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50/103

50、砂場の王者



 魔王城の外壁に備え付けられた門。

 対峙する魔王と俺。


「さて始めるか」


 魔王がゆらりと攻撃の構えに入った。

 細い刀のような剣をこちらに向ける。


「やっぱり戦うの?」


 こっそり道具袋に手を入れ、手頃な石を掴む。


「‥‥‥お前は何しにきたんだ?」


「何って戦争を止めに」


 魔王と戦いに来たわけではない。


「さっきから人間の兵士達が退却し始めたのはそのせいか」


 見るとアルフォード軍が撤退を開始したようで、周りには俺たちと魔族しか居ない。


「目的は達成した」


 本来の目的を見失ってはいけません。


「残念だが、こちらは四天王を2人も葬られているんだ。簡単に帰すわけにはいかんだろ、諦めろ」


 さっきの牛とボルディアとかいう村を襲ったあいつ。

 

「そんな剣で斬られたら痛いから嫌だ!」


 言いながら、隠し持った石を投げた。

 完全に不意打ち。

 

 ──捉えた!


 

 バシッ!



「石を投げてくると聞いていたが、本当に投げるんだな‥‥‥」


 顔狙いで投げた石は軽々と片手で受け止められていた。

 ‥‥‥嘘だろ。


「お前、なんで武器を装備しないんだ?」


「うるさいな! ほっといて下さい」


 こいつ次元が違う。


「‥‥‥まあいい。今度はこっちの攻撃の番だな」


 あ、攻撃してくるんですね。

 律儀にターン制を守らなくてもよろしいんですよ。

 

 魔王は剣を構え姿勢を低くした。

 来るか!



 ‥‥‥シュッ。



 ──消えた?!


「うわ!」


 次の瞬間、俺の目の前で剣を上段に構えている魔王。

 振り下ろされた剣をすんでのところでかわし、無様に後方へゴロゴロと転がる俺。

 

 ──危なっ!!


 やばい、全く見えませんでした。


「よくかわしたな」


 剣を構え直しこちらを向く魔王。

 この人本当に駄目だわ。


「剣はずるいぞ! 素手で勝負しろ素手で!」


「‥‥‥ここはそういう世界だ。それにお前も石を投げるじゃないか」


 いちいちごもっとも。


「レイラ、少しは動ける?」


 後方へ転がったので、レイラの側にいます。


「はい、一緒に攻撃ですね!」


「いや、あの人はやばい。頑張って隙を作るからいけそうなら、走って逃げて」


「ニア様は?」


「もちろん逃げるつもり。俺も後で行くから先に魔法陣で城に帰ってて」


「‥‥‥私だけ先には嫌です」


「大丈夫。自分を犠牲にして好きな女を守るとか、俺はそんなカッコ良い事は出来ない。意地でも逃げる、死んでも逃げる」


 我ながらダサい。


「‥‥‥ニア様、今なんて?」


「死んでも逃げる」


「好きな女って?」


 ‥‥‥あ。


「‥‥‥まだ考え中の事案です。‥‥‥とりあえず次の俺の攻撃は、後ろの魔族も巻き込む予定だから全力で走れ! レイラが逃げてくれないと俺も逃げられない、城で会おう!」


 キョトンとしたレイラから離れ魔王の元へ。


「密談は終わったか?」


「相変わらず律儀にターンを待ってて頂けたようで、いくぞ!」


 レイラにも聞こえるように大きな声。

 逃げるにもタイミングが大事。

 俺は道具袋に手を突っ込んだ。


「魔王様! そいつアホみてえにでかい石投げてくるんでご注意を!」


 ヴィラル黙れ。


「石の大小など俺には関係ない」


 魔王が言うと本当に聞こえる不思議。

 ‥‥‥大きい方が痛いだろ絶対。

 

「俺の持てる最大の石の威力見せてやる!」


「来い」


 嘘です。

 最大の石なんて使いません。

 俺が道具袋から取り出したのは大量の砂。

 最大どころか最小の武器。

 

「これなら避けられまい! くらえ、サンドアタック!」



 ズシャーーーッ!



「‥‥‥こいつ!」


 説明しよう『サンドアタック』とは砂を投げて相手の目を見えなくする、俺の幻術魔法だ。

 ‥‥‥我ながら石を投げたり、砂を投げたりと本当にダサいと思ってますよ。

 子供の喧嘩か。


「今だ、レイラ走れ!」


「ニア様、待ってますから! さっきの続き絶対聞かせて下さいよ!」


 走り去るレイラを確認して前を向く。

 アレな技だが、効果はあったようで魔族達はうずくまっていた。

 俺の力も加われば少しはダメージも入っただろ?


「お前はガキか」


「‥‥‥え?」


 側で聞こえる澄んだ声。

 

「うわ!」


 声の方を向くと、恐ろしい鉄仮面がこちらに向かって剣を薙ぎ払う瞬間でした。




 俺は脇腹付近に激しい痛みを感じながら、後ろに吹き飛ばされていた。

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