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ヒロインにしか見えない悪役令嬢?物語  作者: 松菱
四章 大戦勃発!?編
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潜入捜査です!










あの後、アルファがツテで知り合いを紹介すると約束したのでなんとか落ち着いてもらえました。

それでも、しばらくは私の顔を見て、



「人生は不公平よね……」



哀愁漂う声で不平等を訴えられましたが、私だって色々あったんですよ。

あと、別にアルファは私のこと好きではないですよー。ジュリアさんの言う通り、お金、というか地位目当てですよー。

とにかく!無事潜入が成功したので、このまま、ジュリアさんを張り込みしてみたいと思います!

ちなみにアルファは、許可をもらって修道院の隣の敷地を買い取って家を建築しました。そこから異常がないか連絡待ちしてくれるそうです。

うん、意味わからんよね?たかが任務で家だよ?一軒家だよ?一晩で作ってもらいやがったよ?秀吉かな??これだから金持ちは!!








「シスー!洗濯物、取り込んでおいて!!」


「はーい!!」




張り込みから数日。特に何も起こらず、ジュリアさんの下でせっせと奉仕活動に励んでいる。

いやぁ、久しぶりの奉仕活動だけど、楽しいね!頼りにされてる感じがして気持ちいい!

じゃあ、普段からやれって話なんだけど、何故か自分のためになるとめんどくさくなってやらないんだよね。不思議!

5年前と違って、怪力がないからあまり重いものは持てなくなったけど、山盛りになった洗濯かごくらいは持てるはず!






「あのねぇ、私は洗濯物取り込んでってお願いしたの?わかってる?」


「ハイ、ワカッテマス」


「じゃあ、なんで洗濯物が汚れてるわけ!?」


「す、すいませんでした!!」



山盛りの洗濯かごを持てたのは良かったが、石ころに躓き、転んで洗濯物をぶちまけてしまった。中身が全て土だらけで汚れてしまった。

これは誠心誠意謝るしかない。ジュリアさんが頭を抱える。うう、ごめんなさいぃ。なんで私はこうなんだ……。

お姉さまのところにいた時から思ってたけど、もしかして私、奉仕活動向いてない!?



「今日は徹夜で洗い直すわよ。夕飯は食べられないと思いなさい」


「はい、明日までにはなんとか終わらせます」



徹夜で洗い直すということでなんとか許してもらえた。散らばった洗濯物を拾っていると、



「なによこれ?動物の角?なんだかちょっと古くさいわねぇ」


「あ!ジュリアさん!それ返してください!!」



ジュリアさんが、紐が通った角のペンダントを拾う。よく見ると、紐が千切れていた。そのせいで落ちたのだろう。

ペンダントを奪い取って、ぎゅっと握りしめる。これはガンマくんとの約束だから。ずっと持ってなきゃいけないの。



「なによ、どうしてそんな角にそこまで……ははーん」



不思議そうに呟いたジュリアさんだったが、すぐに合点がいったように笑う。

な、なんですか?あげませんよ!これは目印なんだから!



「わかってるわよ、それもプレゼントなんでしょ?私にはただの角にしか見えないけど、きっと大事なものなのよね?」


「はい、私にとっては一生の宝物です」


「なら、紐が千切れたまま、放っておくのは良くないんじゃない?それに角だって汚れてるし。プレゼントなら大事にしなきゃ」



ジュリアさんの言葉にペンダントを見る。確かに紐はボロボロで角もどこか黄ばんでいるように見える。

ガンマくんがこれを見たらどう思うだろう?大事にされてる、とは思えないよね。



「でも、こういうのどうしたら綺麗になるかわからないし」


「だと思ったわ。あんたが洗濯物を洗い直してる間に紐を新品にして、角も綺麗にしてあげる」


「本当ですか!ありがとうございます!」



ジュリアさんは優しいなぁ。願ってもない申し出にペンダントを渡す。ジュリアさんはまじまじとペンダントを見て懐に入れる。



「じゃあ早速直してくるから、あんたは安心して洗い直してなさい」


「はーい」



山盛りの洗濯かごを持って井戸のある場所まで運ぼうと歩き出す。

よーし!頑張るぞ!












シスが洗濯に悪戦苦闘してる頃、ジュリアは自室でほくそ笑む。



「あの子ってば、本当に人を疑わないわよね。アースガルズ修道院にいた人間に善人なんているわけないのに」



懐に入れたペンダントを取り出して再びまじまじと見る。



「何の角かしら?見た目は象牙に似てるけど、象牙にしては細すぎるし、何より真っ直ぐ過ぎるのよね。子象……も無理ね。まるで人間くらいのサイズみたい。ん?人間?確か、魔族に角の生えたやついなかったっけ?」



しばしの沈黙が流れる。少ししてジュリアが笑って首を振る。



「いやいや!ないない!!私ならともかく、阿保な善人の見本みたいなあの子が魔族の角なんて欲しがるわけないわ!もしそうなら、あのお坊っちゃんセンス悪すぎでしょ!あんなに女慣れしてそうなのに!」



ペンダントを懐にしまい、自分の部屋を漁る。



「さて!じゃあ早速石膏で型取って贋作作るわよ!公爵令嬢が一生の宝物とまで言い切る代物だもの!さぞかし高値で売れるでしょうね。楽しみだわ!」



歌い出しそうなほど上機嫌な様子で探し物をする彼女の背後に、フードの被ったガタイの男が立つ。窓が開いており、そこから侵入したのだろうか。

フードの奥からはジュリアが懐に入れた角のペンダントと同じ角が覗かせている。



「見つけた。お前が王子のーーー」


「え?」



ジュリアがその言葉を最後まで聞くことはなかった。



風でカーテンがぶわっと広がる。風が止んでカーテンが静まる頃には部屋に誰もいなくなっていた。









「んー、この土、なかなか取れないぃぃ」



洗濯板でごしごしと汚れを落とそうとするが、まったく落ちない。

なんでぇ?お兄さまはこれでピカピカにしてたぜ?お兄さまと何が違うの?顔か?性別か?

