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夢幻  作者: 遊。
第五巻第三章

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光の力


 「さて、始めるか。」


夕方の死神神社。


「全く…勝手な事ばっかりしやがってなの!


大体お前らは…」


ブツブツ言ってる雫は一先ず放っておき、刀を取り出して引き抜く。


一方の康一は両手にナイフを掴んで同じく戦闘態勢に入る。


「最初に言っておくが俺は手加減は出来ない主義でな。


最初から本気で行くぜ。」


「望むところだ!」


叫びながら斬りかかると、瞬間に康一が消える。


「なっ…消えた?」


と、同時に腕に切り傷が出来る。


「っ…。」


「どうした?動きがスローモーションに見えるぜ。」


再び現れた康一に斬りかかるも、また消えて今度は背中を切られる。


「ぐっ…!?」


「当然なの。


そいつの力は高速で動ける力なの。」


呆れ顔でため息を吐きながら雫が言う。


「そう言うこった。


だからお前は俺を捕まえる事も切る事も出来ないって訳だ。」


「なるほど、要するに凪っちの時と同じパターンって訳ね。」


そう、凪は自然を操る巫女。


自然現象を操れるだけじゃなく、風のような早さで動き回る事も出来る。


「桐人さん、思い出すです。


凪さんと戦った時の事を。」


「凪と戦った時の事…。」


「なんだか知らねぇが今度はこっちから行くぜ!」


「そうはいくか!」


出てきたバリアが康一を弾く。


「おっと、なるほど。


それがお前の力って訳か。」


「もういっちょ!」


バリアが二つになる。


牧乃先輩と光の話では力は持ち主の解釈次第らしい。


それなら…。


突然バリアが黒くなる。


「な…何だ?」


流石の康一も不審に思ったのか姿を現す。


「さぁ、俺が入ってるバリアはどっちだ?」


「お~中々面白い事考えたね!」


と、感心する木葉。


「感心してる場合かなの…。」


「そんなの二つ同時に攻撃すりゃ良い話だろうが。


無限斬!」


また消えたかと思うと、一瞬で連続の攻撃が仕掛けられ、バリアがやがて壊れる。


「正解はどっちでもない!」


飛び上がって斬りかかる。


「へぇ…やるな。


でも、当たらねぇよ!」


再び消える康一。


そしてまた切られる。


「っぐ…。」


くそ…流石に同じ手は通用しないか…。


でもどうする…?


こいつにダメージを与える為には何とかして動きを止めるしかないぞ…。


「おいおい、やっぱり大した事ないじゃねぇか。」


「くそっ…。」


大見得切っておいてなんてザマだ。


俺はまた負けんのかよ…。


しかもこんな奴に…。


そう思っていた矢先。 

 

「桐人さん、真実とは心の目で見る物なのです。」


唐突に光がそう呟く。


「心の…目?」


「目を閉じて神経を研ぎ澄ませばきっと見えて来ますです。」


言われて俺は目を閉じる。


「は、遂に負けを認めたのか?」


「光ちゃん!何言って…!」


「しー…ですー。」


木葉の問いかけに光は口元に手を持ってきてしーのポーズ。(しているのだろう…。


目を閉じてるから分からん。)


「見えた!」


そう言って刀を振り下ろす。


すると刀が命中する。


「あ、当たった!」


「なっ…俺が切られただと…!?」


康一はそれに戸惑いを見せる。


「え、何々!?キリキリ悟りを開いたの!?剃る?剃っちゃう!?」


などと驚いてるようでその身面白がってるような表情の木葉。


「アホか…。


目を閉じて集中してたらこいつの動く音が聞こえたんだよ。」


俺だってよく分かってないのにそれで丸坊主にされてたまるか…。


「音…だと?」


明らかに動揺する康一。


「え、そんな音しなかったよ?」


と、千里。


「私の力で一時的に桐人さんの感覚が研ぎ澄まされたのですー。」


それに光が補足する。


「…は?お前そんな事出来んのか?」


「はいですー。


私、自分が戦う能力は無いですけどサポートする能力はそれなりに持ってるですー。」


「お、お前…本当の本当に死神の使いだったんだな…。」


「むー…だから最初からそう言ってるじゃないですかー。」


「いやキリキリ…それ絶対わざと言ってるよね…。」


「はん、一回攻撃を当てたくらいで粋がってんじゃぇよ!」


「桐人さん、私の力を持った今なら妖刀夢幻で新しい力を使える筈です。」


「新しい…力?」


言われて刀に目を向けると、刀が強く光り始める。


「お~キリキリの刀が光ってる!剃った頭みたいに。」


「その発想から離れろ…。


お前が変な例え方するから刀から出てる光の強さが読者に微妙だと思われるだろうが…。」


ツッコミがメタになったが仕方あるまい。


実際その光は前に蛙の化け物と戦った時の比じゃなかった。


「妖刀夢幻が私の力に反応したのです。


今です、桐人さん。


ジャンプして刀を縦に振ってみてくださいです。」


「こ、こうか!?」


聞きながら飛び上がると、棒高跳びの選手も真っ青な程の跳躍。


「き、桐人君凄い…。」


「キリキリがどんどん人間離れしていく…。」


感心する千里と哀れむ木葉。


飛び上がった時マジで高くて普通に怖かったのは内緒だ。


と言うかこれ普通の反応だよね…?


「そ…それで刀を縦に振るんだったな。」


そのままの勢いで刀を振り下ろすと、流波斬の時とは比にならない程の大きさの衝撃波が放たれ、地面を深く抉りながら康一に向かっていく。


「っ…!?」


慌ててそれを躱そうとするも、間に合わず康一の肩を掠める。


「ぐっ…!や…やるじゃねぇか…。」


「もういい加減にするの!」


と、そこで雫が大きな声で怒鳴った。


「光も光なの!味方同士の争いに加担するなんて何考えてるの!?」


「むー雫ちゃん怖いのですー…。」


「お前も分かってるの!?さっきのあの攻撃をマトモに喰らってたら死んでたの!」


「あーはいはい…分かってるって。


ただこいつの実力を試してみたかっただけだって…。」


「分かってないの!それでもしもの事があったらどうするつもりなの…!」


そう言う雫の目には涙が滲んでいた。


それを見た康一は気まずそうに頭を掻いて、


「おい、桐人。


ここは一つ休戦と行こうぜ。


お互い目的は同じなんだ、この決着はその目的を果たしてからって事にしようぜ。」


そう提案しながら手を差し出してきた。


「まぁ…そうだな。」


今度はその手を強く握り返す。


こうして俺達はまた勝負をする約束をして協力をする事にした。


「な?上手くいっただろ?」


俺に聞こえないように康一が雫に言う。


「そう言う問題じゃないの…。」


鼻声の雫。


「だから悪かったって…。


戦う相手が相手だから煽っておけばもっと強くなろうと思うだろうと思ったんだって。


結果オーライじゃないか。」


「やり方に問題があるって言ってるの!」


「まぁ…自覚はしてるって。」


「お前…やっぱり性格悪いの。」


ちなみに…


「え!?何これどうなってんの!?」


この後二人して、帰ってきたばかりの凪にお説教されましたとさ。


まぁ実際当然の反応だろうが…。


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