第二部 魔国統一編 ブラックブラックジャック
「そうね、じゃあゲームは何にしようかしら」
ロザリーが口に人差し指をあてて考える。それ、ジャリがしても様になんねーよ。腹減ったアピールにしか見えない。妙齢の美女だとセクシーなのに。
「そうだな、知力体力が優れた者が勝つ、いかさま出来ないやつがいいな」
ルシアンが答えるが、そんなゲームはカジノにねーよ。体力使うギャンブルって何だよ。
「それならロシアンルーレットとかどうかしら?」
それって、回転式拳銃に1発だけ実弾を装填し、適当にシリンダーを回転させてから自分の頭に向け引き金を引くゲームだよな? 負けたら死ぬわ。
「またルーレットか。まあ、良いだろう。どんな勝負でも私は受けて立つ!」
なんかルシアンが拳など握ってるが、コイツ訳分かってるのか? 僕は軽くルールを説明してやる。
「なんと、それじゃ負けた方は死んでしまうではないか! 過激なゲームだな」
なんと、ルシアンの感想はそれだけなのか?
「船長、ここにリボルバーはあるかしら。早く持ってきて」
ロザリーが船長をせっつく。
「まてまて、止めとけ止めとけ誰得だよ」
一応止めとこう。
「私の頭は拳銃如きでは穴は空かないが?」
ほう、ルシアン石頭だな。
「ロザリーは頭に風穴空いたくらいじゃなんともないかしら」
ロザリーの不死ネタはもう食傷気味だ。
「まてまて、そんな血生臭いゲームは止めてもっと平和なのにしろ。運任せの勝負なんかしても面白く無いだろ。そうだな、カード、カードゲームにしよう。それなら頭使うだろ」
「ロシアンルーレットも頭使うかしら」
確かに頭を使うけど、そういう意味じゃない。そんなに頭をぶっ放したいのか?
「カードゲームか。私はババ抜きくらいしかしらないぞ」
なんかルシアン残念なお姫様だな。ババ抜きしか知らないってカードゲームしてくれる友達とか居なかったのかよ。
「ババ抜きって何かしら? ババァに抜いて貰うのかしら? それともどっかの方言では「ババ」って排泄物の事よね。それを抜くゲームなのかしら?」
「んな訳あるかい! とりあえずロザリー黙ろうか」
ルシアンの頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでるように見える。ロザリーのド下品なセリフは伝わらなかったみたいだ良かった。
「そうね、カードゲームならバカラかポーカーかブラックジャックって所かしら。それならバカラなんていいんじゃない? ルシアンには」
まあ、カジノのメジャー所だな。さすが長生きしてるだけあってロザリーは色々知ってるな。僕はカジノじゃなくてゲームでポーカーとブラックジャックならした事あるが、バカラはイマイチ分からない。
「ん、何でルシアンにバカラがいいんだ?」
なんかオチは薄々感付いてるが、一応尋ねる。
「お前様、そりゃ決まってるじゃないですか。ルシアンはバカだからバカラがお似合いかしら。ホーッホッホッホッホッ」
ロザリーは手の甲を口に添えて悪役令嬢高笑いを放つ。中々ルシアンを苛立たせてるようだ。
「ムキーッ! ルシアンはバカじゃないかしら! 絶対に、絶対にロザリーをやっつけて鳴かしてやるーっ!」
ガキの負け惜しみかよ。けど、コイツらの茶番を見るのも飽きてきた。面倒くせー。ポーカーは多分複雑すぎてアホのルシアンにはルールが覚えられないだろう。
「じゃ、俺がゲームを決めてやる。ブラックジャックだ。お前らはブラックジャックで勝負しろ」
まあ、正直ゲームはなんでもいい。どっちが勝っても僕には関係無いからな。
「アシュー様がそう言うのなら、ブラックジャックでいいかしら。けど、普通のブラックジャックじゃ面白くないかしら。アビス公国流のブラックジャック、ブラックブラックジャックでいかがかしら?」
「「ブラックブラックジャック?」」
僕とルシアンは聞き返す。
「そうよ、ブラックブラックジャックよ。その前に、アシュー様、ブラックジャックって早口で10回言って見て」
「ん、ブラックジャック、ブラックジャック、ブラックジャック、ブラックジャック、ブラックジャック?」
「遅いかしら、もっと速く」
「ブラックジャック、ブラッジャック、ブラッジャック、ブラッジャッ、ブラッジャッ」
「もう、ブラジャー、ブラジャーってアシュー様のエッチィ!」
「知るかボケッ! つまんねーわ、ガキかっ! そないな事より、はよ、そのブラックブラジャーの説明せろや」
「あ、今、確かにブラックブラジャーって言ったわよね」
ルシアンが突っ込んでくる。たしかにルシアンのビキニアーマーのブラジャーは黒だ。それに興味が無いかって言われたらなんとも言えない。引っ張られて言い間違いしちまった。
「聞き間違いだろ。俺はブラックブラックジャックって言ったぞ」
うう、苦しい。僕とした事が。
「はいはい、乳牛のブラジャーの事は置いといて、説明してもいいかしら?」
「ったく。お前がかき混ぜたんだろ。ちゃっちゃと説明しろよ」
「じゃ、ブラックジャックの台に移動するかしら」
僕たちは控室を出てカジノに戻る。普通にお客さんは散らばって思い思いに賭けを楽しんでるが、僕たちにその目が集まる。




