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夢幻  作者: 遊。
第四巻第二章

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※ロリコンに性別は関係ありません


 「う~みだ~!」


電車に揺られて一時間程。


そこから徒歩で数分の船着き場から、俺達は木葉の親戚が所有しているとクルーザーに乗り込んだ。


現在はそれを使って目的地である別荘に行く為に海を渡っている最中である。


「別荘って…プライベートビーチまで付いてるやつなのかよ。


このクルーザーもだけど…本当にブルジョワかよ…。」


「へへへ~ん!すごいだろう!


もっと私を褒めなさい!」


などと別に嘘をついた訳でもないのに鼻高々な木葉。


「ワーコノヒトスゴイナァ。」


そんな木葉に最大の敬意を持った対応を返す。


「ワーコノヒトテキトウダナァ…。」


駄目かぁ。


「大体お前の親戚なんだろ?持ち主って。


別にお前がすごい訳じゃないだろ。」


「ぶ~…そうだけど~。」


うん、とりあえず横で拗ねてるこいつはほっとこう。


「ちょっとwwww」


ここいらで他の奴らの様子でも書いとこうじゃないか。


今回の引率であり責任者でもあるちなっちゃんこと臨時さんは、船に乗ってからソッコーで船酔い。


今は御手洗さんの看病の元船内のベッドでぶっ倒れている。


本当…大丈夫かこの人…。


で、雫と光は船の甲板から海を見て大興奮。


「おー!! すっげぇの!」


「綺麗ですー!」


そんな二人の姿を後ろから微笑ましそうに見守る凪。


「二人とも気を付けてよー?落ちないようにねー。


あと、風で帽子が飛ぶからしっかり持っておくんだよー。」


「「はーい(ですー、なのー)!」」


二人とも海に行くのは初めてみたいだし感動もひとしおだよなぁ。


「ふぅ…。何がそんなに楽しいのかしら…。」


そうぼやきながら椅子に座ってふんぞり返っているのが誰かなんてもう説明するまでもないだろう。


「…何?お前カナヅチとか?」


「違うわ。」


使う力が炎属性だから水に弱いのかと思ったし、そこから単純に水に対する嫌悪感からそう言う皮肉を言ってんのかとも思ったがどうやら違うらしい。


「炎が水に弱いなんてゲームの話でしょ…?


極端な話、私が焼き払えば水属性の雫でも死ぬわよ…。」


「本当に極端な話だな…おい…。」


だからなんでお前がそんなマニアックな知識を知ってんだよ…?


何、プレイヤーなの?


「それも違うわ…。


情報と言う物は本人の意思に関わらず常に発信している物だし、自分もそれを受信している物よ。」


「はぁ…要するに自分の周りにやってる奴がいるから意思とは関係無しに覚えたと…?」


「えぇ…とても遺憾な事だけれど…。」


あらまぁとっても気持ちのこもった遺憾だことww


「でもなら泳げんのかお前?」


「あなた…忘れたのかしら…?


