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ヒロインにしか見えない悪役令嬢?物語  作者: 松菱
三章 婚約者編
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仲直り出来たようです!







目を覚ますと、サーシャちゃんが寝ていたベッドに寝かされていた。

上半身だけ起こして辺りを見回したら、近くに神父さんもいたらしく目が合った。



「起きたのですね、今、エスリンさまたちを呼んできます」



と言って部家を出ていった。すると1分もたたない内にお兄さまが来て、次にアルファくんが息を切らして入ってきた。



「シス!大丈夫か!?辛くはないか?いつも元気なお前が病に負けるなんて」


「そりゃ負けるよ。人間だもの」


「いくら流行り病とはいえさっきまで元気だったやつが急に倒れるわけないだろ。なにしたんだよ」


「なにもしてないよ。サーシャちゃん可愛いなって見てただけ」



問われたことに正直に答えてるのに二人は疑り深い目でこちらを見てくる。なにも隠してないよ?ほんとだよ?



「流行り病で死にかけたサーシャの願いを叶えたのでその代償を支払ったためですわ」



エスリンちゃんが部屋の扉を閉めながら、アルファくんに告げる。お兄さまとアルファくんがこちらを見て、



「シス!どうしてそんな危険なことをしたんだ!!」


「一歩間違えたら死んでたぞ!?」



二人して責め立ててくる。そんなに怒らなくてもいいじゃんか。ケチー。



「俺だって母さんのために使ってもらおうと思ってるんだから、使うなとは言わねぇよ。けど!使うなら使うってちゃんと俺に報告しろよ!守ってやれねぇだろ!」


「はい、すいません……」


「お前が守る必要はない!もう二度とお前らに能力を使わせるか!シス!」


「は、はい!」



お兄さまがいつになく鬼の形相でこちらを見てくる。そし手を伸ばしてくる。叩かれる!?と思って目を閉じた。



「そんなにぽんぽん能力を使うなと言っただろう?あまり不幸が増えれば俺の願いだけじゃ守りきれなくなる。頼むからこれ以上俺を心配させないでくれ。お前がいないと俺は……」



