第二部 魔国統一編 優雅な船旅
ルシアンとロザリーを残して、僕は貴賓室に戻る。ロザリーが保護者として連れて行きたメイドが後ろについてきている。ロザリーはカジノに入るのに彼女を利用したあとは自由にしていいって言ってたそうだ。けど、待ってたそうなので、僕について来るように言った。帰りしな色々船について聞いたりして、そして、部屋に戻る。なんとこの部屋にはシャワーなんかもある。とりあえず汗を流して着替える。マジで船の中なのに凄い。さすが魔界の船と言った所か。
さっきのメイドになんか適当に本を持ってきて貰って、ベッドでゴロゴロする。なんて言うか、こんな今までは日常だった事がとっても贅沢に感じる。まあ、何度も死にかけたしな。ちなみにベッドルームは幾つもあるので、1人一部屋だ。そして、いつの間にか寝てた。
「なんか自堕落な生活してるわね」
気が付くと、またもや神殿のような所で頭にキノコを生やした見目麗しいけどメッチャ頭悪そうな女性と向かい合いながら座っている。基本的に誰でも頭に何か生やした時点で、インテリジェンスはかなり低く見えると思う。
あ、そうだコイツは賢者茸。また夢のような世界に来たのか。なんか夢と似てて、ここで話した事って忘れがちなんだよね。確か、コイツは物知りだって言ってたよな。今日は何について聞くか?
「自堕落じゃない。ゆとりがある生活って言って欲しいな」
「まあ、大してかわらないじゃない。で、今日は何について聞きたいの?」
「そうだな。まずはスノークイーンについてかな」
「ゴメンねー。私たちより強力な存在についてはあんまりわからないのよ。分かる事って言ったら、色んなものを冷やす能力があるって事くらいかしら」
げっ、やはりスノークイーンって僕より強いのか。
「それくらい俺でも分かるわ。役立たずだな」
「まあ、それについては否定は出来ないけど、耳よりな情報ならあるかしら」
「ん、なんだよ。まあ、また下らない事だと思うけど、とりあえず言ってみろよ」
「貴方って、十大魔王の1人の影渡りのロザリーを隷属させた訳じゃない。それに、次の十大魔王候補だったルシアンも隷属させた訳だし」
なんか賢者茸がじっと僕の方を見ている。どうしたんだ?
「ん、鈍いわね、まだ分からないの?」
何を言ってる? 訳わかんないよ。
「ん、なんだ? それがどうした?」
「もう、鈍いわね。十大魔王達は基本的に仲が良くなくて、お互いにどうやって蹴落とそうか躍起になってる訳よ。だから色んな所に間諜を潜ませてるのよ」
「カンチョーを潜ませる?」
「なんで、そんな所ばっかりに食いついてくるのよ? もう、だからDTは……」
コイツ、隙あらば僕をディスりやがるな。
「怒るぞ」
「ごめん、ごめん。貴方が思い浮かべたのは、便秘を治すための浣腸でしょ。私が言ったのは間諜。要はスパイの事よ」
なんて心がこもってない謝り方だ。
「それならそうと早く言えよ。それなら俺だって知ってる」
スパイの事もカンチョーって言うのか初めて聞いた。
「だから、貴方が2人を隷属させた事は他の魔王にも伝わってる訳。魔王クラスを2人も隷属させてる魔王なんていないわ。どから他の魔王達がこぞって貴方を狙ってくるわよ。だから、のうのうと本なんか読んでる暇があったら自分を鍛えるべきなのよ」
「えー、やだ。さすがに海の上で襲いかかってくる物好きは居ないだろ。陸に上がってからしっかりと修行するよ。せっかくの豪華な船。しばらく楽しませてくれよ」
「まあ、確かに海の上で襲いかかって来るのは水王くらいだとは思うけど」
「変なフラグ立てるの止めてくれませんか? まあ、だけど一応対策しとかないとな。水上で役に立つキノコって何かあるのか?」
「そうねー。これなんかどうかしら。水中呼吸茸。このキノコの傘を口に入れると空気を出してくれるから、水の中で呼吸出来るようになるわ。けど、キノコを口に咥えてる姿ってなんかアレよねー」
「アレってなんだ?」
「分からないの? だからDTは嫌よね」
「ソロソロ本気で怒っていいか?」
「ごめん、ごめんって」
コイツが言ってる事は訳が分からんが、まあ、このキノコは使えそうだな。
「あっ、もう時間だわ。じゃーねー」
「もう時間じゃなーだろ。もっと有益な事話せよ!」
けど、視界が白んでいく。そして、僕はベッドで目を覚ました。もう朝か。何だか役に立たない話だったな。
そして、それから数日は何も無く平和に過ごした。僕は本を読んだりルシアンやロザリーや船長と魔界について話したりして、この世界について学んだ。ちなみにルシアンとロザリーはカジノに行ったり本を読んだりしている。
ガコン!
唐突に船が大きく揺れる。僕はベッドで寝っ転がりながら本を読んでいたが、床に投げ出される。何だ? 何が起こった?
「お前様、大丈夫かしら?」
ロザリーが部屋に飛び込んでくる。
「ああ、大丈夫だ。ルシアンも呼ぶぞ」
「アシュー、私もいるわ」
「取り敢えず、船長室へ行くぞ!」
貴賓室から船長は結構近い。僕たちは揺れる船の中、船長室へと急ぐ。




