8、名前が決まりました
ごろつきを倒し、宿屋に帰ってきた俺たち。
「後で夕食持って行くから」
アリスさんは仕事に戻る。
ご飯が待ち遠しい。
「さて、今後の目標を考えよう」
第一にレベル上げ。
第二に金稼ぎ。
以上。
早くレベルを上げたいという欲求は強い。
待っていろスライム。
明日から本気出す。
「失礼しますね」
アリスさんの持って来た夕飯。
主食はパン。主菜は目の大きな魚の煮込み。デザートにリンゴが付いていた。
「ご飯が美味しい!」
「それは良かった、リンゴはサービス」
リンゴが好きと思われているようです。
「昼間のガーランのお礼。あいつ、しつこくてね」
「あの人は強いのですか?」
「‥‥‥強いんでしょ? 街で有名な悪だし。あんたの方が強かったけど」
俺はレベル7だが、かなり強いようだ。
ますますレベル上げが楽しみだ。
「そういえば、あんた自分の名前も覚えてないの?」
「サトシです」
「変わった名前ね、また適当に言ってるでしょ」
失礼なぬいぐるみマニア。
世界中のサトシに謝れ。
‥‥‥まあ、記憶喪失と言ってるのと、この世界の名前と雰囲気が違うので仕方ない。
「私が名前付けてあげようか!」
本名の『本田 智』で構わないのですが?
──いや、サトシでは少し目立ち過ぎる‥‥‥偽名もありか。
どうせ偽名ならカッコいいのがいい。
「『うさちゃん』とか嫌ですよ」
「‥‥‥あんたもしつこいね」
ラブリーキュートな名前は真平御免被ります。
「プー」
「オナラですか?」
「プーさん」
色々怒られそうです。
「嫌です」
「可愛いじゃない!」
「別で」
「‥‥‥ニアちゃん」
「ニア‥‥‥なんかカッコいい!」
「気に入った? じゃあ今からあんたはニアね」
名前が決まった。
俺は今日からニアとして生きていきます。
プリングの街で若い女性に大流行している、モフモフピンクのプリティーキャラ『ニアちゃん』。
その事実を俺が知るのは大分先、『ニア』という名前に愛着が湧いてしまった後の事であった。
因みに『プー』はその彼氏。