私は昨日までこんなお遊びで出かけた事もないし水着さえも持っていなかったのよ…?」


「…つまり泳げないと?」


「だから…違うと言っているじゃない…。


泳げないんじゃないわ。


泳いだ事も泳ぐ必要もなかっただけよ…。」


うん、こないだの引きこもりの理屈と全く同じだわ…。


「はぁ…それも違うと言った筈よ…?」


「うん、もう良いわ…。」


これ以上このネタを引っ張ったら作者のネタ切れだと思われる。


なんてメタな気遣いをしつつ、また目線をさまよわせる。


雨は相変わらず近くの椅子に座って無表情で本を読んでるし…。


千里は俺に放置されて拗ねてた木葉を宥めてくれてるし、白石は金城さんとの仲をこの機会に深めたいと積極的に話しかけていてうざがられてるし…。


「おい海真…お前いつの間にギャルゲーの主人公になったんだよ…?」


そして急にそんな妄言を吐く蟹井。


「なってねぇよ…。


急に何言ってんだよ…?」


「だってお前…。


ならなんでこんな沢山の美人(ロリ含め)達に囲まれてんだよ…。」


「そう言うんじゃねぇっての…。


あと変なもん含めんな…。」


「かぁ…俺は世の不平等さを呪うぞ…。」


「おい…あんまりそんな事言ってるとモブキャラ位置に定着してくるからやめとけ…。」


「ちくせうww」


と言うかこいつが来てて本当に良かった…。


全員女子のメンバーの中に男一人で合宿とかギャルゲーならありがちだし一見健全男子にとって大変嬉しいイベントに見えなくもないが…。


でもその蓋を開けてみれば皆で楽しく合宿だって言うのに俺だけ男ってだけでぼっち風呂は当然ながら、ぼっち部屋で複数で来たのにハブられっぱなしなんて事に…。


しまいには俺達男には分かりもしない女子トークなんて始められて…。


流石にそれは嫌だ…。


実に嫌過ぎる…。


え、だからこそサービスシーンが満載なんだって?


お風呂ハプニングでポロリもあるよ♪


とかヒロインが夜にやってきて添い寝してくれたりとか?


馬鹿言っちゃいけない…。


あんなもんは漫画やアニメだから起こる物だし、許されてしまう物だ。


仮にあんなのが実際に起こってみろ。


その後ものっそ気まずくなって地獄だし、下手したらその場で通報されかねんぞ…。


先日のあの扱いが良い例じゃないか…。


折角のこう言う機会を全力で心から楽しむ為には最低でも一人は同性がいる。


これは譲れない。


え、白石?何それ美味しいの?


「…こいつらがこないだ話した神社の巫女だよ。」


一度ため息を吐き、現実を突き付けてやる。


「え!?」


その効果はてきめんだったらしく、蟹井は思わず大きな声を上げる。


「ばっ…お前声デカい!」


慌てて嗜める。


「あ…悪い…。


…それにしてもマジかよ…あんな美人なのか…。」


「いや…まぁ確かに美人っちゃ美人だが…。


そこはそんなに関係ないだろ。」


「いやお前…ヒロインが美人じゃないと話が成り立たないだろ!」


「あのなぁ…だからそんなんじゃねぇっての。


それにお前…それギャルゲでは主人公の知り合いポジションの台詞だからな…?」


「おう、ピッタリじゃないか!


ってやかましいわwww」


「理不尽www」


「な~に馬鹿な事言ってんだか…。」


「「うげっ…。」」


振り返ると木葉が居て顔を顰めていた。


「ちょっとww二人してうげとか酷くねwww?」


「「おっといかんいかんw」」


「あんな大きな声で話してたらそりゃ気にもなるでしょ~。」


「だから声がデカいって言っただろうが…。」


言いながら蟹井を睨むと、思いっきり冷や汗だらだら流しながらそっぽを向かれた。


こいつは…!


