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ヒロインにしか見えない悪役令嬢?物語  作者: 松菱
二章 修道院編
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嫌われるのはお断りです!








修道院に来て、さらに数日が経った。先輩たちはあのバケツの一件以降、絡んで来ず、平和な毎日を過ごしている。

からかいやいじめがない、といった意味では。





「ーーーつまり、女神はこの七つの大罪を重く罰することにしたのです。特に『傲慢』と『嫉妬』は人を堕落させる最たるものとしてフレイア教ではかたく禁じられています」




今は礼拝堂で聖書を読みながら座学のお勉強中。 ご年配の修道女先生の解説を聞きながらの聖書黙読は、ものすごく勉強になる。


え?無神論者じゃなかったのか?って?そこはほら、日本人特有の順応さですよ。信じるときは信じるし、信じないときは信じない。今はお勉強中なので信じてます。


そもそも私はお兄さまにあれだけタンカ切っておりますが、別に神さま嫌いじゃないですからね?


歴史的観点からすれば、宗教って一種の文化でしょう?遥か昔の人々が何を神格化したかで、昔の生活が見えてくるし、何を敵としたかで生活面での問題点も見えてくる。よく神話で蛇や狼が敵となっているのは水害や飢餓を具体化したものだと言われているし、それにーーー



「シスター?聞いていますか?」


「は、はい!聞いてます!」



考え事をしていると、また先生に呼び掛けられてしまった。

うう、また言われてしまった。でもまぁ、しょうがないのかなぁ。

他の座席はびっしりと人が座っているにも関わらず、私の座っている座席には誰一人として座っていないのだ。そのため、かなり目立ってしまっている。

誰も近寄ってこない理由はもちろん。バケツの一件だろう。院長先生まで出てくる事態になったから、あの一件を知らない人はこの修道院にはいない。

うっかりで殺されたらたまったものではないからね。私でも逃げるわ、怖いもん。



神聖魔法の実技の時も、無理やり二人組にさせられた修道女さんが泣きながら逃げてしまった。

いや、魔法と怪力は関係ないでしょう!?そこまでいやか!



こんな感じで誰も私には近寄って来なくなった。だから平和と言えば平和なんだけど。








「綺麗なお姉さんとお友達になれるチャンスだと思ったのになぁ」


「外は綺麗でも中身は極悪人だからお友達にならない方が良いですよ」


「ここは更正施設だよ?今は更正してるから大丈夫でしょ!」


「今、現に更正してない少女が目の前にいるのでそれも疑わしいですがね」



座学が終わり、昼食をお兄さまと共に摂りながら愚痴る。お兄さまは呆れたようにパンを口に運ぶ。

もちろん、私の周囲は誰もおらず、他の人たちは遠巻きにこちらを見ながらひそひそと話し合っている。

居心地悪くて、パンを詰め込むように口に入れる。早く人の少ない所に行こう。











「あんな風にじろじろ見られると恥ずかしいやら、気分が悪いやらで気が重くなるね」


「なら、あいつら全員消すか?どうせ罪人だしいいだろ」


「いいわけない!必要のない殺人は流石にダメに決まってるでしょ!」


「お前を不快にさせてるんだから、必要あるだろ」


「そんな理屈通るか!!とにかくダメなものはダメ!」


「チッ」



人通りが少なくなったので、お兄さまも本性を出してとんでもないことを言い始める。この人、ここが修道院ってこと忘れてないか?



「問題は私が嫌われ過ぎて、目立ってることだよね。なんとか好感度を上げてこの注目をなくさないと落ち着けないよ」


「そうは言うが、こんな一癖も二癖もある奴らがいる場所で上手くいくと思うか?」


「それは、まぁ、思わないけど……」


「良いじゃないか。どうせすぐに出ていくんだ。お前には俺がいればいいだろう?」



にこにこと満面の笑みで言うお兄さま。

確かに一理あるけど、それがいつかはわからない以上、やっぱり最低限の交流はしておきたいじゃん。

それに、今の状況は前世のトラウマが刺激されて苦しいし……



「お兄さまの気持ちは嬉しいけど、このままじゃダメだよ。私、どうにか会話出来るくらいにはしたい!」


「わかった、お前がそういうなら……」



そうは言うものの、あからさまに拗ねている。ヤキモチ妬きなお兄さまには困ったもんだ。



「私は、お兄さまが一番だよ。機嫌直して?」


「別に、機嫌悪くなんてないし。それに俺が一番なのは当然だろう」


「はいはい」



そうは言うものの、口元の笑みが隠しきれていないので機嫌は直ったとみえる。

まったく、世話のやける『兄』なんだから。



「では、早速仲良し作戦実行だ!」















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