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 第二部 魔国統一編 ルーレット


「じゃ、そうね、ロザリーに先に賭けさせてからルーレットに球いれたら絶対負けないじゃん」


 ルシアンがゲスな顔でゲスな事を言う。もはや、それって賭け事じゃないんじゃ? ただのぼったくりだろ。


「船長、ディーラー呼んで来て」


 ルシアンが呼んで、ディーラーがやって来る。


「どうしたんすか? もう止めましょ。これ以上負けたらシャレならんすよ」


 ディーラーの女性、カチッとした格好してるのに、なかなかぞんざいな奴だな。まあルシアンや船長が関係者だからか。


「ちょっと聞いてもいいかしら?」


「はい、いいっすよ」


「ロザリーが賭けたのはあなたが球を入れてからだったのよね?」


「はい、そうです。あの方は2回とも投入後に賭けられました」


 ん、何だか分からないけど今の会話に違和感を感じる。けど、なんなのか分からない。もしかしたら、ロザリーなら分かるかも、ってもロザリーは今は僕らが倒すべき相手だし。ん、けど、別に僕はロザリーが勝った方がいいんじゃないか? 小遣い貰えそうだし。けど、まあ、ロザリーが勝ったらルシアンが貧乏なアルカディア国が困る訳で。まあ、そうたな、何も考えず口出しせずに見とこう。


「じゃあ、さっきの作戦で問題無しよね。先にロザリーに賭けさせてから、あなたが球を投げる」


「はい。了解しました」


 ん、大丈夫なのか? これは我慢出来ない一言だけ言わせてもらう。


「ちょっ待てよ、お前ら。そんなんでいいんかよ。大金がかかってるんだろ? どうやってロザリーがルーレットの出目を当てたのか、そのカラクリを解いてからじゃ無いとまた負けるんじゃないのか?」


「んー、それは分からないけど、逆に言うわ。このあたしの作戦でどうやったらロザリーが勝てるのかしら?」


「そうだな……」


 僕は言葉に詰まる。僕の頭では僕がロザリーの状況になったとして、それで勝つ方法が思い浮かばない。ていうか、それはもはや賭けじゃないだろ。落ちてる金を拾うようなもんだ。それに、僕がロザリーならその勝負は受けない。だからもしかしたら、ここで勝負はお開きになるかもな。

 けど、引っかかるんだよな。じゃどうやってロザリーは今まで勝ったのか? それを看破しないとまた負けるんじゃないのか? まあ、けど、僕が負ける訳じゃないから、ま、いっか。


 そして、僕らはロザリーの所へ向かう。


「それで、作戦会議は終わったかしら? けど、運命の女神様の前に作戦なんか関係無いかしら。ルーレットの出目なんて神のイタズラ。神のみぞ知るかしら。未来の事なんて分からないわ。けど、その運命の女神様がロザリーに微笑んでる今は、何やってもお前たちはロザリーに勝てないかしら」


 ロザリーは椅子にふんぞり返る。ゴシックドレスのロリ美少女がそれをやると、ロリ悪役令嬢って感じだ。煽り感がハンパない。

 コイツはヴァンパイアっていうアンデッドのくせに何が神だ。邪悪の塊のくせに。運命とかを強調してる時点で、こいつは絶対に何かやってる。何か思いもよらないようないかさましてるに違いない。

 それに運否天賦を強調してるって事は、逆にこっちが出目を操れる事を知ってる事を示唆してるんじゃないか?


 そして、ルシアンが勝負のルールを説明する。ロザリーは顔色を変えずに肯いている。


「わかったかしら。そのルールでいいかしら」


 事も無げにロザリーは答える。


「その前に、借りてたお金返さないといけないかしら」


 ロザリーはルーレットのテーブル上のチップを取ると換金して僕にくれる。うお、マジか。大金貨1枚が10枚になって帰ってきた。こりゃ、ギャンブルにハマる人の気持ちが分かるな。


「それと、今、ロザリーは大金貨1200枚くらい勝ってる訳だけど、疑う訳じゃないけど、今ここに換金出来るだけのお金はあるのかしら? 見せてもらえないと安心して勝負出来ないかしら」


 ロザリーは髪の毛を指でクルクルもてあそびながら、船長に向かって話しかける。


「おい、持ってこい」


 船長の言葉に下っ端がカジノの奥に引っ込んでトランクをもってくる。


「「おおおーっ!」」

 

 下っ端がトランクを開けるとどよめきが起こる。中にはぎっしりと大金貨が詰まっている。


「足りないかしら。ぱっと見5000枚って所かしら。当然ロザリーは一点張りする予定だけど、勝ったら約大金貨46000枚くらいになるんだけど、どう見ても足りないかしら」


「ぐぅうううううっ」


 ルシアンが呻く。ロザリーはもしかして、賭けが成立しない事にして、今あるお金を取る予定なのか?


「船長、この船全部の資産価値は?」


「大金貨4万枚くらいだ」


「あらあら、残念。中古だという事をさっ引いてあげても足りないかしら」


 本当に可哀想って感じの顔をしてロザリーは言う。なんていうかあざといなー。


「そうね。足りない分はルシアン様の、いや、アルカディア国の借金って事でいかがかしら?」


「ごたくはそれまでか? ああ、いいだろう。足りない分は喜んで私が立て替えよう」


「じゃ、契約書を交わして貰えるかしら?」


「契約は勝ってからにしろ」


 ルシアンとロザリーは睨み合う。僕には二人の間に火花が飛び散ってるかのように感じた。




 このお話は他サイトノベルピアさんで先行配信しております。下にリンクを張ってますので、ぜひお越し下さい。


https://novelpia.jp/novel/2658



挿絵(By みてみん)


 この表紙絵が目印ですっ!


 読んでいただきありがとうございます。


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