「後ろから声をかけてきたのがまだ私で良かったね。


これが茜っちとかなら…」


木葉がそう言いかけたところで、


「心底どうでも良いわ…。


だからその下卑た妄想に私を巻き込まないで頂戴。」


名前を出された茜は面倒くさそうにそれだけぼやくとそっぽを向いてしまう。


この子本当に心底って言葉好きだよなぁ…。


「なるほど、あんな感じな訳だ。」


どこか納得した感じの蟹井。


「でもよ、あんまりこう言う事言うのもあれだがちょっとマズいんじゃねぇか?」


「マズい?」


「まぁ力の事はバレないに超したことはないけどさ~。


実際そんなの使わなきゃバレないしその辺りは大丈夫っしょ。」


とそれに木葉がフォローを入れる。


「いやそれもだけどさ、どこか取っつき辛いって言うか…。


今朝の紹介の時とかさ…。」


「あぁ…。」


この船に乗る前、初対面のメンバーも居るからと簡単な自己紹介をし合った。


と言っても、茜、雨が友好的にそんな事を好き好んでする訳もなく。


凪が自分を含め三人の紹介の役を務めた。


「よ、よろしくなの。」


雫は照れくさそうにしながらもちゃんとそう言ったからまぁ良い。


紹介した凪は勿論として、問題は他二人。


一応一礼だけはしたが無愛想な雨、それさえ無く我関せずを貫く茜。


とりあえずそれに対しての文句は誰も言わずに黙ってたからその場でのトラブルは無かったが…。


「だよな…。


今日来てる奴らともめなきゃ良いけど…。」


そう考えるとちょっと心配になってきた。


「あぁ、その辺りはキリキリがきっとどうにかしてくれるよ。」


唐突に木葉がニマニマしながらそんな事を言ってくる。


「いや丸投げかよwww」


「え~だってキリキリが言ったじゃん。


茜っちとの関係をもっと良くしたいって。」


「あらまぁ…!あらあらまぁまぁ!」


木葉の言葉を聞いて蟹井もニマニマする。


「ノリがうぜぇしきめぇwww」


「ま、誘ったのは私なんだし出来る限りのフォローはするつもりでいるけど…。」


「頼むぜ…?」


「ま、それはキリキリ次第だよ~。」


「へいへい。」


実際あいつは何かのきっかけで悪い印象をもたれても特に否定しないだろうからなぁ…。


そもそもそんなの気にする奴なら愛想笑いの一つでもしそうだが生憎アイツから出てくるのは愛想笑いじゃなくて鼻笑いだ。


そうなるとフォローは主に俺らがする事になるだろう…。


でも実際俺らだけでしきれない部分も出てくるかもしれない。


この辺は対策を考えといた方が良さそうだ。


ひとまず光に相談してみようと、その場を抜ける。


辺りを探してみると、相変わらず光は雫と二人で海を眺めていた。


「よう。」


「あ、桐人さん!


見てください!カモメですよー!」


「すごいの!いっぱい居るの!」


「あぁ、そうだな。」


「わ、あっちにも居ますよー!」


「本当なの!」


うーむ、こいつら何だかんだ上手くやれてるんだなぁ。


まぁ光は滅多に怒らないだろうし、雫の方が心を開きさえすれば後は仲良くなるのも早いのだろう。


今回に至っては今朝凪が言っていたように人見知りだから知った人間と居る方が安心ってのもあるんだろうが。


「桐人さん、何かあったんですかー?」


「あ…いやちょっと話があってさ、今良いか?」


「まぁ!桐人さんロマンチックですー!」


なんて言ってまた頬を赤く染める光。


「アホか…。」


「お前やっぱりそう言う趣味があったの…?


雨が言ってた通りなの…。」


そのやりとりを後ろから見ていた雫は露骨に顔を顰めていた。


「いやちげぇっての!」


言われて雨の方に目を向けると、雨がにやりとこちらを見ていた。


「あいつは…!」


「はいはい、ロリコンさんはほっといておじさんと良い事しようZe♪」


などとその場に入ってきたのは木葉。


「おいこら…。


人をロリコン扱いしといて俺よりよっぽどロリコンっぽい事言ってんじゃねぇよ…。」


「私は同性だし良いんだよ~。」


「そう言う問題かよ…。」


「え~良いじゃん~。


折角フォローしてあげたんだから~。」


「しかたに問題があるって言ってんだよ…。」


「えー…お前うるさいから嫌なの。」


しかも断られてるジャマイカ…。


「仕方ないな~。


それなら私のとっときのお菓子を特別に分けてあげよう!


皆には内緒だぜ?」


「そ、それなら行くの!」


おいこらそこのロリコンww


子供をお菓子で釣るんじゃないw


ひとまず雫の無事を心から祈りつつ、俺は光に向き直る。


「私はいつでもオーケーですよー?」


うっとりとこちらを見つめてくる光。


「あほか…実はさ。」


今朝雨に言われた事。


そしてさっき蟹井に言われた事をかいつまんで説明する。


「ふむ、なるほどです。」


「なぁ、どう思う?」


「端的に言えば、雨ちゃんが言う事も一理あると思うです。


実際、私達がしようとしている事を幸せだと判断するのは茜さん自身ですから。」


「うっ…。」


「でも桐人さんは、そうだと信じてやってるんですよね?


なら私はそれを貫くべきだと思いますよ。


それと、蟹井さんが言っていた件に関してはとりあえず様子見ですね。


こればかりは現段階で出来る事は無いでしょうから。」


「まぁそうだな…。」


「お、島が見えてきたぞ!」


と、そこで蟹井がそう言って手を振ってくる。


「わー!すごいですねー!」


「うはぁ…。」


思わず感嘆の声が漏れる。


だってそうだろう?言われて目の前に現れたのは誇張無しに漫画とかでお金持ちが所有してそうな大きな島だったからだ。


「あいつの親戚ってどんな金持ちなんだよ…。」



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