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 第二部 魔国統一編 カラクリ


「この勝負は無効だ。ディーラー、掛け金を戻せ」


 僕は意気消沈の面持ちで掛け金の回収しようとしているディーラーを止める。なかなか役者だな。


「アシュー様、どっからどう見てもロザリーの勝ちじゃないかしら。いくら何でも横暴よ! 横暴!」


 ロザリーが口を尖らせる。まあ、そうかもしれんが、だがやり過ぎだ。勝負を受けたルシアン側も悪いが、さすがに船がロザリーのものになるのはなんか気分が悪い。


「賭けた者は掛け金を戻せ!」


 僕は立ち上がって声を張る。


「ちょっと、ちょっと待ってよ!」


 まあ、当然ロザリーは反対するが、ロザリー以外はみんな負けてた訳だし、多勢に無勢。ルーレット台の上はロザリーのチップだけになる。


 どうやって事を収拾しよう? 難しいな。双方のいかさまをここで説明したら、それに怒り狂った客でカジノに暴動が起きるだろう。


「とりあえず、勝負はここで中断だ。船長、少し話をしたい。控え室に関係者を集めてくれ」


 そして僕らはカジノの控え室に行く。


 手狭い部屋に椅子を並べて僕らは座る。ロザリー、船長、ルシアン、ルーレットのディーラーがいる。


「俺には分かってるぞ。ロザリー、どうやってディーラーを寝返らせた?」


「何の事かしら?」


 ロザリーは露骨に目を逸らす。おいおい、僕より長く生きてるって言ってる割には分かり易いな。


「お前、もしかして、国を裏切ったのか?」


 船長がディーラーを睨む。


「どうして? そうか魔法か! ロザリー、やりやがったな!」


 ルシアンは鬼のような形相でロザリーを睨む。美人も形無しだな。


「何の事かしら?」


「ディスペルマジック!」


 ルシアンはディーラーの頭に手を伸ばす。そしてその手が白く光る。


「今のは何の魔法だ?」


「魔法消去の魔法よ」


 僕の言葉にルシアンが答える。


「えっ、あたしは、何を? 申し訳ございませんでした!」


 ディーラーは椅子から飛び跳ねて土下座する。激しいな、頭打ちそうだったぞ。


「頭を上げて、説明して!」


 ルシアンはディーラーの腕を掴んで起こして椅子に座らせる。その顔は険しい。激オコだ。


「すみませんルシアン様。この娘と目が合ったと思ったら、何か頭がクラッとして、それからは、この娘のために何でもしないといけないって気分になりました」


 そう言うと、ディーラーはルシアンに深々と頭を下げる。まあ、ルシアン、まじで鬼のような形相だしな。鬼みたいに角も生えてる事だし。


 ん、そう言えば、なんか物語とかでヴァンパイアとかって、目が合った人間を魅了するとかあったりするけど、もしかしてそれなのか?


「そうよ、ロザリーは偉大なる王のうちの1人。何もしなくても皆がかしづくものなのかしら」


 ロザリーはふんぞり返る。そんなんで誤魔化せるか!


「んな訳ねーだろ! 魔法だろ魔法。けど、お前、俺たちにはそんな事しなかったよな?」


 見え見えのかまをかけてみる。


「しょうがないかしら。ロザリーのチャームが効くのは、ロザリーよりかなり下位の存在だけかしら。当然、お前様たちにも試したけど、軽くレジストされてるかしら」


 いつの間にそんな事を? やっぱりコイツは危険だ。放し飼いしちゃだめだな。けど、コイツ、引っかかりやがって単純過ぎるだろ。


「おいおい、今、吐きやがったな。ディーラーを魅了したって言ったようなものだ。だから、そうだな、この勝負は無効だ」


「お前様、そりゃおかしいでしょ? 百発百中で、ボールをポケットに入れられるディーラー雇ってるカジノの方が悪いんじゃないかしら?」 


 ロザリーはルシアンをキッと睨む。


「クッ……」


 ルシアンもロザリーを睨む。


「それに、なんでお前様はルシアンの味方ばっかしてるのかしら! 不公平よ、不公平!」


 ロザリーは、打って変わって、上目遣いで僕を見る。百面相かよ、表情の変化激しすぎだろ。こういう所がコイツ胡散臭いんだよな。


「そりゃ、ルシアンは俺の眷族で、その治めている国は俺にも関係がある。それにお前も俺の眷族だ。要はお前もアルカディアの味方なんだよ。味方同士で戦ってどうする? 敵はスノークィーンだろ?」


「ロザリーがアルカディアの味方……」


 ロザリーは狐につままれたような顔をしている。もしかして思いもよらなかったのか?


「そうだよ、アルカディアはお前の国のようなものでもある。自分の国からむしり取ってどうするんだ? 自分の味方を困らせてどうする?」


「そうよね。よく考えたら、ルシアンはロザリーの敵じゃないもんね。その国を困らせたらロザリーにもしわ寄せがくるかしら。けど、理屈じゃ分かっても納得は出来ないわ。ロザリーはルシアンをぶっ倒して屈服させたいのかしら。ルシアン、一度始めた勝負、まだ継続するわよね!」


 ロザリーは立ち上がり、ルシアンをビシッと指差す。


「ああ、望む所だ。お前より、私の方が優れているという事を証明してみせる!」


 そして、2人は睨み合う。またもや火花が間に飛び散ってるように見える。


 それにしても、何かにつけてコイツら張り合ってるな。まあ、戦闘じゃないだけ平和でいいか。



 このお話は他サイトノベルピアさんで先行配信しております。下にリンクを張ってますので、ぜひお越し下さい。


https://novelpia.jp/novel/2658



挿絵(By みてみん)


 この表紙絵が目印ですっ!


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