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夢幻  作者: 遊。
第八巻雫編前編

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ささやかなお手伝い

 と、言う訳で。

俺と雫は箒を片手に拝殿に戻った。

「良いか?拝殿に飾ってある物は壊したりとしたら危ないから触るなよ。

お前は周りの床を箒で掃いてゴミを集める。

で、ちり取りで纏めてゴミ箱に捨てる。

それが終わったら雑巾で床ふきな。」

「うぇぇ…やる事一杯あるの…。」

露骨にげんなり顔だ。

「お前が自分でやるって言ったんだからな。

ちゃんとやれよ。」

「はぁいなの…。」

そう言って渋々ミニ箒セットを手に取る雫。

やれやれ…。

俺もとりあえず協力すると言った手前掃除するかと箒に手をかける。

〈こんな昼間からわざわざ子供に会いに来て掃除まで手伝うなんて相変わらず驚天動地なロリコンさんだね。〉

…かけたのだが。

そこで唐突に脳内に直接語りかけてくる声が聞こえてきて邪魔される。

これは茜の知り合いの雨が使う会話手段だ。

普通に喋る事が出来ない雨は普段筆談かテレパシーで会話をしている。

「うぉう!?…なんだお前かよ…。

それに俺はロリコンじゃない。」

と言うかなんだ…?

世界を酷く驚かせるロリコンって…。

「どうかしたの…?」

急に大声を出したから、雫が怪訝な表情でこを見てくる。

「あ、いや…何でもない、続けててくれ。」

「なんだかよく分からないけど分かったの。」

「おい、何の用だ…?」

小声で恨めしく問いかけると、ため息を吐かれた。

〈せっかちだね。

あとあなたがロリコンかどうかなんてどうでも良いよ。〉

自分で言っておいてこいつは…!

〈それより、あなたはまだ光の言った事を疑ってるんだね。〉

「っ…!?」

〈彼女の言ってる事を認めるのが癪ではあるけど彼女の言ってる事は間違いじゃないよ。

当然雫だってその括りに入ってる。〉

「でも…あいつは!」

思わず声が荒くなる。

「本当に何なの…?」

いよいよ不審な顔を向けてくる雫。

「あ、悪い…ちょっと電話してくる…。」

そうだよ、最初からそう言っとけば良かったんじゃないか…。

なんで気付かなかったんだ…俺…。

「さっさと済ませてくるの!」

「分かった分かった。」

軽く返事を返しながら、外に移動する。

〈むしろその反応でいじられたくてわざと気付かないふりしていたのかと思ってたんだけど…。〉

「あほか…。」

〈まぁそんな事はどうでも良いよ。〉

「おい…。」

こいつ…切り捨てる時は本当にあっさりだよなぁ…。

〈雫もその括りに入る…と言う事はそれがどう言う意味か分かる? 〉

「つまりあいつも生前何らかの理由で自殺してるって事だろ…?」

〈まぁそうだね。

そして当然彼女ももしまた死ぬような事があれば例外無しに存在その物が無かった事になる。〉

「っ…!?」

そうだ、雫も死神神社の巫女である以上そのリスクから逃れられない。

〈光に言われたから分かっていると思うけど彼女達にとっての記憶は時限爆弾のような物。今でこそ記憶が無くなってるから何とか自分を保てているんだろうけど、もし何らかのきっかけで記憶が蘇るなんて事があればまた同じ選択をする可能性だって充分にあるよ。〉

「まぁ…確かに…。

でも…!」

〈一つ教えておいてあげる。

近い内、彼女は消えるよ。

あなたに精一杯の笑顔を向けながらね。〉

「は!?」

唐突な雨の言葉にまた大声が出る。

〈この話を聞いてどうするかはあなた次第だよ。

私は茜さえ助かればそれで良いから。〉

「待て待て…どう言う事だよ!?

