を‥‥‥いや、やっぱり聞きたくないでござる。いや‥‥‥しかし、聞かない事には‥‥‥」


「もう、なんなんですか‥‥‥」


「‥‥‥揺れる恋心がニア殿にはわからんでござるか?」


「なんとなくわかる気がします」


「ニア殿は拙者より幼稚でござるからな。人の恋心などわかる訳がないでござる」


「なんと失敬な!」


 確かに俺は、昔からその辺に疎い。

 自覚はしている。


「じゃあ、拙者の気持ちがわかるでござるか?」


「‥‥‥アリスさんへの愛と‥‥‥俺に対する嫉妬かな?」


「‥‥‥嫉妬心でござるか。なるほど、そうかもしれないでござるな。拙者ニア殿に嫉妬してるでござるな‥‥‥」


 恋に疎く、頭の悪い2人。

 今ここに、色欲のイレイザ先生でもいれば、1発で回答を頂けそうだ。

 ‥‥‥いや、なんか変な知恵を植え付けられて、性格が歪んでしまうかもしれないな。


「しかし、お子ちゃまなニア殿が、嫉妬がわかるとは意外でござるな」


「‥‥‥失敬な! 嫉妬くらい俺だってした事がありますから!」


「ほぉ、いつでござるか?」


 ‥‥‥確かアレは。


「トシゾウさんが、アリスさんに告白してる時かな‥‥‥」


「‥‥‥ニア殿‥‥‥それを、なんで、今このタイミングでさらりと言えるでござるか?!」


「すいません、多分‥‥‥」


「ぐぬぬ! ニア殿、決闘でござる!」


 やはり俺とトシゾウの戦いは避けられないようだ。


 俺と創造主の壮絶な戦いが今始まる!







「‥‥‥あれ? 決着ついたの?」


「女神様どこ行ってたの?」


 大の字でノビてるトシゾウの横で、空を見て転がってた俺。


「‥‥‥ああ、長そうだったし、私がいたら邪魔でしょ? その辺を散歩してたのよ」


 その手に持ってる、何かの肉の串焼きはなんでしょうか?

 この人、転移でどっかの街に行って遊んでたな‥‥‥。


「女神様、トシゾウは変わりましたね」


「そうね。‥‥‥食べる?」


「いや、いいです‥‥‥」


 女神様は俺の隣に座ると、手に持つ串焼きを差し出してきた。


「全部サトシのお陰よ。ありがとう」


「‥‥‥それ、食べながら言う事ですか?」


 美味しそうに肉を頬張ってる、笑顔の金髪少女。


「本当に感謝してるわ」


「‥‥‥それはどうも」


 女神様の満面の笑みを確認して、俺はまた転がって空を見た。



 ──本当にいい天気だ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