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夢幻  作者: 遊。
第二章
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それは突然に


 放課後。


部長の蟹井があの状態(ズタボロ抜け殻)なのもあって、今日の部活は無しになった。


そう言う訳で、なのだろう。


「今日はどこ行くー?


あ、こないだ話した雑貨屋とかどうかなー。」


「あ、良いね。」


昨日に引き続きハブられてる俺。


と言うか千里、まじでやめとけ。


雑貨屋に断末魔の叫び(千里の大絶叫)が響く事になって、そうなったらそれこそホラーだ。


まさに阿鼻叫喚。


俺の手には負えんくなる。


一度荷物持ちに付き合わされた俺と蟹井ですら不気味に思ったくらいだぞ。


至って常識人の千里に耐えられる訳がない…。


などと思いながら、二人のやりとりを後ろから眺めていると、


「あ!ねぇあそこ!」


唐突に木葉が前方数メートル先を指さす。


「何だ?


どうしたんだよ。」


つられて俺も千里もそちらに目線を向けると、小さな犬らしき生き物の姿が見える。


「お~い!ワンちゃん!こっちおいで~!」


木葉が呼ぶと、それは高速で近付いてくる。そして俺達は瞬時に悟った。


「うわ、なんだこいつ!?」


それが本当は犬なんかじゃない事に。


これまで見た事のある、どんな生物にも類を見ない化け物だと言う事に。


まず目に付くのは、三つの大きな目。


そして鋭い牙が見え隠れする口。


黒い毛皮に覆われた体に、牙と同様に鋭い爪。


「ひっ…。」


怯える千里。


それもその筈で、俺もその気味悪さに後ずさりしていたくらいだ。


あまりに現実離れした出来事に、一瞬夢でも見てるのでは?


と疑いそうにすらなる。


「と、とにかく逃げるぞ!」


慌てて、千里の手を掴んで走り出す。


「えぇ!?あ…うん!」


なんでこの状況でちょっと顔赤くしてんだよ…。


「あ~ん!待ってよ~!」


と、その後ろから木葉が続く。


その更に後ろから化け物が追いかけてくる。


「くそっ…しぶといな。」


どれだけ逃げても、追跡をやめようとしない化け物。


こちらは疲労で徐々にペースが落ちていくのに対し、化け物は体力と言う概念がそもそも無いのだろう。


むしろどんどん加速していく。


「ってか…。


増えてんじゃねぇか!?」


いつの間にか増援を呼びやがったらしい。


数十匹はいるだろう化け物が勢いよく迫ってくる様はまさに圧巻…なんて呑気に解説なんかしてる場合じゃねぇ!


「ね…ねぇ…桐人君…。


どこまで走るの…?」


元々体力の無い千里はもう限界が近いらしく、息が上がっている。


「キリキリ~…。


もう走るのやだ~…。」


「うーむ…こいつは別にどうでも良いけど、確かにこのままじゃマズいな。」


「ちょっとwww!ツンデレなのか!?仕返しなのか!?」


「はいはい、ツンデレツンデレ。」


「ちくせうw」


「それよりお前!なんか良い逃げ場所知らないのかよ?」


隣でぶーぶー言ってる木葉に聞いてみる。


「え~!?そこで私に振る~!?


…でも、う~んそうだな~。


教えてほしいなら…誠意を見せて貰わないとね~…。」


うわ、あくどい顔!


思いっきり調子に乗ってやがる!


非常に癪だが、今は一刻を争う事態だ。


くそ、仕方無いかぁ…。


「頼むよ。」


「う~ん?何だって?」


うわ、殴りてぇ…。


「マジ頼りになる木葉さんおなしゃす。」


「え~?そこまで言われちゃ~仕方無いな~。


お~れに任せとけ~い!」


どこぞのクイズ番組で見たかけ声で叫ぶ木葉


よし、こいつ後で殴ろう。


「ついて来て!」


そう言って俺らの前方に出る木葉。


なんだよ、こいつやっぱ体力温存してたんじゃねぇか。


非常に嫌な予感しかしないが、今はこいつを信じてついて行くしか無さそうだ。


その時木葉がひっそりと笑みを浮かべ、


「計画通り。」


と呟いていた事など、その時の俺は知らなかった。

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