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夢幻  作者: 遊。
第六巻プロローグ

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誠太郎

 昔々、ある村のある場所に誠太郎と言うそれはそれは正義感の強い若者が居ました。


力強く、心優しく、困った人をほうっておけない彼は誰からも愛され、村人達から大変信頼されていました。


ある日誠太郎は、村人達から鬼ヶ島に居る鬼の話を聞きます。


とても強大な力を持った鬼を、村人達は怖がっているようでした。


いつ村に来て大暴れされるかも分からない。


誰か退治してくれないかと村長は言います。


すると、村人達はそれなら誠太郎にお願いしたらどうだろうと提案しました。


誠太郎はそれに快く応じ、村の平和を守る為に鬼退治に出かける事になりました。


…これは、昔俺の親父が描いた絵本の冒頭だ。


誠太郎は鬼ヶ島に向かい、自分の信じた正義を貫こうとする。


そして親父はこの先を読まず、結末だけを俺に教えた。


最終的に彼は鬼退治をやめてしまうのだと。


悪だと信じてやまなかった鬼の退治をやめ、最終的には正義と言う言葉でさえ信じる事をやめてしまうのだと。


そして親父は俺に聞いてきた。


この結末を聞いてどう思う?と。


子供の頃の俺は、それに納得がいかなくて、親父に何度も文句を言った。


こんなのヒーローじゃない。


俺が知るヒーローは、悪を絶対許さないし、

信じた正義を最後まで貫く。


どんな強敵にも勇敢に立ち向かい、どんなに苦戦を強いられても最後まで諦めずに立ち向かう。


そして最後には勝利し、己の正義を示すのだ。


俺が憧れたのはそう言うヒーローだし、ヒーローとはそう言う物だと思っていた。


だから俺も、いつかはそんなヒーローになりたいと思っていた。


筈だったんだ。


でも今なら分かる。


親父がこの作品で何を伝えたかったのか、そして信じ抜く事をやめた誠太郎の気持ちも。


これまで俺は、実際に何かを信じてそれを守る為に勇気を振り絞り。


時には自分よりも大きな敵にも立ち向かい、時に圧倒的な実力差を見せ付けられ。


何度も挫けそうになりながら、それでも何度も起き上がって。


自分の正義を貫こうとして。


仲間を、正義を、自分を、精一杯信じた。


たとえ信じると言う行為に一切の根拠が無くても、信じれたんだから信じれば良いと。


自分は間違ってないと言い聞かせて。


そうしている事で、おこがましくも本当のヒーローになれているつもりでいたんだ。


何一つ守れていなかった癖に。


そんな俺に現実は容赦などしなかった。


いつか親父が言ったように、何かを信じ抜く事がどんなに難しいかを嫌になる程思い知らせてくるのだ。


どうしてこうなったのか。


どうしてこう思ってしまったのか。


誠太郎は何故信じる事をやめ、戦う事を諦めたのか。


その正義を示す事が出来なかったのか。


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