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夢幻  作者: 遊。
第三巻第二章

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死神神社の巫女とは。


「うげ、うるさいのが二人も居るの…。


オマケにこないだのこそ泥もいるの。」


勢いよく扉を開いて帰ってきた雫は、開口一番そう言って顔を顰めた。


「誰がこそ泥だ。


心配しなくてもお前も大概うるせぇよ…。」


「あ、桐人達来てたんだ。」


その後ろから買い物袋を手に提げた凪が顔を出す。


「ごめん、今大した物無くて…。」


言いながら、買い物袋をテーブルに置く。


「あぁいやいや、お構い無く。


俺らこそ急に来て土産の一つでも用意しときゃ良かったな。」


「本当にそうなの!


図々しい奴なの!」


さっきの皮肉の仕返しとばかりに雫が言ってくる。


「ぐっ…こいつは…!」


「こーら、そう言う事言わないの。」


コツン、と雫の頭を小突く凪。


「うー…。」


恨めしそうにこっちを睨む雫。


ふひひザマァ…。


「はいはい…キリキリも大人げ無い事しない~。」


言いながら木葉は鞄をまさぐり、中から大きな袋を取り出した。


と言うかその袋、君の鞄よりデカいよね…?


何、君の鞄って四次元だったりするの?


いや…鞄だし取り寄せバッグの方かも…。


その中からペロペロキャンディーを取り出すと、それを雫に差し出す。


「はい、どうぞ。」


すると、あからさまに目を輝かせる雫。


「さ、流石!気が利くの!さっさとそれをこっちによこすの!」


そう言って雫が伸ばした手を木葉はあえて交わす。


「んな…!?」


「ふふふ、雫っち~。


そうは問屋が下ろさないよ~?」


いや…だからお前はいつの時代の人間だよ…?


「むむ!一体どう言う事なの!?」


「そうだよ、雫。


貰う前に言う事があるでしょ?」


と凪。


「う……あ、ありが…とうなの…。」


照れ臭そうに小声で雫が言うと、


「ん~何だって?」


耳に手を当ててすっとぼけ顔の木葉。


お前も大概大人げ無いじゃねぇか…。


「あ、ありがとうございましたなの!


それとさっきはうるさい奴って言ってごめんなさいでしたなの!」


自棄になって真っ赤な顔で叫ぶ雫。


「ん、よろしい!」


満足そうに頷き、今度こそペロキャンを雫に渡す。


それを受け取った雫は早速それを舐め始める。


「…にしても珍しいな、お前がお菓子を差し出すなんて。」


「む、失礼な。


私だって子供にペロキャンくらい…ペロキャンくらい…。」


言いながら血の涙を流すくらいならやるなよ…。


「ってうわ…!?


本当に真っ赤!?」


「え、嘘!」


つられて凪もそれを見て絶句する。


「ど…どうしてなの…!?」


凪、雫はそれぞれに反応を示し、光は居眠りし、千里は固まり、雨は我関せずと本を読み…。


茜は呆れてため息を吐いている。


そんな俺達の反応にさも面白そうにゲラゲラ笑う木葉。


その手には中に赤い液体の入った小瓶が…。


「お前なぁ…。」


「ははは、皆面白い反応するよね!


 あ、ちなみにこれ目薬だから。」


後で聞いた話だがこの目薬は、前に説明した木葉さん御用達のイロモノ雑貨で買った物らしく、血の色仕様。


見せて貰った箱には文字通り血の涙を流したいあなたに、と書いてあった。


と…どうでも良い補足を付け足しておく。


てか実際に血の涙を流したい時はそんな遊び心出ないと思うぞ…。


「ふぅ…あなた達…そんな事をする為に集まった訳じゃないでしょ…?」


と、ここで茜がため息を吐きながら言う。


「「すいませんでした。」」


ほら怒られたじゃないか…。


と言うかなんで俺まで一緒に謝ってんだ…。


「あれ、何か理由があったの?」


当然事情を知らない凪はそう返すだろう。


「こんな所にわざわざ用事も無いのに遊びに来るような人なんてどこかの正義バカで面倒な物好きくらいよ…。


それが誰だとは言わないけれど…。」


「ならなんで一々そんな当てつけたように俺の顔を見ながら声高に言ってんだよ…?」


「あら…?自覚があるのかしら…?


