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ヒロインにしか見えない悪役令嬢?物語  作者: 松菱
四章 大戦勃発!?編
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お礼を言われると照れます!







「よくぞ参った」



王宮、謁見の間。玉座に王さまが座って、その近くにガンマやモニカさんなど王族の人たちが控えている。

ヒルダさんに連れられ、私とお兄さまとお姉さまは謁見の間に着いた。

私たちが到着すると、王さまが玉座から立ち上がり、私たちの前に来ると深々とお辞儀した。王族の人たちもそれに倣ってお辞儀する。

え?なんで?



「この度は我が国民のため、事態の収束に協力してくださりありがとうございました」


「頭を上げてください。元々は私たちヴァルハラの者が起こしたこと。責められることはあってもお礼を言う必要などありませんわ」



お姉さまが慌てたように王さまに説明する。私も何度も頷いて同意する。


そうそう。でも、責められるのは嫌だから国を守ろうとしたことでチャラにしてくれると嬉しいな。



「確かに原因はそうかもしれません。けれど、あなた方が動いてくださったおかげで、ティルナノグとの全面戦争を避けることが出来ました。あなた方がいなければ、今頃ガストロー、ティルナノグ両方の被害は取り返しがつかないほど甚大だったでしょう」


「気を失っているバハムート王子に代わり、私達も貴女方に限りない感謝を。貴女方がいなければ私達は大切な同盟相手を傷つけるところでした」



長身ではあるがオーガとは違い、肌が白く細身の人たちも私たちに恭しくお辞儀をする。

ほうほう、ドラゴンたちは人型だとこんな風なんだな。イケメンじゃん。ドラゴンでさえイケメンだってのに、私は……。く、悔しくなんかないんだからね!



「しかし、彼らの住み処を傷つけた罪には変わりありません。ガストローの復興には私達が全て負担して行っていきます」


「それが良いでしょうね。私も負傷者の手当てが終わったら、ガストローの復興をヴァルハラ教国も支援できるよう手配するつもりです」


「頼もしい御言葉だ。けれど、いくら原因がそちらとは言え、そこまでしていただくのはいかがなものか。魔族に協力するなど、女神の教えに反するのではないか」



お姉さまの言葉に王さまは一瞬喜んだものの、すぐに心配そうに訊ねる。


おお、流石ガンマのお父さま。優しい。でも、そんなことはないんだよなあ。


お姉さまは王さまの問いに静かに首を振った。



「いいえ、女神の教えには、魔族に協力するな、なんて書かれていませんわ。女神の教えは『憤怒』『傲慢』『強欲』『色欲』『暴食』『怠惰』『嫉妬』を悪とし、これらを行う者を厳しく罰するように、とあります。魔族はこれらを行う者が多かったため、罰していく内にいつしか魔族であることが罰する対象だと勘違いされるようになったのです」


「そうなのか?なら、我々は女神の教えに反する者ではないのか?」


「ええ。もし、女神の教えに興味があるのであれば、未熟者ではありますがお教えしますよ」



王さまは驚いて呆然としている。他の王族やドラゴンたちも同様だった。ガンマ以外は。



「父上、復興が一段落したら、ユリシア殿にご教授いただいてはどうですか。女神を信仰するかはともかく、彼らの生き方はオーガの生き方に通じる部分もあります。彼らの生き方の一部を取り入れることは私たちの強さを高めることにも繋がるはずです」


「ううむ。考えておこう」



ガンマが勧めるも、お姉さまの答えにもまだ半信半疑らしく、腕を組んで考え込んでいる。

まぁ、それはそうだよね。敵だと思ってた存在が実は敵でもなんでもない勘違いだったなんて、言われても急に信じられないよ。



「俺なら死んでもごめんだがな。あんな偽善ぶった教えを取り入れるなんて反吐が出る」


「お兄さま!茶々を入れないの!」


「キル、貴方って人は……」


「本当のことだろうが」



お兄さまが茶々を入れたせいで、お姉さまと一触即発な空気になる。王さまの前だよ!自重して!!

なんとかしてお兄さまの口を塞がないと、って思っていた私だったが、お兄さまは意外な方法で口を塞がれた。



『お兄ちゃんだ!お兄ちゃん!!』



頭の中で子どもの可愛らしい声が聞こえたかと思うと、小さい黒いドラゴンがお兄さまの顔に張り付いた。



「離せ!チビ!俺はお前の兄ちゃんじゃねぇ!!」


『そんなことないよ!お兄ちゃんは僕たちの傷を治してくれた上にバハムートお兄ちゃんに会わせてくれたもん!だから僕のお兄ちゃんだよ!』


「どういう理屈だ!!良いから離れ……むぐっ!」


「ティアマト王子!いけません!今は大事なお話中なのです!」



ドラゴンたちが慌てて、お兄さまから子ドラゴンを引き剥がそうとするが、まったく離れようとしない。

むしろ、意地になってさらにくっつくものだから、ついに顔が子ドラゴンの腹に埋まって完全に話せなくなった。



『やー!お兄ちゃんと一緒にいるの!!』


「王子がこの者を気に入ったのはよくわかりましたから!離れてあげてください!」


「あら?構いませんわ。どうせ居ても居なくてもあまり変わりませんもの。そのままにしておいてくださいな」


「ええ!?で、ですが……」



ドラゴンたちが私を見る。本当にそのままにして良いのか、と言わんばかりに申し訳なさそうに。


だから、私は笑顔で言ってやった。



「あ、放置で大丈夫です。お兄さまは子どもに優しいのできっと遊んでくれると思います」



背後からお兄さまの抗議の視線をびしびし感じるが、茶々入れる方が悪い。子ドラゴンと遊んで反省しなさい。



「ごほん!話を戻そう。あなた方は大変世話になったが、特にシス、と言ったかな。あなたがこの国にいなければここまで被害を最小限にすることは出来なかった。あなたには多大な恩がある」


「へ?私?私は何もしてない!お兄さまみたいにドラゴンを助けたわけじゃないし!お姉さまみたいにバハムートさんの洗脳を解除したわけじゃないし、負傷者を助けたわけじゃない!勘違いだよ!!」



王さまが咳払いして私を見る。お兄さまとお姉さまに感謝するなら、わかるけど私に感謝!?なんで!?


