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ヒロインにしか見えない悪役令嬢?物語  作者: 松菱
一章 公爵家編
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異世界転生しました!






みなさん、こんにちは!私、アリーシャ・シアルフィといいます!転生者です!死因はイジメを苦にして自殺しました。うん、ありきたりですね!

で、これを見てる転生予備軍のみなさんにお伝えしたいことがあります。



「私のアリーシャをどこをやったの!?この人殺し!!私のアリーシャを返してよ!!返して!!!」



迂闊に自分が転生者って言わないようにすること!じゃないと、痛い目に合うぞ⭐



「落ち着いてください、奥さま!」


「アリーシャ!お前は部屋に戻っていなさい!」




あー、現実逃避してる場合じゃないか。これ、また死んじゃうのかな。痛いのは良いけど、怖いのは嫌いなんだけどなぁ。


と、どこか他人事のようにぼぉっと、ヒステリックに叫び、アリーシャの髪を掴み暴れるこの世界の母親を眺める。




シアルフィ家の食堂は阿鼻叫喚に包まれていた。

事件はアリーシャの8歳の誕生日パーティーで起こった。突如、アリーシャが自身を『来訪者』だと言ったことに起因する。


『来訪者』


それはこの世界とは別の世界から来た者を指す。来訪者は様々な方法でこの世界へやってくる。

召還される者、時空の歪みから迷い出でた者、死後この世界の住人へと転生される者。

アリーシャは後者である。

『来訪者』はこの世界ではさほど珍しいものではなく、数は少ないものの一定数存在している。

もちろん、異界人ということで差別はあるものの、この世界にはない知識や技術が重宝されているので、『来訪者』は基本的にこの世界の住人には友好的に迎えられていた。

だからこそ、アリーシャは大好きな両親に真実を告げようと決めたのだ。きっと快く迎え入れてくれると信じて。

けれど、彼女の思惑とは裏腹に、告げた瞬間母親は豹変し、アリーシャに掴みかかってきた。

それは何故か。


アリーシャがまったく両親の姿に似ていなかったからである。


父親は金髪、碧眼を持つ。西洋人の造形をしており、切れ長な目が知的な印象を滲ませる。

母親は亜麻色の髪と翡翠の瞳。背中まで伸びた髪は日に当たると宝石のようにキラキラと輝く。顔立ちも美しく、同じく西洋人の造形をしたその姿は、皆が思い描くお姫様そのものだった。


対してアリーシャはというと、髪色と瞳の色こそ違えど、前世の姿そのままで転生してしまったのだ。

石のような丸く潰れたような不恰好な形の顔。太い眉に反比例するような細長い目。鼻は低く、唇はふっくら膨らんだ日本人の造形。

髪色は淡い藤色。瞳は夜を思わせる紺色。

どこをどう切り取っても両親にまったく似ていない。


そのため、母親はシアルフィ家の者からまったく似ていないことで嫌みを言われ、使用人からは不義の子ではないか、という噂を立てられて心身共に病んでしまっていた。

それでも、自分が産んだ我が子だから。いずれどちらかには似るはずだから。と信じて愛情を持って育ててきた。


なのに、実は『来訪者』で、前世と同じ顔なのだ、とヘラヘラして口にするアリーシャを見て母親の中の何かが切れた。



「返しなさい!!あんたなんて娘じゃない!!私がどれだけ苦しんだと!!全部あんたのせいよ!!」


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」



これ、転生者だから耐えられるけど、そうじゃなかったらトラウマものだよなぁ。いや、転生者だからこんな目に遭ってるのか?



思考の外では涙を流して謝っているというのにこの余裕である。








やがて、アリーシャは自分の部屋に戻された。髪はボサボサ。服はボロボロ。部屋の外からは未だに阿鼻叫喚が聞こえてくる。



「いやぁ、ひどい目にあった」



誰に言うでもなく呟く。アリーシャの言葉に応えてくれる声はない。

それでも、アリーシャは続ける。もはや癖のようなものだ。



「望まれてないのに、居たくはないなぁ。どうしようかな」



ふと、部屋の本棚に目がいく。様々な形や色の絵本が並ぶ中、魔物を倒す勇者の絵本が目にとまった。

そうだ、そう言えばここは異世界なんだ。



「よぉし、ここを出て、冒険者になるぞ!」



そして、今度こそ自分を必要としてくれている人の元へ行きたい。そう、決意した。


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