被害妄想も困った物ね…。」


こいつ嫌い…!


「えっとね、今日は彼女の事を相談しに来たんだよ~。」


と、木葉。


「あぁ、成程。」


光の事を指差して木葉が説明すると、察した凪がそう返す。


【やっと本題に入ったみたいだね。


それで?死神様はなんて?】


本を閉じて深いため息を吐き、改めてホワイトボードで問う雨。


こいつ…本当清々しいぐらいに我関せずだったなぁ…。


「茜ちゃんも、そして雨ちゃんも、二人とも桐人さんと協力しているようで協力してないのですー。」


「ふぅ…協力…ね。


不名誉な協力関係なら結んでいるじゃない。


それでもまだ足りないというの…?」


「結論から言うと全然足りないですー。


二人の言う協力は頼まれたら渋々手伝うと言うだけ。


あなた達が自分から助けを求める事はしないじゃないですかー。」


「ふぅ…当然よ…。


彼の助けなんて私には少しも、微塵も、全く、一切必要無いもの。」


分かってはいたけどそこまで色んな強調言葉を付け加えて言う事ないだろう…!


まぁ実際、俺は茜や雨に助けられてばっかりで助けた覚えは無い。


考えてみれば確かに二人はわざわざ自分から俺を頼って来ないし、それに千里や木葉みたいに毎日顔を合わせている訳でもない。


ここまで考えて気付く。


俺と茜は自分から動かないと何の繋がりも無いのだと。


「茜ちゃんの言うそれは協力とは言わないのです。


本来協力とは助け合う事にあるのです。」


「別に名前なんてどうでも良いわ。


違うならそれで良い。


この関係を変えるつもりはない。」


「私はその為に来たのです。」


「その為?」


ここで俺が割って入る。


「雨ちゃん、あなたは茜ちゃんを救う為に一人で頑張っていますです。


そして、その上で桐人さんのサポートまでしている。


死神様は今回の事をとても重く考えていますです。


だからそれを雨ちゃん一人に全て任せるのは荷が重いと言っていました。」


【そんな!それは私が自分からやるって言った事だから…。


…まぁ確かにそこのロリコンさんの面倒は常々面倒くさいとは思ってたけど…。】


「おいこら…。」


【でも…私は一人でも出来る!


私はそうする為に…!】


「死神様はあなたのそうやって一人で全てを抱え込んでしまう所をとても心配していたのですよ?


だからこそ少しでも負担を減らしてあげたいと、私に桐人さんを見守るように言ったのです。」


「ちょっと待て!」


これはツッコまずにいられまい!


「ならあの手紙はなんだ!


思いっきり俺がお前を任されてるだろ!?」


「だから言ったじゃないですかー。


あれは死神様の茶目っ気ですよー。」


あれ本気で言ってたのかよ…。


「ふぅ…つまり死神は私達に仲良く仲間ごっこをしろと…?


そんな事に何の意味があるのかしら…?」


「意味はあるのです。」


はっきりと一言。


そこに迷いなど微塵も無い。


ついでにいつもの語尾伸ばしも無い。


「へぇ…?」


「そして茜ちゃんは知っている筈です。


その意味を。」


「…何が言いたいの…?」


「…はっきりと言って欲しいのですか?」


「っ…。」


あ、あの茜が黙らされただと…?


最初にあった時と全然違う光のその態度に、思わずゾッとする。


「自分一人でやれる?


誰の力もいらない?


自惚れないでください。」


それを聞いて茜は何も言えずに一度肩を震わせる。


「そんなのはただの一人よがりです。


事はそんなにも単純じゃないのですよ?


