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32/103

32、ゲームバランスは大事



「変ですね」


 ポキ村には人が誰もいなかった。

 

「変だね」


 依頼の内容は村の畑を荒らす、猪のようなモンスター『グレートボア』の討伐だった。

 

「‥‥‥遅かった?」


 グレートボアとは戦った事がある。危害を加えなければ、自分から襲ってくるようなモンスターではない。

 それに村人が誰も居ないというのは妙だ。


「静かですね」


 レイラは少し怯えてるようだ。


「確かに不気味。もう少し村を捜索してみようか」


「はい!」





 わかった事。

 人はやはり誰も居ない。


 ──結構やばいかもしれない。


 家の中に勝手に侵入する『勇者行動』を開始した俺たち。

 見つけたのは荒らされた部屋や血痕。

 数件の家にお邪魔したのだが、それぞれ同じような状況。

 ‥‥‥ホラーゲームでしたっけ?


「やばいでしょ、ゲーム変わっちゃってるよ」


「ニア様、怖いです」


 大丈夫、俺も結構びびってます。


「村人、無事だといいんだけど」


 やはり助けに来るのが遅すぎたのか?

 依頼はズルをしてかなり早く進めているのだ、遅いということはないと思うんだけど。


「ニア様、一度城に戻ってバルカンさんに報告しませんか?」


 レイラは青い顔。


「そうだな、これは俺たちだけじゃ事が大き過ぎるかも──」


 言葉を止めたのは、急に視界に火の弾が飛び込んできたからだ。

 真っ直ぐ俺とレイラに向かってくる。

 

 ──まずい。


「ニア様!」


「いててて、また熱いな」


 レイラを庇うため前に出たので、もろに喰らった。

 まず今のレイラには耐えれないダメージ。


「フン、やっぱりこれくらいじゃ死なないんだね」


 家の影からゆらりと現れたのは、大きな鎌を持ち黒いローブを着た男。

 魔族であろう。

 額に1本の角が生えていた。


「君がニア君で、そっちの女は勇者かな。一緒にいるとは好都合」


「お前は魔族か?」


「見たらわかるでしょ?魔王軍四天王の一人ボルディアです、以後お見知り置きを。まあここで二人とも死んで貰うから、忘れてもらって大丈夫だけど」

 

 ニヤニヤと笑うボルディアと名乗る魔族。


「四天王? そんな奴が何でここにいる?」


「ニア君を殺しに。君、ヴィラルと互角だったんだって? 魔王様がかなり御立腹でね、僕が派遣されたんだ」


「こんな簡単な依頼で、四天王とか出て来るんじゃねえ。ゲームバランスがめちゃくちゃだ」


「何を言ってるかわかんないけど、ニア君は勇者でもないのにかなり強いらしいね」


 ヴィラルと戦ったのがまずかった。

 敵に存在がバレてます。


「ここで君を殺せば、僕が魔王軍ナンバーワンだ。ヴィラルの鼻も明かせるってもんだ」


 どこにでもある覇権争い。


「君にはここで死んでもらう。あ、そこの女勇者もついでにね」


 わざわざ勇者でもない俺を殺しに来たのか。

 光栄で御座います。


「村の人は何処にいる?」


「邪魔だから殺したよ」


「なに?!」


「君が来るのを待ってたんだけど、暇だから遊んであげてたんだ。でもギャーギャー泣いてうるさくてさ、別に人質にもならなさそうだし全員殺した」


 ──殺した?


 死んだのか?

 俺のせいで死んだのか?


「おっと怒ってる? 怖い顔になってるよ」


「‥‥‥自分に怒ってんだ」


 俺は声が震えるのを抑えられなかった。




 ──俺は魔王を舐め過ぎていた。

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