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16、あんときの男



 王との謁見。

 玉座の前で膝を付いて待つように、ヒゲのおじさんに言われた。

 結構長い時間この格好で待ってます。


「もう帰って良い?」


「サトシ殿!」


 小声で怒られた。

 王が座るであろう玉座の横に立っている、ヒゲのおじさん。

 それなりに偉いんだろうな。

 たしか『サーベルタイガーにも勝てない親衛隊』とか言ってたっけ?


「フォッフォッフォッ、其方がニア殿かな?」


 なんか気の良さそうな声が、玉座の方からする。

 王の登場か?

 前を向くなと言われてるから、どんな奴か分からない。


「くるしゅうないぞ、おもてをあげよ」


「俺はサトシです」


 白いヒゲの王冠を被るおじさん。

 いかにも王様。

 やっぱり人は良さそう。


「王の前で虚偽はやめて下されよ」


 これはヒゲのおじさん。


「俺はサトシです」


 むしろ本当の名です。


「サトシ殿と申すのか。ではサトシ殿、先日は娘を助けてくれたそうじゃな、礼を言うぞ」


 これは白いヒゲの王冠を被るおじさん。


「まぐれです」


「まぐれ?」


「投げた石がたまたま虎に当たって、気付いたら助けてました。まさに偶然です」


「それはまた面白いことを」


 白いヒゲの王冠を被るおじさんは、にこやかに笑う。

 

「サトシは弱き者なので、お礼を言われる筋合いはありません。これで失礼します」


 お辞儀をして入り口の方へ歩き出す。

 さっさと逃げよう。


「待って下さい」


 女性の声が後ろからした。

 聞き覚えはあります、振り向くまでもない。

 姫でしょ?


「嫌です」


「待って下さい!」


 後ろから近づいてくる足音。

 嫌な予感しかしません。


「ニア様、先日はありがとうございました。私ニア様にもう一度お会いしたくて、プリングの街で貴方の事を色々調べさせて頂きました」


 逃げようとした、しかし回り込まれてしまった状態。


「私、ニア様の顔をちゃんと覚えておりますの。顔を見れば助けてくれたお方がどうか、すぐわかりますわ」


 顔が赤いぞ姫様。


「嫌です」


「‥‥‥見せて下さい」


「嫌です」


「‥‥‥お父様」


 泣きそうな顔でお父様って。

 ずるいぞ。


「サトシ殿、我らは助けてくれた本人に礼がしたい。聞けばその者は、とんでもない美男子だったらしい。少しそのマスクなどを取ってはくれんかの?」


「俺は別人です。ブサイクです。俺は偽物でやっぱりニアです。姫を助けた本物の美男子で最強のサトシは、もう遠くに旅立ちました」


「‥‥‥余は、なんだかよくわからんくなってきたぞ」


「俺もよくわかんなくなってきました!」


 王様は混乱してしまった。

 ‥‥‥俺のせいなのだが。


「マスクを取って頂ければ確認出来ます。名前はどちらでも私は構いません!」


 泣きそうな姫。


「‥‥‥わかりました。マスクを取ります。俺は美男子ではありません、別人です」


 流石にこれ以上はごまかせないか。


 ──だが俺にはまだ秘策がある。

 

 ゆっくりとマスクをずらす。

 ア○トニオ猪木ばりに、顎ををしゃくらせながら。

 これで美男子ではなかろう。


 ──勝ったな。


「‥‥‥ああんっ」


 姫は足をモジモジさせながら堕ちた。

 

 

 しゃくれたくらいでは、神話級には無意味でした。


 

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