あなた達個人個人だけでどうにか出来る問題じゃないと、そう言ってるんです。


そしてそれを茜ちゃんも分かってる。


…まぁ、ともかく雨ちゃん。


彼の事は私に任せてください。


二人にとっても悪い話しじゃないと思いますけど?」


「…えぇそうね。


まぁ…私としてはあなたに戦闘能力があれば尚良いのだけど?」


茜は言い返し、雨はホワイトボードに何か書こうとしては消しをくり返している。


「それなら心配ありません!


私、逃げ足には結構自信あるんですよ?」


「おいこら…ソッコーで見捨ててんじゃねぇよ…。」


と言うか君ら俺の扱い酷過ぎない?


そろそろ泣くよ?


「随分と粗末なボディーガードね…。


まぁあなたにはちょうど良いのだろうけれ

ど…?」


「どう言う意味だよ…?


ってか見守るだけなら戦闘能力なんていらないって言ったのはお前だろうが。」


「あら…?そうだったかしら…。」


こいつ!


くそ、相変わらず憎たらしいけど、言いたい事は一つだ。


「だから…さ、そういう時はまた助けてくれよ。」


「はぁ…どうしてそうなるのかしら…?」


「お前はひねくれ者で、憎たらしいくらいに口が悪いし、ちっとも可愛げの無い嫌な奴だけどさ。」


「頼っておいて随分な言いようね…。」


「普段のお前程じゃねぇっての…。」


「あら…?私はいつも事実を述べているだけよ…?」


「だとしたら述べ方に悪意があるって言ってんだよ…。」


「…否定はしないわ。」


「そこは否定しろよ!?


まぁ…でも俺はお前を信じるって決めたんだ。


だからこれまで通り協力しろ。」


「ふぅ…オマケに態度までデカいなんて救いようが無いわね。」


「だから…お前に態度をどうこう言われる筋合いは無いって言ってんだよ…。」


「ふふふ、二人はやっぱり仲良しなのですー。」


「んな…!?ち、ちげぇよ!」


慌て否定する。


…するのだが。


「…茜?」


光の言葉に対して何も言い返そうとしない茜に思わず声をかける。


「何か…?」


こいつ…当然のように涼しい顔してやがるぞ…。


普通恋愛漫画ならこう言う時はお互いに反論し合って周りが「あははーそっくりだねー。」なんて笑い合ってほのぼのするシーンだろ!?


「言ったでしょ…?


あなたの妄想に私を巻き込むなと。」


「くぅ…。」


見たか読者諸君…。


これを見てもまだこれがラブコメだなんて言うか?


言わないだろう…。  


「そ、そう言えばさ。


光ちゃんは彼女達の事をどこまで知ってるの~?」


ここで木葉が話題を変える。


「私は死神様の使いですからー。


大体の事は知ってますですよー。」


「じゃあ光、教えてくれよ。


死神神社の巫女ってのはどう言う存在なんだ?」


俺がそう光に問うと、話を聞いていた凪が一瞬肩を震わせる。


ちなみに雫はまた外で遊んでいるようでこの場には居ない。


「死神神社の巫女は、現世に強い恨みを持って自殺した人間の中から死神様が独断で選んだ三人がなると言われてるです。」


「んなっ…!ちょっと待てよ!」


茜が生前自殺していた、と言う事実は前に木葉に聞いて知っていた。


でも、でもだ。


「どうしました?」


静まり返った場で、光の落ち着いた声が妙に響く。


「だっておかしいだろ!?


こんな気丈で面倒見の良い凪が?