あまりに綺麗にならないので、若干苛立ちながら洗濯ものと悪戦苦闘していると、アルファが転移魔法で現れた。



「シス!」


「うわっ!びっくりした!!え?どうしたの?」


「どうしたのじゃねぇ!!ジュリアさんの身に危険が迫ってる!行くぞ!!」


「ええ!?」



アルファが洗濯していた私の手を取って走り出した。走りながらアルファに問う。



「なんでわかったの?」


「お前、やっぱわかってなかったのかよ!ジュリアさんにこっそり生命魔法の一種『生死判別(バイタリティー)』をかけてたんだ!起きてる時と寝ている時以外の状態になったら魔法の使用者の目に対象者の身体が光り輝いて見える!!」


「ほお!便利じゃん!やば!」



アルファの答えに一瞬感心しそうになったが、よくよく考えるとまずいのでは?



「起きてる時と寝ている時以外って、もしかして死」


「いや、死んでたら光が青く見える。赤ってことはおそらく気絶してるだけだ」


「気絶って、え?なんで?」


「俺が知るか!こいつに聞け!」



ジュリアさんを横抱きしている男がそこにいた。

背が高く、ガタイの良い身体。フードの奥から覗かせる炎のように紅い目とその上にある象牙のように白い角。

紅い目が私たちを捉える。



「オーガがなんでジュリアさんを姫抱きしてるの?はっ!まさか禁断の恋!?」


「今、突っ込んでる暇ないんだから、ボケるんじゃねぇ!!」



そう言いながらもツッコミしてくれるから、アルファは最高だね。



「ガキが何の用だ。さっさと家に帰ってママのおっぱいでも吸ってろ」


「私のお母さまは赤の他人なんで吸ったら犯罪ですが、それでもいいですか?」


「は??」


「シス!もういい!黙れ!!」



アルファが泣きそうな声で叫ぶ。いや、でもね、これは結構大事なことだと思うのよ。確かめておかないと。

鬼のような形相で睨まれたので、お口チャックしますわ。アルファくんの方がよほど(オーガ)だぜ。



「その人をどうするつもりだ。何を企んでいる」


「お前たちには関係ないことだ。退け」


「他のアースガルズ修道院にいた人たちもお前が拐ったのか?」


「だったら、なんだというんだ!いいから退け!!」



一向に退かない私たちに苛立ったオーガさんがアルファ目掛けて蹴りを繰り出す。それより早く私が『障壁(バリア)』を唱える。

無意識の反射に意識である魔法を組み込むのは大変だったが、お姉さまのごうも、じゃなくて教育の賜物で見事身についたのだ!

オーガさんもまさか自分の蹴りに反応できると思ってなかったのか、驚いてる。よしよし。



「ふん、小賢しいわ!!」


「え!?うわっ!!」


「シス!」



オーガさんが『障壁(バリア)』を物ともせずに壊して、その上で私を狙って攻撃してきた。

アルファくんが服を掴んで引っ張ってくれたから、無事だったが、風圧だけで髪の毛の先っぽが切れたよ。

敵になってさらに再認識するオーガという種族のヤバさよ。

うーん、こんなことがなかったらその文化について詳しく聞きたいのになぁ。



「俺の蹴りの速度について来れるのはたいした物だが、実力がまだまだ足りんな。マナが足りぬ『障壁(バリア)』など、ないのと同じだ」


「それ言われると辛い、かな」



そうなのだ。反射について来れるようになったは良いが、肝心の防壁力はマナの扱いが下手なため、そこまで強くない。

けど、蹴り一発で壊されるとは思わなかったし!



「アルファ、この状況なんとか出来ないの?」


「人質がいるからな。下手に炎も雷も出せないし、かといって、死神ならともかく俺が武術で、オーガに勝てるわけないだろ」


「うう、こういうときにあの怪力が欲しくなるよ。あれがあったら当たれば一発なのに」



アルファと小声で話し合う。しかし、解決案は見いだせない。お兄さまが居てくれれば、奇襲からの人質の解放とオーガさんを捕縛が出来るかもしれないのに。


こうしている間にもゆっくりとオーガさんは距離を取っている。このままじゃ、逃げられちゃうよ!



「今だ!やれ!」



オーガさんが私たちの後ろに向かって叫んだ。急いで振り返るともう一人、フードを被った男が今、正に拳を振り下ろそうとしている。

障壁(バリア)』は間に合うもこちらのオーガさんにも効果はあまり無かったようだ。壊しても同じ速度で拳が降りてくる。

背中に重い衝撃が加わったかと思うと、気を失ってしまった。









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