7話 次兄との邂逅
「お前、もしかしてアシューか。見違えたぞ、お前、世を儚んで自殺したんじゃなかったのか?」
俺は洞窟を出て、まずは実家に向かった。面倒くさいので、眠り茸の胞子で、兄さん以外の使用人には眠ってもらった。兄さんは屋敷の執務室で書類に目を通していた。
「誰が自殺なぞするか。兄貴、久し振りだな元気か?」
「口を慎め下郎が、今はお前とは身分が違う。俺の事は伯爵と呼べ。俺は爵位をついでケイン・アルバトロス伯爵となったのだ!」
ケイン兄さんは口の端を歪める。伯爵ごときになってもしかして嬉しいのか?
『あの、茸王様、あの不遜な輩、今すぐにミンチにしましょうか?』
俺の心に念話が届く。ルシアンだな。遠視のスキルで状況を見てやがるな。
俺が自殺したと思ってるって事は兄貴はかたきではない。別に戦う理由は無い。
『ルシアン、手出しは無用だ。家族の事は自分で片をつける』
俺も念話でルシアンに答える。
『承知致しました』
ルシアンからの念話はきれた。
「どうした、恐れ多くて口もきけなくなったのか? ハッハッハ!」
2年前よりもさらに大きくなった体を揺すって兄貴は笑う。けど、心なしか顔色が良くない。痛風にでもなったのか?
「ほう、そうか良かったな伯爵になれて、達者で暮らせよ」
俺は兄貴に背を向ける。
「まて、お前は爵位に興味はないのか?」
「あるわけないだろ。俺はアルバトロス、アホウドリの名前は捨てた。俺の名は魔道王アシュー・フェニックスだ。今日の所は見逃してやる。命が惜しければ俺に構うな。あばよ!」
俺は右手を上げて、兄貴に別れを告げる。
「まてぃ、お前アルバトロス家を馬鹿にしたな。アルバトロスはアホウドリじゃなくて神聖な鵬だ。お前には兄としてお仕置きが必要そうだな。稽古をつけてやる。修練場に来い!」
兄貴はそう言うと早足で隣の部屋に行った。面倒くさいが少し付き合ってやるか。俺は修練場に向かう。
「お前、屋敷の者に何をした」
それからしばらくして、兄貴は板金の鎧フル装備で大盾と剣をもって修練場に現れた。修練と言うよりも実戦する気まんまんだな。
「眠ってもらっただけだ。過労で疲れてたんだろ、みんなグッスリだ。時間がたったら起きる」
「怪しげな技を使いやがって、茸使いなんてくずスキル持ちのくせに生意気な! 重戦士の力見せてやろう。死なない程度に痛めつけてやる」
兄貴はガシャガシャ鎧の音をたてながら近づいてくる。気合いを入れ剣を横にして上段に振り上げる。
「遅いな、あくびが出るぞ。来い筋肉茸、鎧茸!」
魔界から召喚された俺用の茸達が体を覆う。筋肉茸が体に根をはり身体能力を飛躍的に上昇させる。鋼より硬く瞬時に自己修復する鎧茸がその上を覆う。
ここまでする必要はないが重戦士の無力さを思い知らせてやろう。
ガキーン!
金属のすれるような音と共に俺の兜に当たった剣が折れる。手加減して腹で叩くからだ。
「なにっ、なんだそれは、俺様のミスリルの剣が……おのれっ」
ミスリル? そんなの鎧茸にくらべたら粘土のようなものだ。
兄貴は大盾を振り俺を盾で殴ろうとする。
ドゴムッ!
俺の拳が一撃で盾を砕く。
「兄貴、力比べといくとしようか」
俺は兄貴の両手に己の両手を絡ませる。俗に言う手4つと言うやつだ。
「お前は阿呆か、重戦士に力比べで勝てると思うなよ」
兄貴が口を歪める。
「何が重戦士だ。お前ごとき、俺の生きて来た世界では1日で魔物のエサになってるぞ」
俺は少し力を入れてやる。
「グゥワアアアーッ!」
兄貴は汚い叫び声を上げる。俺は手を回して兄貴を軽く投げる。兄貴は空中で独楽のようにクルクルと回り地面に叩きつけられる。
「さあて、お仕置きしてくれるんじゃなかったのか?」
それから俺は軽く兄貴を揉んでやった。
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