そもそも雫はまだあんな小さな子供なんだぞ!?」


思わずそう訴える声も荒くなる。


信じられる訳無いじゃないか。


今だってこうして目の前に居るのに。


この場に居ない雫は今頃そんな事全く考えもせず呑気に遊んでいるだろうに。


「いつ、誰が死ぬかなんて分からないわ。


そこに年齢や普段の姿なんて関係無い。」


と、ここで茜が口を開く。


「っ…。


でも…だからって…!」


「その…私だって最初に聞いた時はさ、雫が自殺したって言うのは信じられなかったよ…。」


俯きながら、今度は凪が呟く。


「でも何となく自分はそうなのかもしれないと思ってた。」


「凪…。」


「それに…私は気丈なんかじゃないよ。


そう見えるように振る舞おうとしてるだけ。


だってそうしないと雫を守ってあげられないもん…。」


「凪…。」


そう、凪はこう言う奴だ。


自分が一番年上だからと、他の二人の為にいつも身を粉にして。


だからこそいつも気を張って気丈に振る舞っていたのだろう。


でも言ってしまえばそれは所詮やせ我慢でしかない。


本当の彼女は、もっと脆くて人知れず涙も流しているのかもしれない。


「話を戻しますね。


本来人の魂は、死んで体から離れると天界に行って判別されます。


そこで良いと判断された魂は天国に行って転生を待つのですが、彼女達は死神様が無理矢理そのままの姿で蘇らせたのです。」


「そのまま蘇らせたって…死神はそんな事が出来んのか?」


「出来てるですー。」


「うん、俺が悪かった…。」


「ただ、そうして無理矢理元の姿で生き返らせる事は本来許される事ではありませんから、彼女達はその為にそれ相応のリスクを背負う事になります。」


「リスク…?」


「まず一つに、当然ながら生前の記憶が全て無くなります。」


「まぁ、そうだな。


実際茜も凪も前世の事は何も覚えてないみたいだし。」


「そしてもう一つのリスクは、もし死神神社の巫女である彼達がまた死ぬような事があれば…存在その物が無かった事になるのです。」


「なっ…!?」


存在…その物が…?


その言葉を聞いて、凪の震えはより一層強い物になり、顔色も次第に悪くなる。


当然の反応だろう。


むしろこんな話を聞いて動揺一つしない茜が異常なのだ。


「別に…最初から分かっていた事よ…。


自殺した私が、何のリスクも無く元の姿で生き返れるなんて虫が良過ぎるもの。」


「そう…だよね。」


俯く凪に普段のような明るさは無い。


多分これが凪の言う本来の自分なのだろう。


「でもさ、じゃあなんで茜だけ夢幻が使えるんだ?」


これまで光が言ったリスクは三人に共通した物だ。


でも茜には他の二人と違って夢幻がある。


これだって充分にリスクと呼んで差し支え無いんじゃないだろうか?


実際茜がこんなにもリアリストでひねくれた人格になったのは、それによって沢山の人間を死に追いやったからだ。


「それは彼女がリーダーだからです。」


「リーダー?こいつが?」


「はい、だから彼女には他の二人と違って一つ多く力が備わっているのです。」


「へぇ…ならリーダーなんて何を基準に決めてるんだよ?」


「リーダーには死神様が選んだ中で最も現世に強い憎しみを持って自殺した人間が選ばれるみたいですよ。」


「え…それじゃぁ…?」


言われて茜の方に目を向ける。


すると茜は一つため息を吐く。


「私は私の前世になんて興味無いわ。


所詮は赤の他人だもの…。


前世の私がどんな理由で自殺していようと今の私には関係無い…。」


「…でも…お前…!」


「くどいわ…。


それともあなたはその前世の記憶に操られて私に自殺しろと…?」


「そう言う…訳じゃ…。」


こいつがこう言う事なんて最初から分かっていた。


でもそれは他人に踏み込ませない為の建前なのではないか?


本当は凪のように怖くて仕方無いのに、それを表に出さないだけなのではないか?