ガンマが私の目の前に来て、説明してくれる。



「ドラゴンたちが傷つかないように、『障壁(バリア)』で拘束してくれたんだろう?そのおかげでドラゴンたちは拘束されているという理由が出来て、助かったと聞いている。それにドラゴンの救出もシスがキルに頼んだことだ。なら、俺たちがシスに感謝することは当然じゃないか」


「それは人として当然というか、多大な恩って言われるとなんか違うというか」


「違わない。シスは俺が思った通りの『強く優しく美しい』完璧な女性だ。怪力なんて君の強さに何の関係もない。だって今の君はオーガにとって、いや、俺にとってこれ以上ないほどに理想的な女性なんだから」


「あ、うう……」



だから!そんな甘い台詞がぽんぽん出てくるの!?恥ずかしくて死ぬ!!どうしてそんなにカッコいいの!!紳士すぎるのもいい加減にしろよ!ガンマの微笑みだけで死傷者が出るでしょ!被害者は主に私だけどね!!!好き!!



「オーガは恩を倍にして返す。此度の恩返しとしてどうか俺をシスの従者にしてはもらえないか?」


「え!?ガンマって王子でしょ!?そ、それはさすがにまずいんじゃ……」



とんでもない提案をしてきたので流石に止めようとしたのだが、王さまが乗り気で勧めてくる。



「遠慮する必要はない。政務ならば他の兄弟達でも出来るが、恩人たるあなたの従者はあなたをよく知るガンマしか出来ないだろう?」


「いや、そりゃあ王子の中なら確かにガンマが一番適任だけど。そうじゃなくて!私そんなつもりでやったわけじゃありません!」


「それは分かっているが恩は恩だ。女心のわからん奴だが強さは随一だ、お買い得物件だぞ?」


「そんなお家みたいに!私、一緒にいたいっていうガンマを拒絶しておいて、そんな虫のいい話許されるはずが」



そうだよ。さっきまでは緊急事態だったから、一緒にいたけど、本来私はガンマに相応しくなくて身を引いたんだよ。なのに、図々しく一緒に居ようなんて許されるわけない。



「拒絶したのは俺のためなんだろう。なら許すも許さないもない。そもそも俺の方こそ、まだ求婚するには未熟過ぎた」


「はい!?それは絶対ない!ガンマは今のままで完璧だよ!!」


「『争奪戦』で君の心を傷つけて、襲撃事件では君に瀕死の傷を負わせた俺がか?いくらシスの言葉とはいえ信じるわけにはいかない。俺は無力だ」


「うっ」



それを言われると反論出来ない。でも、あれもどっちかと言うと私の力不足でガンマは関係ないような気がするけど。でも、言える空気じゃない!



「俺はお前と再会してから痛感したんだ。俺には王子としての自覚や実力がまだ足らない。シスやキルやユリシア殿が居てくれたから良かったものの、俺一人では国を守ることは出来なかったはずだ」



ガンマが目を伏せて語る。悔しげに拳を握る姿に胸が締め付けられるように痛い。



「自分の故郷でありながらシスに頼ってしまった自分が情けないんだ。だから修行をし直したい、恩人であり最も大切な人であるお前のもとで」


「大切なって、角は返したんだよ?もう婚約者でもなんでもないんだよ?」


「婚約者でなくなったなら、もう一度シスに相応しい男になって求婚すれば良いだけのこと。何の問題もない」


「そういうものなんだ?」



少女漫画では大抵プロポーズしたら、OKだしてハッピーエンドだったからなぁ。Noのパターン見たことないけど、そういうものなのか。なるほど。



「ああ。オーガは欲しいものは奪いとってでも手に入れる。そう簡単に俺から離れられると思うなよ」



いつもの紳士のような笑みじゃなく、野性的な悪役のような意地悪な笑みにギャップ萌が止まらない。

さっきとは違う意味で胸が締め付けられる。

私ばっかり、ガンマにドキドキさせられたのが悔しいので、意地悪を言ってみる。



「ガンマはかっこよくて強くて凄いのに女の趣味悪いよ。もったいない。ガンマならどんな美女でも靡くだろうに」


「そう言われても、俺にはシスしか見えないからな。君しか見えない俺は嫌いか?」



意地悪な笑みのまま、甘い台詞を吐くんだぜ?嫌いか?って聞いておきながら、自信満々なの。嫌いなんて絶対微塵も思ってないよ?ダメだわ、死ぬわ。尊死って本当にあるんだね。



「ん?シス!?何故、気絶するんだ!?おい!おい!!」



次回からガンマが主人公になります!ご愛読ありがとうございました!!



「陛下、私たち、忘れられてますね」


「そのようだな」


「これだからあの天然カップルは。爆発しないかしら」


「聖女殿、物騒だぞ」








お姉さまによって生き返されたので、ガンマを主人公に出来ませんでした。残念です。








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