3、アイアムジャパニーズ
「お泊まりですか? 一晩20ゴールドです」
宿屋に入ると受付にお姉さんが立っていた。
凄く美人だけど性格がキツそう。
「泊まりたいんですが、20ゴールドとはこの硬貨で何枚になりますか?」
リュックからブヨブヨが落とすお金と思われる物を1枚取り出した。
「‥‥‥20ゴールドって言ってんだから20枚」
通貨の単位がわかった1枚1ゴールド。
「ご飯は食べれますか?」
「夕食セットだと25ゴールドです」
「それで!」
リュックから25枚取り出して、バラバラと受付に置いた。
「‥‥‥あんた、色々大丈夫かい?」
「あの、どの辺が大丈夫じゃないですか?」
「‥‥‥全部」
失敬なお姉さんである。
お姉さんが部屋に案内してくれた。
ベッドと小さなテーブルが1つあるだけの簡素な部屋。
「小さい部屋」
「‥‥‥店の人の前でよくそんな失礼な事言えるね」
まだいたお姉さん。
「なんという素敵な部屋」
「‥‥‥もう遅いでしょ」
お姉さんは溜息を吐いて出て行った。
「さて、これからどうしよう」
ベッドに転がりゴロゴロしていると、ドアをノックする音。
「失礼しますね」
ドアを開けてさっきのお姉さん。
「あんた財布ないんでしょ、使い古しだけどこれあげるわ」
失敬なお姉さんである。
大学入学時に親に貰った、ちょっとした財布は持っていた。
こっちの貨幣が大きすぎて入らないのだ。
「はい、どーぞ」
手渡された財布はただの小さな布の袋。
「何これ?」
「財布って言ってるでしょ。あんた本当に大丈夫?」
リュックをパンパンにしている硬貨が入るわけもない。
「‥‥‥物理的に無理でしょ」
「よくわかんない事言ってないで、入れてみな」
試しにリュックから取り出した硬貨を1枚入れてみた。
「消えた!」
「手を入れたら取れるよ」
「おお、取れた!」
不思議な財布。
入れると消えて欲しい枚数だけ取り出せる。
なんと便利!
「‥‥‥あんた、どっから来たの?」
「太陽系の第三惑星、宇宙船地球号の日本国、アイアムジャパニーズ」
「‥‥‥真面目に答えなよ」
真面目に答えた結果である。
「僕は記憶がないんです」
「やっぱりね」
嘘をつく方が上手くいく事もある。
「安心しな。暫く面倒見てやるよ」
キツめに見えたけど、それはそれは優しいお姉さんでした。