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 第二部 魔国統一編 勝負


「じゃ、ロザリー、早く賭けなさいよ」


 ルシアンが不敵な笑みを浮かべながら、ロザリーを急かす。勝てる勝負だと思って心が逸るんだろな。けど、なんかフラグっぽいな。やられ役の。


「何焦ってるのかしら。大丈夫。ロザリーは心変わりしないかしら。ロザリーは全金額0に賭けるかしら!」


 ロザリーのチップをルーレット台の0に賭ける欄にディーラーが全て移動する。どうでもいいが、チップ、今、13の欄にあったな。なんて縁起悪い数字に賭けてんだ。あ、そうだロザリーは一応魔王だったな。

 ちなみにこのルーレット台は球が入るポケットが0と1から36まである、エウロペタイプという台だ。他にもう更に00の数字があるメリケンタイプというのもあり、基本的にはメリケンタイプが主流らしい。ルーレットでは、ポケットの色の赤か黒、偶数か奇数、数字が並んだ列など色々賭け方のバリエーションがあるが、0と00の数字だけは、そこに賭けた人だけが勝てるというルールになっている。だから0か00の目がでたらディーラー側が勝つ公算が高く、エウロペタイプより、メリケンタイプの方が賭ける側からしたら負ける確率が高くなる。

 なのに、ここではエウロペタイプなのは、お客さんに勝ちやすい良心的なタイプの台ですよとアピールしてるのたろう。それで出目を自由に操れるディーラーがいるというのはなんかアコギだな。


「ちょっと待って」


 ロザリーが立ち上がってディーラーを制する。ん、なんだ、怖じ気づいたのか?


「それより、せっかくこんなにロザリーたちの勝負目当てに集まってくれたんだから、ロザリーだけじゃなく他の人にも参加したい人は参加した方が面白いんじゃないかしら?」


「「おおおおおーっ!」」


 観客がどよめく。そりゃそうだよな。僕が客ならこんな美味しい話はない。次の勝負には親の総取りに近い、0の目が無いんだから。カジノ側はどんな事しても0以外の数字に球を入れるはず。それならば、勝率が高い賭けになる。


「次もロザリーが勝つかしら。けど、それじゃカジノ側が可哀想だから、ここの皆さんにすこしでもカジノにお金を落としてもらわないとね。当然ロザリーの0に掛けてもいいかしら」


「まて、それじゃ、カジノ側にはメリットが無い」


 ルシアンがロザリーに噛みつく。おっと、それじゃカジノ的にはロザリーが絶対負けるって言ってるようなもんじゃないか。

 多分ロザリーは鬼だから、客にも賭けさせて、もし勝った時少しでも自分に入る現金を増やそうとしてるんじゃ無いだろうか?


「あらあら、懐が狭いカジノかしら。しょうが無いわね。それじゃ、0以外が出た時のカジノの負けぶんは、ロザリーが払ってあげるかしら。さあ、お前たちどんどん賭けるのよ」


 ロザリーは立ち上がってルーレットをビシッと指差す。


「え、まじか?」


「いいのか?」


「いただきます!」


 思い思いの声と共に、ルーレットの台にチップやお金が積み上げられていく。なんか見てるこっちがドキドキしてしまう。僕も賭けようと思ったが、さすがにいかさま確定の台に張る勇気は無い。間違いなくディーラーは1番儲かる目に入れるはずだ。

 それししても、大丈夫なのか? ロザリーは現金はここにあるだけのはず。負けたら逆立ちしても今賭けられてるお金は払えないんじゃないのか? 僕に被害が及ばなければいいが。


 けど、ロザリーはなんでそんなに0の目が出る事を確信してるんだ? 考えてもその意図が分からない。


「ちょっと待て、最後にコイツが魔法を使わないか監視しとけよ。なんかロザリーから魔法が使われたら、いかさまでこのルーレットの勝負は無効とさせて貰う」


 ルシアンがさっきの客に紛れた監視員に声をかける。いかさましてるのはお前らだろ。いけしゃあしやぁと……


「はいっ。今の所、魔法が使われてる形跡はないです」


 監視員が答える。


 そして、お金とチップが更に積み上げられていき、そしてそれが止まる。なんと、船長まで賭けている。


「もう、賭ける方居ませんね」


 ディーラーが確認する。見ると誰もロザリー以外0には賭けてない。


「ノーモアベット。セット」


 掛け声と共にディーラーはホイールを回し球を弾く。水を打ったかのような静けさの中、ただ、ボールが回る音だけがする。やべ、見てるだけなのに、僕の手は気が付いたら汗でべっとりだ。


 シャーーーーッ。


 球の勢いが弱くなる。


 コン、ココン。


 球がポケットを跳ねていく。


 コン、コン、コロン。


 球がポケットに入る。もう動かない。


 その目は……









 ゲッ! まじか!



 0!!



「はい! 0いただきっ! 勝ち! 勝ちよ! ロザリーの勝ちかしら!」


「「うおおおおおおおーーっ!」」


 ルーレットの台は熱狂に包まれる。


 や、やりやがった。ロザリー、この船を自分のものにしやがった、


 けど、何をしたんだ? 見てて何も分からなかった。


「さぁ、ルシアン。ロザリーと契約するのかしら。お前は今日からロザリーの奴隷になるのかしら?」


 ロザリーは最高の笑みを浮かべて立ち上がる。


 おかしいな。あ、そうか。分かったカラクリが。ていうか、消去法でそれしか無い!


 このお話は他サイトノベルピアさんで先行配信しております。下にリンクを張ってますので、ぜひお越し下さい。


https://novelpia.jp/novel/2658



挿絵(By みてみん)


 この表紙絵が目印ですっ!


 読んでいただきありがとうございます。


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