そっと抱きしめられた。首筋からはお兄さまの啜り泣くような声も聞こえる。え?そんなにやばい状況だったんだ。

今さら自分の状況を理解すると、一気に罪悪感が増す。



「お兄さま、ごめんね?」


「使わないと約束するまで許さない」



ひとまず謝ってみるものの、許してもらえなかった。約束してあげたいけど、それは無理な相談だ。



「好きって気持ちは理屈じゃないから、それは無理だよ。私はこれからも色んな人を知って好きになりたいし、仲良くなりたい」


「こういうときは嘘でもうん、って言えよ。お前は本当に手のかかる妹だ」


「ごめんね、お兄さま」



お兄さまの気持ちは痛いほどわかるけど、でも譲るつもりはない。だから謝るしか出来ないのだが。



「ダメだ。許さない」


「そっかー。ならもう仕方ないかな」


「いや!諦めんなよ!もっと説得しろよ!っていうか!いくら兄妹でも長過ぎなんだよ!離れろ!!」



許してもらえなかったのでなんかもうこのままでいいかなって思ってたんだけど、アルファくんに引き離されちゃった。君、意外と力持ちなんだね。

ただ、お兄さまに睨まれて、冷や汗かいてなかったらもっと格好よかったけどな。



「シスさま、どうして貴女はそこまで平然としているんですか?」


「ん?」



今まで黙っていたエスリンちゃんが口を開く。

平然としているのと聞かれてもな。実際に今は元気だし。



「怖くないんですか?死んでたかもしれないんですよ?その仮面の方の言うとおり、その方だけ好きでいればこんな目に合わずに済んだんですよ」


「あー、そうだね。確かにそうすれば平穏無事だね」



お兄さまの心労を考えるならそうした方がいいだろう。いつもお兄さまばかりに頼って申し訳ないとは思ってる。



「でも、そうやって引きこもって自分とばかり向き合うのはもう疲れたんだよね」



それはもう前世で散々やって飽きた。自分を守ることは確かに出来たけど、そのかわり後悔と懺悔しか残らなかった。

お兄さまが側に居てくれてるから、前世とは違うかもしれない。けど、飽きたものは飽きたのだ。



「この能力がなくたって人間死ぬときは死ぬし、生きるときは生きる。それに怯えてせっかく授かった能力を使わない方が怖い。後悔に苛まれて自殺なんてもうしたくない」


「シスさまはお強いんですね」



私の答えを聞いたエスリンちゃんが優しく微笑む。

強い?誰が?私が?とんでもない。



「違う違う。強いんじゃない。わがままなだけ。もし強いならそもそも『幸運』なんて中途半端な能力にせずに自分の力で全て救えるぐらいの力を身に付けてるでしょ。私の好きな人の願いしか叶えないってのが既に自分のことしか考えてないの丸わかりじゃん?」


「全てを救うなんて女神にしか出来ません。いくら『来訪者』でも無理です」


「そうだね。じゃあ私は強くないね」


「そうですね。……あれ?」



よしよし、上手く話を逸らせたぞ。私が強いなんて買いかぶりあってはならないよ。というかあれだけ負け続けたのエスリンちゃん忘れたのかな?どう考えても激弱でしょ。



「シスが強かろうと弱かろうと俺の世界一可愛い妹には違いない。つまりシスが女神だ」


「ちげぇよ!!お前は自分の世界に引きこもってないで現実を見ろ!!」


「よく言ってくれた!かっこいいぞ!」



お兄さまの妹馬鹿発言に私より早くツッコミしてくれるアルファくん。頼もしすぎる。ツッコミ仲間が増えてくれることの安心感よ。



「お兄さまとシスさま、こんなに仲良しなのに私はいったいなにを見ていたのかしら」


「ん?エスリンちゃん、どうしたの?そんなに目をキラキラさせて」



倒れてからエスリンちゃんが私を睨まなくなったのは嬉しいのだが、なんだか様子が変だ。

どうしてそんな微笑ましいものを見るような目で私とアルファくんを見るのかな?



「シスさま、いえ義姉さま。先ほどまで大変失礼を致しました。どうかお兄さまのこと、よろしくお願いいたします」


「はえ?」


「はあ!?」



いや、だから!いつも言ってるけど!エスリンちゃんは急展開すぎるんだってば!!何がどうしてそんな展開になった!?

私は勝負に負けて、孤児院に勝手についてきた挙げ句倒れただけだよね?

どこに見直す要素あった?私ならこんな義姉嫌だけど。



「私のことを本当の妹だと思ってこきつかってください。お義姉さまみたいになれるよう頑張ります」


「はい!?待って、待って!?情報量が多すぎる!整理できない!馬鹿なめんなよ!?」


「おま、お前!!俺の妹に何したんだよ!!シスにエスリンはやらんからな!!」


「人の話聞いてる!?情報量が!!多い!!!誰でも良いから説明して!!」


「では僭越ながら私めが」


「待って!?これ以上人を増やさないで!?頭パンクしそう!あと、お兄さま!ちゃっかり私に抱きついて寝ようとしないで!?お仕事お疲れ様!!」



途中からギルさんは参戦してくるし、お兄さまはもう飽きたのか、寝る時間なのかいつものように抱きついて寝ようとし出すし、一言で言うとカオス。


ーーーもう私も寝ちゃおうかな。



「おい、待て!寝かせねぇよ!?ちゃんと説明してけ!!」


「まぁ、お兄さま!なんて大胆な!私がまだおりますのに!」


「あんなに小さかったお坊っちゃまがここまで成長なさるとは。私は感動しておりますし、やや軽蔑いたします」


「そういう意味じゃねぇ!!黙っててくれよ!特にギル!!」


「もう!!君たち全員うるさい!!寝る!!」



付き合ってられるか!俺は寝るぞ!!



と言わんばかりに布団に潜り込んだ。アルファくんたち私が病み上がりなの完全に忘れてるわ。

治ったはずの熱がぶり返してくるのを感じて私はもう一度眠りについた。


完全に眠りにつく前に神父さんが三人を怒ってるような声が聞こえたのはまぁ、至極当然だろう。






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