第二部 魔国統一編 食事
「これで、三人分、質、量ともに満足いくものを三人分、飲み物つきで、貴賓室に届けてくれ。お釣りはとっとけ。金貨1枚分くらいはいいぞ」
僕は大金貨1枚をメイドに渡して、ゆっくりと散策しながら、貴賓室へと戻る。大盤振る舞いだが、またキノコを売れば金になるだろう。売れるキノコを他にも探してみよう。
ん、売れるキノコ。そう言えば高級キノコと言えばトリュフ、ポルチーニ茸があるが、召喚できるのか? キノコ界と心をシンクロする。あ、ある。しかもしこたま。明日、商人に売ろう。
「お前ら、大人しくしてたか?」
僕は扉を開けて貴賓室に入る。おお、仲良いじゃないか。二人ともソファに座ってミニ放水茸を口にしている。なんか縦笛吹いてるみたいだな。お間抜けな絵ずらだな。
「ちょっと、入ってくるならノックくらいしなさいよ」
ルシアンが僕を非難がましく見る。二人とも慌ててミニ放水茸を口から放す。ん、何慌ててんだ?
「そうよ、お前様、レディには人には見せたくない姿もあるのかしら」
ロザリーは顔を赤くしてる。どうしたんだ?
「何言ってるんだ? ただ水飲んでるだけだろ」
「それより、まだお腹空いてるから、もっとキノコ出してよ。アンタは美味しいもの食べて来たんでしょうけどね」
ルシアンは不機嫌だ。何拗ねてんだよ。
「ん、俺はまだ飯食ってないぞ。やっぱりみんなで飯食った方が美味いだろうからな」
「えっ、お前様も、一緒にキノコ食べるのかしら?」
「おいおい、お前らどんなにキノコ好きなんだよ。今日は俺たちが出会って初めて3人で食べる食事だ。なんだかんだで、お前らは俺の仲間になった。今日はその祝いだ。もうすぐ来るはずだ」
コンコンッ。
ノックだ。来たな。
「ああ、入れ」
メイドがワゴンを押してはいってくる。その顔は満面の笑顔だ。さっきお釣りは取っとけって言ってやった奴だ。
「お待たせしました。アシュー様。シェフに奮発してもらいました」
「え、何、めっちゃ良い匂いがする」
ルシアンは立ち上がる。こいつ食べ物に目が無いな。成長期だからか?
「もしかして、ロザリーたちの分もあるのかしら?」
ロザリーは大きな目をまん丸に開いている。
「当たり前だろ。ほらほら、食う準備しろ」
「ええええーっ!」
「本当かしら?」
二人とも満面の笑みを浮かべる。ちょっと照れくさいな。
ルシアンとロザリーが席を立つと、メイドは慣れた手つきで、テーブルにナイフとフォークとスプーンを並べる。ナイフとフォークは3セットづつ。オードブルとミート、フィッシュが。
そしてシャンパングラスを置いて、それにポンッと栓を抜いたシャンパンみたいなものを注ぎ始める。
「すまんが、俺は未成年だ」
「存じております。ノンアルコールのスパークリングワインです」
ん、やっぱ僕って若くみえるのか。まあ、まだ14才だもんな。そして、僕らはめいめい席に着く。
「うわ、なんかパーティーみたい。何年ぶりかしら」
そうか、ルシアンの国は貧乏そうだもんな。
「ロザリーもこういうの、十何年ぶりかしら」
十何年、こいつボッチなのか? まあ、性格悪そうだしな。それにしてもロザリーの目はめっちゃキラキラだ。まあ、嬉しそうで何よりだ。
「じゃ、俺が音頭とるぞ。俺たちの未来に乾杯!」
「「乾杯!」」
僕らはチンとグラスをぶつけ、ノンアルコールスパークリングワインを口にする。甘みは無いのに滑らかで甘く感じる。フルーティーで口の中に香りが広がる。ノンアルコールだけど、こんなワイン初めて飲んだ。
「うわ、美味しい」
お酒は入ってないはずなのにルシアンはほんのり赤くなってる。
「飲みやすい」
ロザリーも少し赤い。コイツ、ヴァンパイアだよな?
そして、スープ、オードブル、パン、メインは肉と魚のダブル。一皿づつ提供されるのを僕たちは歓談しながら楽しんだ。
どうも外の廊下で最終調理してるみたいで、熱いものは熱く、冷たいものは冷たい。正直驚く程美味しい。
僕のいた伯爵領も裕福では無かったから、こんな食事は数年前の上の兄さんの仕官祝い以来だな。
そして、フルーツ盛りをつまみながらコーヒータイム。
「アシュー、ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
「いえいえ、どう致しまして」
ルシアンもロザリーも大満足だ。そして、僕も大満足だ。やっぱり、元々のご飯が美味しかったのもあるが、美少女、美幼女と食べるご飯は格別に美味しく感じる。二人ともテーブルマナーは完璧だ。エレガントでしかも綺麗に何1つ残さず食べている。僕は個人的に食べた後の食器が汚かったり、嫌いなものを残すのは嫌いだ。どんなに綺麗な女性でもそれだけで幻滅する。その点、二人とも良い感じだ。食べ物は、僕らの口に入るまでに沢山の人が手間暇かけている。それを大事にしない奴は人間のクズだと思う。
ここしばらく、僕の主食はキノコだったので、キノコも良いが、やっぱ手間暇かかった料理は美味しいな。心が豊かになる。
「なあ、この後、どっか船の広い所で軽く体動かさないか?」
「いいわよ」
「いいかしら」
僕がこの二人を眷族にする事で手に入れたスキルを試してみたい。正直各々に聞かないと使い方が分からないからな。