あいつが?消えるって…。

しかも笑って?」

〈聞いたままの意味だよ。

彼女は消える、幸せそうな表情でね。〉

「意味が分からねぇ…。」

〈そう、ならじっくり考えて見る事だね。〉

「…わざわざそれを言う為に…?」

〈どうだろうね。

彼女達の記憶が時限爆弾なら、あなたは差し詰め強制起爆装置のような存在みたいだよ。

これを聞いてどうするつもりかは知らないけど、安易に深入りしすぎるとどうなっても知らないよ?〉

「っ…。」

そこで雨からのテレパシー途切れる。

「何だってんだよ…。」

そうぼやきながら、空を見上げる。

雨からの突然の宣告。

もしかして最初に雨が言ってた大切な人って…。

〈相変わらずロリの極み人にあらずなロリコンさんだね…。〉

「うげ、まだ居たのかよ。」

しかもなんだその某芸人のネタを更に酷く変更したその台詞は…。

〈私は出来ればもう放っておきたかったんだけどね。

でも一応言っておく。

あなたにとってがどうであれ…うん、どうであれ…。〉

やめて?変なとこで区切って独特な含みを与えるような言い方にするのやめてww?

〈…続けて良い…?〉

ツッコませたのはこいつなんだよなぁ…。

〈さっきも言った通り私が守りたいのは茜だけ。

私が彼女の事を教えたのはあくまでもただの気まぐれ。

そこに深い意図は無いよ。〉

「つまり最初の予言が本命であいつが消えるのはついでって事か…?」

〈まぁそうだね。

私としてはそっちにかまけて茜の事はほっといてもらいたいと言うのもあるけど。〉

「そっちが本音じゃねぇか…。」

〈言っておいてあれだけど小学生にかまけてってどうしようもないロリコンさんだね。〉

こいつ嫌い…!

〈さて…それじゃ、私は忙しいから。

後はご自由に。

二人きりだからって手を出さないようにね?あ、もう足は出したんだっけ。〉

「だから紛らわしい事言ってんじゃねぇぇぇぇ!!」

俺のそんな大絶叫など聞きもせず、また雨からのテレパシーは途切れる。

誤解が無いように言っておくが、足を出したと言うのは最初に話した特訓の際につばぜり合いになって蹴り飛ばしただけだ。

それ以上でも以下でもない。

くそぅ…毎回散々人をロリコン扱いしやがってからに…。

言うだけ言ってさっさと通信切りやがって…。…おっと、やめだ。

こんな事言ったらまた割り込んできそうだ。そう考えた途端によく分かってるじゃないとか言って鼻で笑われるのが目に見えてる。

一先ず雨の事を考えるのを止め、チラリと中で今も掃除をしている雫に目を向ける。

こうやって改めて見ると巫女服を着てるって事を除けば本当に年相応な子供なんだよなぁ。「桐人さん桐人さん。」

本当にあいつが自ら死を選んだのだろうか。

大人達からすれば恐らくあいつの倍は生きているであろう俺でさえ知らない事が沢山ある子供なのだ。

当然雫はまだ知らない事ばかりだっただろう。一体何が彼女をそうさせたのか。

「桐人さん!」

まさか虐待とか…。

実際俺は、これまでそう言った境遇には一切縁を持たず大切に育てられてきたと思ってる。まぁ親父には早々に放置されてた訳だが、それに目を瞑れば、これまで何不自由無く普通の人生を生きてきたと思う。

だからそれを受けてきた人間の気持ちは分からない。

仮にもし俺がそう言う境遇のもとで育っていたのなら、耐えられない絶望に直面して全てを投げ出したくなるような時が来ていたら。若くして自ら死を選んでいたと言う未来もあったのだろうか。

ここまで考えて、自分も雨にいずれ自殺する運命だと告げられた事を思い出す。

それだって今も全く実感が無いし、信じないいようにしているのだが。

「桐人さん!桐人さんー!」

「うぉう!?」

少しの間物思いに耽っていると、突然(?)の大声で名前を呼ばれる。

慌てて振り返ると不機嫌そうに頬を膨らませてこちらを睨んでいる光が立っていた。

いや…リアルに頬膨らませるやつ居たんだ…。「折角明日はお休みだと聞いていたから一緒にお出かけしようと思っていましたのに…。朝目を覚ましたらもう居なくなっているんですからー…。」

