表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢幻  作者: 遊。
第五巻第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/142

新しい仲間?


 「お前ら遅いの!」


茜の代わり、とばかりに俺達を出迎えたのは仏頂面の雫。


実際出迎えって言葉が不適切なのは茜と同じだなぁ…。


その内この子鼻で笑って心底どうでも良いとか言い出すんじゃないの?


いや…そもそもこの想像自体が心底どうでも良かったわ…。


「こっちにも色々有るんだって…。」


あの後…。


一先ず部活帰りに千里を迎えに行き、そのまま三人で死神神社に向かった。


さっきの喧嘩の件はその間にお互いが謝り合って解決し、もうすっかりいつもの二人に戻っている。


「それで?」


一応の事務連絡。


「今日も戻っていないの。」


「そっか…。」


これまで見てきたから分かるが、あいつは結構頑固で、一度決めた事は基本曲げない。


だから簡単に戻ってくる訳無いなんて分かっている事ではあるが…。


やっぱり毎回この瞬間には少なからずのショックがある。


「でも今日は茜の事とは別にお前らに用事が有るの。」


「用事?」


「そうなの。」


「へいへい…ここで俺の出番って訳か。」


そう言って神社から出てきたのは俺達と同年代くらいの男。


着崩された制服は俺達が通う白神高校とは違う物。


チャラさ全開の茶髪ロン毛。


いかにも柄の悪い不良っぽいタイプの男。


「…一応紹介するの。


こいつは佐久間康一。


お前達と同じ茜の力で能力を得た人間の一人なの。」


「どうも。」


見た目こそ悪ぶってるものの、一応律儀に頭を下げてくる。


「ど、どうも。」


それに俺もお辞儀で返す。


「こいつはついこないだ凪が働いてる店に来たらしいの。


だからその時に頼んで協力してもらう事になったの。」


「成程。」


「一応今凪が茜を探しながら日向誠の情報も集めているの。


これもまた何か分かったら教えるって言ってたの。」


「そっか…。」


本当、恐れ入る行動力だよな…。


今日も居ない訳だが、最近帰りが遅いのはそう言う理由があったのか。


まぁとりあえず…日向誠は化け物を作り出したり出来るだけじゃなく、全てを壊す力を持っている。


だから仲間が増えるなら頼もしいし、敵の情報も多いに越した事はない。


などと考えていると、康一が俺の方をじっと見ていた。


「ふーん、こいつが海真桐人か。


冴えねぇ顔してんな。」


「なっ…。」


「あはは、そうだねww」


ちょっと木葉さんww?そこは否定してよww


いや分かってるよww?お前はそう言う奴だしどうせ俺は冴えないさwwちくせうwww


「本当にお前、戦えんのか?」


「まぁ一応雫っちにも凪っちにも勝ってるしそれなりに頼りになると思うよ?」


「ふーん、それならまぁ協力させてやっても良いけど。」


「そ、そう言うお前はどうなんだよ…?」


「ん、俺?最強に決まってんじゃん。


実際俺一人で余裕なんだよ。


でもなんかこいつが協力しろってうるせぇからさ。


だから仕方無いし協力させてやるって言ってんだよ。」


くっ…こいつは…。


そのあまりに上から目線な態度に、思わずカチンと来る。


「そこまで言うなら見せてみろよ。」


だから言いながらバットケースに手をかける。


「おー怖い怖い。


野蛮人はすぐキレるな。」


「っぐ…。」


そんな見た目のお前が言うか!


と言いかけて口ごもる。


「き、桐人君…落ち着いて…。


仲間なんだから仲良くしなきゃ…。」


そこに千里が宥めに入る。


「おう、君良い事言うね。


名前は?」


「あ…えっと。」


「悔しいかもしれないけどこいつ性格は悪いのに実力だけは確かなの…。」


「おいおい、ひでぇなぁ。


もしかして俺嫌われてる?」


「当たり前なの!実力が無かったらお前なんて絶対に呼ばないの!」


「にはは…。」


それには木葉も苦笑い。


「ま、そう言うこった。


精々足を引っ張るなよ?」


そう言って手を差し出してくる康一。


それを俺は払いのける。


「おっと。」


「お前の力なんか借りるか!行くぞ、千里!!」


「え、あ…うん…。」


「あ~ん…待ってよ~!」


千里の手を引いてその場を強引に去る。


それに木葉も続く。


「だぁもう!


お前性格悪過ぎなの!」


桐人達が帰ったのを確認すると、遂に怒りが爆発する。


その怒声に耳を塞ぐ康一。


「まぁまぁ落ち着けって…。


てか声デカ過ぎじゃね…?


俺の鼓膜潰しに来てる?」


「本気で潰してやろうかなの…。」


恨めしく睨み付けてやる。


「おー怖い怖い…。


それに性格悪いのは自覚してるっての…。」


「ならもっとどうにかするの!


日向誠はお前が思ってる程ヤワな相手じゃないの!分かってるの!?」


「あーはいはい…分かってまーす。」


「全然分かってないの!」


「だから…声デカ過ぎ…。


分かってるって…。


まぁ見てなって。


なるようになるし、いざとなったら俺がどうにかするよ。」


「むー…信用ならないの!」


「おいおい…。


ちょっとは信用してくれよ…。」


「これで本当に上手くいかなかったらお前の耳の穴に氷柱突き刺してやるの。」


「いやwwそれ鼓膜破れるどころか普通に死ぬからww」


「突き刺されたくなかったらもっと真面目にやるの!」


「いやいや…普通に真面目にやってるって。


ちゃんと考えがあるんだって。」


「どうだか…なの。」


ため息が出る。


一緒に居て仲良くしていた訳ではないけど、茜が居なくなってから、ここでの生活は確実に変わった。


最近凪の帰りが遅いのもあって一人で居る時間が増えたのもその一つだ。


一人で居る時間が長いと、たまに寂しくてたまらなくなる時が有る。


体が震え、時には涙が止まらなくなる時もある。


それを凪に見られて心配された事もある。


それがただの寂しさによる症状じゃないと言う事は子供の私でも何と無く分かっていた。


初めて見る筈なのに懐かしく感じたりする事もあるし、それがたまらなく怖い時もある。


でもそんな不安を、凪はいつも安心に変えてくれる。


お願いなの…茜。


早く…戻ってきてなの…。


心の中で小さく祈る。


もしまた戻ってきたら、こないだまでのように三人でご飯を食べながら今度はもっと沢山話が出来るだろうか?


茜は口が悪いし、どうでも良いと言われるだろうか?


それでも良い。


もっと話したい。


三人揃って居なくちゃ嫌だ。


茜が居ないだけで、同じ場所が別の場所のように見える。


わがままだって言われても良い。


そうじゃなくちゃ…もう嫌だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