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 第二部 魔国統一編 メイロシュトローム


「船長は見晴台に向かってます」


 僕たちの担当のメイドが後ろから追いついて来る。


「そこまで案内してくれ」


 断続的に揺れる船内を僕らは駆け抜ける。


「大丈夫です。問題ないですので、皆様、室内で待機して下さい」


 違うメイドが多分お客さんを誘導している。そういえば、この船にはかなり沢山の客がいる。暴動が起きなければいいが。



 僕たちが案内されたのはメインマストの下。縄ばしごが上まで続いている。


「ゲッ、これを登るのか?」


「ロザリーはか弱いからパス」


「アシュー、先に登ってよ」


 ルシアンが僕の背中を押す。


「いや、ルシアンが先に登るべきだ。もし落ちそうになったら俺が助けてやる」


「ええーっ、嫌よ。アシュー、上を見るでしょ?」


 あ、そうだよな。コイツの服、ほぼお尻丸出しだから下から見ると凄い事になりそうだ。


「緊急事態だ。そんな事言ってる場合か! 上など見ない!」


「分かったわ。約束よ」


「ああ」


 ルシアンはスルスルと縄ばしごを登り始める。慣れてんな? お姫様って縄ばしごを登るものなのか? それは置いといて。


「アシュー・アルバトロスの名において命ず。出でよ筋肉茸」


 なんか久しぶりにキノコを召喚した気もするな。僕の体に筋肉茸が菌糸を張り巡らせて、全身の筋肉を強化する。一瞬にして僕はボディビルダーもかくやのマッチョマンになる。一発ポージングをかましたいのを我慢して縄ばしごを登る。


 いかん、上を見るとかなりルシアンと差がついている。お尻があんまり見えない。加速だっ!


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!」


 気合いを込めてマッハで登る。みるみるうちにお尻が近づいてくる。


「アシュー、もっと優しくしてっ! 揺れすぎ揺れすぎよ!」


「しょうがないだろ。力が満ちあふれてるからな。そんな事より急げ。追いつくぞ!」


「ゲッ! アシュー! 上見ないでって言ったわよね」


「緊急事態だそんなん知るか!」


 けど眼服だ。ルシアンが足を動かす度にパンツが食い込んでヤバいものまで見えそうだ。あと少しあと少しでもっと間近で拝める。


「だから、まじまじ見ないでよ!」


「しょうがないだろ。上を見ないと登れないだろ。そんな服を着てる方が悪い。船の上では炎厳禁だから普通の服着とけば良かっただろ」


「けど、もしかしたら、戦いになるかもしれないじゃない。あ、そうよ。良く考えたら、あたし飛べるじゃない。わざわざ登る必要無いし」


「チッ! 気付いたか」


 ルシアンは背中にコウモリみたいな羽根を広げ、ふわりと宙に浮き僕の隣をホバリングする。ん、そう言えばルシアンはロザリーにコウモリは嫌いって言ってなかったか?


「頑張れ! 頑張れ! アシュー!」


 隣でルシアンがエールを送ってくれるが、はしごを登る楽しみが無くなったので、ボチボチ登る。そして、意外に広い見晴台につく。


「何が起こってるんだ?」


 僕は先に見晴台にいた船長に尋ねる。あともう1人見張りと思われる男がいる。そして、ルシアンは見晴台の手すりに腰掛けている。


「大きな渦巻きに巻き込まれた。風魔法を最大にしても渦から逃げられない」


 船長が言うとおり、下を見ると船体が巨大な渦に囚われている。これってヤバいんじゃないか?


「見て下さい。渦の中心に何か、何か人影のようなものが見えます!」


 遠視の魔道具を手にした見張りが大声を出す。


「目の錯覚だろ」


「ちょっと貸して」


 ルシアンが見張りから魔道具を奪って、渦の中心を見る。


「女、女の子ね。女の子の上半身が見えるわ。ちょっと言って話してみる」


「待てルシアン、俺も連れて行け」


「んー、なんとか運ぶ事は出来ると思うけど、危なくなったら落としちゃうかも。アシューは泳げるの?」


「ああ、問題ない」


 僕は召喚した水中呼吸茸を見せる。


「ふうん、キノコね。分かったわ。行くわよ」


 多分僕がキノコで何かするって言うのは伝わったらみたいだ。僕は水中呼吸茸を口に咥え、ルシアンに両手でぶら下がって大空に飛び出す。


「うわ、意外に重いわね。落ちる落ちる!」


 ほぼそのまま下に落ちていく。このままじゃ船に激突だ。もしかして筋肉茸って重いのか? まあ、筋肉って重いって言うしな。即座に筋肉茸を送還する。


「どうだ、持ち直せそうか?」


「うん、大丈夫よ」


 少しづつ落下速度は遅くなり、なんとか宙に止まる。


「じゃ、行くわよ」


「ああ」


 上を見ると壮観だ。2つのでっかい丸いものが目に入る。しかも羽ばたきに合わせてゆっさゆっさ揺れる。ずっと見ときたいが、そうも言ってられないので、前を見る。窪んだ渦の中心に向かって行く。近づくにつれ、はっきりと渦の中心が見えてくる。女の子だ。明らかに女の子が渦の中心から上半身を生やしている。渦はグルグル回っているのに彼女は微動だにせず、こっちを見ている。気付かれたか? まずは平和的に。


「おーい、何してんだ?」


 結構近づいたから、声は届くはず。もう彼女の顔も良く見える。濡れたウェイビーな髪に気怠そうな表情。身に纏っているのは貝殻のブラジャー。もしかして人魚なのか?








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