最初にあった日、俺達は一度だけ茜の涙を見た。


それを見て俺はこいつを信じてみようと思ったんだ。


だからこそ勘ぐってしまう。


口でどんなに否定しても、本当はこみ上げそうな不安を必死に抑えているのではないかと。


「ねぇ、光ちゃん。


って事はさ…死神神社の巫女は最終的には存在その物が無くなるのが確定してるって事なの?」


と、ここで木葉が口を挟む。


「確かに…!」


彼女達とて死神神社の巫女として多少の違いはあれど、他は俺達と同じ普通の人間なのだ。


前世と同じように自殺しなくても、当然寿命ぐらいはある。


雨が茜に預言したように、突然誰かに殺される事だってあるのだ。


そうなると、茜の未来を変えると言う目的にもまた違った意味合いが出てくる。


「存在を消さずに終わる方法もあるにはあるです。」


「え?」


「彼女達が自殺した事を悔いて、自分の意思で輪廻の波に乗る事を望めば、その場ですぐに輪廻の波に乗って転生を待つ事が出来るです。」


「ふ~ん、なるほど。


なら必ずしもバットエンド確定って訳でもない訳ね。」


「はい、でもこれは彼女達の意思次第ですからどうなるかは分からないのです。」


「ま、確かにね~。」


「でも死神様はそうなる事を願って彼女達にそのリスクを背負わせたんだと私は思いますです。」


「うん、その話を聞いたら私もそんな気がする。」


頷きながら木葉も同意する。


「全く理解出来ないわ…。」


それに茜はため息を吐きながらぼやく。


「だってそうでしょう…?


一度自殺した人間が今更後悔したところで何になるの?


後悔したら自殺した事実が消えるのかしら?」


「それは…まぁ。」


「だから後悔なんて必要無い。


在るのは目の前の現実だけ。」


「茜ちゃんはそう考えるのですね。」


「えぇ…私は赤の他人の自殺に後悔するつもりはない。


全く知らない人間が居なかった事になったところで、私には関係無い。」


「そう…ですか。」


光は一瞬悲しそうな表情をしたものの、すぐに普段の笑顔に戻った。


「茜ちゃんらしいですー。」


ついでに口調まで完全に元に戻った。


そこは別に戻らなくても良いんだけどなぁ…。


光が元に戻って、さっきまでの重苦しい雰囲気は幾分か和らいだ。


口調一つでこうも空気をガラッと変えるんだから流石と言うべきか。


元々落ち着いていた木葉は悠々とお菓子袋の中身をモグモグしてるし、茜はそれ以上何も言わない。


「あ、私お茶入れてくるね…。」


まだ顔色の悪い凪がそう言って立ち上がる。


「おい…大丈夫かよ?」


「うん、大丈夫。」


そう言って背を向ける凪。


と、ここで横に居た木葉に横腹を小突かれ…いや、ぶん殴られた。


「げふっ!何すんだよ!?」


「何すんだよ、じゃない!


一緒に行ってあげなよ。」


「わ…分かってるよ…。」


立ち上がって奥にある台所に向かい、顔を出す。


「おーい、凪ー?」


が、居ない。


「っ…!」


慌てて辺りを見回すも、やっぱりその姿は何処にも無かった。


「まさか…。」


考えてみたら、あいつは力で高速移動が出来るんだ。


俺達に気付かれずに別の場所に行くくらい難なく出来るだろう。


「どった~?キリキリ。」


「どわぁ!?」


急に背後から顔を出した木葉の声で、思わず変な声が出る。


「はぁ…なんだお前か…。」


全く心臓に悪い…。


「なんだとはなんだ!」


「…返さないからな?」


「ぶ~ノリ悪いな~。」


こいつが言うノリは多分なんだとはなんだとはなんだを延々と繰り返すやつだろう…。


付き合ってられん…。


「なるほど、やっぱり居なかった訳ね。」


「やっぱり…?」


「キリキリってほんっと!肝心な所で察しが悪いよね~…。」


わざとらしいぐらい本当にを強調しよってからにww


「ほっとけ…。」


「さっき光ちゃんの話を聞いててあんなに動揺してたじゃん、凪っち。


あの状況で居なくなったなんて一人になりたかったからに決まってんじゃん。


そう言う意味も込めて一緒に行けって言ったんだよ?」


「うっ…。」


茜とは違うタイプではあるものの、あいつも自分の弱さをあまり表に出そうとはしないタイプだ。


だから恐らく今一人になった理由は…やっぱり。


「俺!探してくる!」


「ん、お茶は私が代わりに運んどく。」


慌ただしくその場を離れた桐人を見送って木葉はぼやく。


「やれやれ…察しは悪いけどそうだと決めたらすぐに突っ走る辺りは本当に主人公らしいと言うか憎たらしいと言うか…。」


ため息を吐きながら、お茶の準備に取りかかった。


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