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ヒロインにしか見えない悪役令嬢?物語  作者: 松菱
二章 修道院編
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アースガルズ修道院に着きました!








「話は聞いています。ようこそ、アースガルズ修道院へ」



アースガルズ修道院は山頂に建っていた。石で外壁が造られているためか、前評判を聞いていたためか、全体的に重い印象を受ける。

中に入ると、修道院は想像していたような教会ではなく、まるで監獄のような造りになっていた。

鉄格子の部屋がいくつも並び、遠くからは女性の悲鳴のような叫びも聞こえる。

修道院にいる人たちも服装こそ修道女ではあったが、私を見る目は厳しく、そして荒々しい。

院長室へ通されて入ると、そこには



「マイヤーさんじゃん………」



山育ちの少女の作品に出てきた、気難しい家政婦長にそっくりな女性がそこに立っていた。違うのは服装くらいだろうか。髪型も顔も声も瓜二つなほどに似ていた。



「え、これ、著作権大丈夫?許可取ってある?」


「ちょさくけん?弱そうな剣だな」



思わず、お兄さまの袖を掴んで耳元で囁くも、お兄さまは首を傾げる。

くっ、流石に万能マンでも異世界語は通じないか。



「聞いていますか、シスター」


「あ、すいません。聞いてませんでした」


「はぁぁぁ、そうですか。ではもう一度説明します」



長いため息をついた後に、嫌そうな顔で説明始める。こっちからすると、あなたのその瓜二つ具合にため息吐きたくなってますからね?止めようね、そういうの規制多いんだから。



マイヤーさん、じゃなかった、院長先生はここの一日を説明してくれた。


朝5時起床、7時まで修道院の掃除や草むしり、7時~8時まで礼拝堂で女神へ祈りを捧げる。8時に朝食。9時から聖書を読みながら、フレイア教の勉強、もしくは神聖魔法の鍛練。12時に昼食。13時~18時まで山の麓まで降りて、林檎の栽培。19時に夕食。20時に部屋で祈りを捧げ、就寝。



「ちなみにお風呂は週に2回。川から水を汲んできて行います。もちろん、自分の分は自分で行うのですよ」


「ならもう、川でそのまま入ればいいのでは……」


「何を言うのですか。この水汲みも修行の一貫です。沐浴以外で川に浸かることは許しませんよ」


「うへぇ」



これは確かにきついな。想像以上に過酷だったわ。冒険者になるのも楽じゃないか。



「シアルフィ公爵より子どもだからと容赦しないよう言伝っております。その性根を叩き直して差し上げましょう」



院長先生は威圧感たっぷりに睨み付けてくる。マイヤーさんもこんなだったけど、なんだかんだ優しかったんだよな。きっと私のために言ってくれてるんだから、頑張ろう。



「性根は治らないと思いますが、よろしくお願いします!」


「シスター!一言多いですよ!」


「はい!ごめんなさい!」



私の言葉に院長先生は再び、長いため息を吐いた。そんなに長いため息吐いたら、幸せ逃げちゃいますよ?いいんですか?

あと、お兄さま。後ろでずっと笑ってんの知ってるからな。いつまで笑ってるんだよ、この人。









「なぁ、あんた、貴族のお嬢様が何をやればここに入ることになるのさ」



院長室から出て、自分の部屋へ向かおうと廊下を歩いていると、気の強そうな修道女たちが三人、私の前に立ち塞がった。



「しかも、生意気にメイドなんて連れてさ。あんた私たちをからかいに来たわけ?」


「言っとくけど、逃げ出そうなんて考えない方が良いわ。山には人攫いの根城があって、逃げ出したが最後。拐われておしまい。ここにいるよりもっと辛い目に合わされるんだって噂だよ」



そっちから質問してきたくせに、こっちの回答を待たずにまくし立ててくる。じゃあ、聞くなし。

ちなみにメイドさんってのはもちろん、お兄さまのことだ。女だけの場所に男がいたら大問題だしね。



「逃げないので大丈夫です。心配してくださってありがとうございます」


「人攫いとは穏やかではありませんね。院長やヴァルハラの司祭たちは対応してくださらないのですか?」



お兄さまが詳細を聞こうと身を乗り出す。こういう話は気になるのかな。職業病ってやつ?



「さぁ?あくまで噂だからね。本当かどうかもわからない。ただ言えるのは、逃げ出した奴は無事じゃすまないってことさ」


「そうですか……」


「あんたも気の毒だね。主人が極悪人だったがためにあんたまで道連れになって」



なんて言葉こそ同情的だが、口調は完全に馬鹿にしたようにお兄さまを挑発している。

お兄さまはにっこりと微笑むと、



「お嬢様は濡れ衣ですから。貴女がた(・・・・)と違ってすぐにここから出られますよ」



なんてお兄さまも負けずに挑発し返す。二人の目から火花が散っている気がする。

なのに、二人とも笑顔だからさらに怖い。



「ふぅん?それならいいけどね。こっちも子どもなんかがいたら気が散って仕方がないし。早く出ていかせてよ」


「言われなくても」



言いたいことが言えてスッキリしたのか、端に寄ってくれた。私は一礼すると、改めて部屋へと歩き出す。



「お嬢様が何日で音をあげるか楽しみね」



なんてすれ違い様に言われた気がするが、気にしないことにする。じゃないと、お兄さまが今にも彼女らに何かしそうで怖いから。

お兄さまって、こんなに沸点低かったっけ!!?



これからの生活、大丈夫かなぁ。








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