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62/103

62、魔王が現れた



 アリスさんの用意してくれた部屋で、優雅に座る鉄仮面。


「久しぶりだな」


 聞き覚えのある澄んだ声。

 ‥‥‥魔王だ。


「‥‥‥何考えてんですか。魔王が勇者を訪ねて来ちゃ駄目でしょ」


 ストーリーが台無しだ。


「せっかく来てやったのに失礼な奴だな」


 鉄仮面をしてるので分からないが、ムッとしてる気がした。



「‥‥‥どうぞ」


「どうも」


 お茶を出すアリスさんに、お辞儀する鉄仮面。

 傾く鉄仮面はかなりシュールで、笑いそうになったのは内緒だ。

 アリスさんはお茶を出すと、そそくさと退出していった。

 俺も部屋から出たい。



「レベルは上がったか?」


「‥‥‥ぼちぼちです」


 こいつと普通に話して良いのか?

 なんなら、こいつを倒す為にレベルを上げてんですけど。


「最近攻めて来ないから暇だ。たまには顔を出せ」


「強いから嫌だ」


「‥‥‥じゃあ遊びに来い」


 ‥‥‥何、怖い。

 何して遊ぶの。

 殺人遊戯とか?


「何でここに居るとわかった?」


 居場所がバレてるのは辛いものがある。

 プリングの街も危険でしかない。


「魔王軍の情報網を舐めるな。お前らがどこで何をしてるかくらい、全てお見通しだ」


 詰んでます。


「‥‥‥今日は何しに来たんだ?」


「急に逃げやがったからな、顔を見に来た」


 わかります。

 砂をかけて逃げたから、怒ってらっしゃるんですね。


「俺たちに魔王軍と戦う気はなかった。戦争を止めに行っただけなのに、そちらから攻撃してきたんだ。勝手に攻撃してきて、こっちが少し反撃したら怒るとか大人気ないぞ!」


「‥‥‥別に俺は怒ってなどいないが?」


 鉄仮面が少し傾いた。

 これは首をかしげているのか?

 動きがいちいち面白い。

 しかし表情もそうだが、こいつの行動理由がまるでわかんない。


「そうだ、あの時の事はお互い水に流して忘れましょう! 俺たちはまだ戦ってない体で。時期がきたらちゃんと戦いに行きますから」


「忘れる事は無理だな」


 やっぱり、相当根に持ってらっしゃる。


「だからって、魔王が攻めて来るのは反則だ! そんな事してたら勇者が育たないだろ。ルールはちゃんと守ろう!」


「お前はさっきから何を言ってるんだ? 俺は顔を見に来たと、さっきから言ってるだろ」


「‥‥‥じゃあ、少しお話したらお帰り頂けると?」


「すぐ帰って欲しそうな雰囲気だな。俺の顔を見て鼻血まで出したのに、冷たい奴だ」


 今すぐにでもお帰り願いたいです。

 ‥‥‥怖いです。


「‥‥‥ニア様、鼻血とは?」


 俺の後ろにいたレイラ。


「鼻血は‥‥‥鼻からの出血だな」


 言えない。

 あまりにも情けなくて言えない。


「鼻血を出すくらいだ、俺の顔は嫌いじゃないんだろ?」


「顔は綺麗でした」


「そうか、安心した」


「‥‥‥安心?」


「好きな奴に嫌われていたら悲しいだろ?」


「はい?」


「さっきから言ってるだろ。俺はお前が好きだから遊びに来たんだ。少しは優しくしろ」


 ‥‥‥。





 一人称が『俺』の魔王(♀)は堕ちてました。

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