そう言って不機嫌そうに俺を睨む光。

まぁそうだろう…。

もし起きてたら容赦なく学校にまでついて来ようとする光だ。

だから今日はわざわざ光がまだ寝てるタイミングを見計らってこっそり家を出たのだ。

「ならなんで俺がここに居るって分かったんだよ…?」

ひとまず一番の疑問をぶつける。

「今のキリキリが行きそうなとこなんてちょっと考えたら大体見当が付くって。」

「うげ…。」

「ちょwww開口一番にうげとか酷くねwwww?」

そう言って抗議する馬鹿、もとい木葉はとりあえずスルーだ。

「だから私の扱いwww」

「桐人君、私も誘ってくれないんだもん…。

木葉ちゃんとは二人で遊びに行ったのに。」

「うっ…ち、千里まで。」

どうやら三人で来たらしい。

「千里っちキリキリが誘ってくれないから一緒にお散歩でもって誘いに行ったんだってさ。そしたらキリキリ居ないじゃん?

光ちゃんも同じ状況じゃん?

で、二人して私に相談してきた訳よ。

だから多分そうだろうな~って思って二人を連れてきたら案の定って訳。」

うあww手の内バレてらww

「それで?こんなとこで何してんの?

そう言えば茜っちの姿が見えないけど。」

「茜ちゃんなら今死神様の所に行ってる筈ですー。」

俺の代わりに光が答える。

「え、そうなんだ。

残念だったね~キリキリ。」

なんだそのむかつくニヤけ顔は…。

「アホか…。」

「え~?でもわざわざ一人で会いに行ったんじゃないの~?

千里っちと光ちゃんを置いて。」

相変わらずのニヤけ顔で言ってくる。

「いや…それは別に…。」

「桐人さんは酷いのです…。

私と言うものがありながら。」

それに言いよどんでいると、拗ねた表情で光が言ってくる。

「き、桐人君!?」

「だぁぁぁ!誤解を招くような事言ってんじゃねぇ!

お前も露骨に顔顰めてんじゃねぇよ!?」

千里はあわあわしてるし木葉は露骨に顔顰めてやがるし。

そう言う悲鳴にも似た叫ぶ声は自然と大きくなる。

「何だか騒がしいと思ったら…お前らも来てたの?」

流石にそれには雫も気付いたらしい。

「お、雫っちやっほ~。」

「うげ、うるさいのなの。」

「二人して開口一番うげは酷くねww?」

まぁこの馬鹿はほっといて…。

「私今回結構功労者なのにww!なのにこの扱いww」

「雫ちゃんお掃除ですかー?」

いまだ抗議し続けている木葉を尻目に、光が雫に声をかける。

「まぁ…そうなの。」

それに渋々と言う表情で返事を返す雫。

「そうそう、こいつがいつも面倒見てくれる凪の為にちょっとでも手伝いがしたいって思ってるみたいだから協力してたんだよ。」

とりあえず経緯を説明する。

「ふむふむ、なるほどですー。

とても良い心がけなのですー。」

それに関心して頷く光。

「なのに発案者のこいつがさっきからずっとサボってるの。」

そしてそう付け足して睨んでくる雫。

「ぐっ…。」

「ありゃ~言われてますよww

そこのお兄さんww」

放置された腹いせかゲラゲラと笑いながら木葉がからかってくる。

「うるせぇよ…。」

「ふふふ、そう言う事でしたら皆でやりましょう。

その方が早く終わるし、きっと楽しいのですー。」

そう言って光が纏める。

確かにこの広さだし、本格的にやるなら人数は多いに越したことは無い。

こう言う風にさりげなく場を纏められるコミュニケーション能力は、仕事柄普段から様々な人間と関わってきただけあって流石だなと思う。

「うぇ~掃除めんどい~。」

それを聞くと木葉はそう言って露骨に顔を顰めながらぼやく。

「あ、じゃあお前いらねww」

「ちょっとwww」

「桐人君…流石にそれは酷いと思うな…。」

ここで見かねた千里がそう遠慮がちに口を挟んで来る。

「そうだそうだ!」

「まぁ千里がそう言うなら…。」

同調してギャーギャー言ってるこいつはともかく、千里にそう言われてしまったら聞くしかあるまい。

「ちくせうww」

「さっ、早く始めましょうー?」

一先ず話がまとまった(?)所で光がそう声をかけてくる。

「そうだなぁ。」

まあ…まとまったんだろう。

うん、もうそれで良いだろう。

「納得行かなぁぁい!」



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