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25、魔族の男



「痛えじゃねえか!」


 村まであと少し、歩きながらモンスターを倒していると変なのに絡まれた。

 どこの世界にもいる変な人。


「この落とし前どうしてくれんだ!」


 イチャモンをつけて金をたかる気だな。


「ケガしたから治療費を払ってもらうぜ、あと服も汚れちまった。これだけ汚れちまうと洗濯代も高くつく、耳揃えて払ってもらうからな!」


 俺はこんな輩が大嫌いだ。

 もちろん払う気はない。

 俺は絶対に屈しない。


「そうやって、弱い人間にたかって恥ずかしくないのか?」


「どこが弱い人間だ!」


「弱い人間から金銭を要求するなんて、最低のクズがする事だ」


「テメェ、治療費と洗濯代で許してやるって言ってやってるのに、ふざけんな!」


「サトシ、払ってやらんのか?」


 なんと人の良い女神様。


「駄目です、こういう輩は一度金を払うとつけあがります」


「しかし、この魔族なんかかわいそうじゃぞ」


 女神様が哀れみの目で、絡んできた魔族の男を見る。

 魔族と言っても、見た目はほとんど人間と変わらない。銀髪の髪に整った顔、わりとイケメン。

 背中に立派な羽が生え黒い服を着ていた──筈だが今は羽が片方もげ、立派な服はボロボロに破れてドロドロに汚れている。

 それにしても服がボロボロなのに洗濯代だけで良いのか、わりと良い人?


「石なんて投げつけやがって! 羽、折れちゃってるじゃねえか。魔王様に治して貰うのは大変なんだぞ!」


「俺は何もやってない! 証拠を出せ証拠を!」


「いや、絶対テメェだろうが!」


 モンスターを倒しながら進んでいると、珍しく空高く飛んでいる物体を見つけた。

 石を投げつけたら、落ちてきたのがこいつ。

 実は落ちてきた物体がほぼ人間だったので、モンスターと間違えて人間を攻撃したと思い込みかなり焦ったのは内緒だ。


「魔王の手下が偉そうにするな! 払わんものは払わん」


「くそー、もう時間がねえ。今日は見逃してやる、覚えてやがれ!」


 捨て台詞を言うと、魔族は片方の羽でフラフラと飛んで行った。


「いやー、怖かったですね」


「其方がな」


 村は目と鼻の先。






 村に着くと少し様子がおかしい。

 

「火事ですかね?」


 一軒の建物から煙が上がっていた。


「嫌な予感がするの、宿屋に急ごう」


 

 宿屋前。

 先程の魔族が、綺麗な女性を押し倒していた。


「お前何やってんだ? 今度は女の子襲ってるのか、サイテーだな」


「テメェはさっきの!」


 押し倒された女性は泣いている。


「先程はなんかこちらが悪かったような気がしたから見逃してやったが、やはり魔王の手下は許さんぞ」


「それはこっちのセリフだ! 勇者抹殺の命令を受けていたから見逃してやったが、邪魔ばっかりしやがって魔族の恐ろしさ思い知らせて────んがはっ!!!」


 魔族が話終わる前に石を投げてみたら、顔にクリーンヒットした。


「いたた、何しやがる! まだ1ターン目は始まってないぞ!」


「うるさい、今のは俺の先制攻撃だ。今から1ターン目だ」


「もう許さん! くらえ!」


 魔族の手から大きな火の塊が飛んできた。

 

 ──これが魔法!!

 

 火の塊は俺にあたると、身体中に燃え広がった。

 

「あちちち! 何これ凄い痛い、熱い!」


 服が焦げた。


「まじかよ‥‥‥テメェ何者だ。 なぜ最強魔法が効かない!」


「いや、ちゃんと見ろ。服は焦げたし、物凄く痛かったぞ!」


 身体からプスプスと煙が上がっている。


「そんな馬鹿な、人間如きがなぜ死なない!」


 魔族はまだ何かブツブツ言ってる。

 だから、かなり痛かったって言ってるのに。


「今度は俺の攻撃をくらえ! せやっ!」


 ドブシュ! ドブシュ!


「ぐわっ、いてえ!! くそ顔ばっかり狙いやがって! しかも2回も投げやがって反則だ! テメェ次のターン休みだからな!」


「うるさい、俺は基本的に2回攻撃だ!」


「そんなムチャクチャがあるか!」


 顔をさすって魔族の男が吠えている。



 ──かなりやばい。



 今の攻撃は本気で投げた。

 まるで効いてないように見える。

 さっきの魔法も実はHPを100近く持っていかれていたりする。


 こいつ、かなり強い!

 ‥‥‥このまま戦ったら負けるかも。

 もしかしたらこっちの世界でも、もう死んじゃいますか?

 あぁ、もっとレベル上げとけば良かった。



 戦闘の雰囲気とは違い、俺は背中に汗が伝うのを感じていた。


 

 

 

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