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 第二部 魔国統一編 十大魔王


「そもそも、スノークィーンって奴の目的は何なんだ? 交渉は出来ないのか?」


 僕はロザリーに問いかける。どうにか平和裏に物事は進まないのだろうか? なんか正直戦ってばかりで疲れた。温泉にでも浸かってゆっくりしたい。それに、早く街で服を買いたい。


「スノークィーンは問答無用で、辺りを氷漬けにしていってるわ。正直理由は分からない。交渉は無理ね。ロザリーもあいつとは話したけど、最終的には襲いかかって来たかしら」


「ルシアンと言い、スノークィーンと言いこの世界の奴は凶暴だな。目があったら襲いかかる猿みたいな奴ばっかだな」


「それは、すまなかった。まさか本当に人間だとは思わなかったからな」


 ルシアンは本当にすまなさそうに謝る。頭を下げた時の胸の谷間がヤバすぎる。まじで、見た目が可愛い女の子じゃないなら、ぶっ殺しまくってる所だ。


「まあ、なんとか生きてるからいいよ。それにお前は僕の眷族になってるみたいだからな」


「ああ不本意ながら、正々堂々と戦って私はお前に敗れた。不本意ながら私はお前に従うよ」


 不本意、不本意を連発するが、賢者茸はロザリーより、ルシアンの方が僕に心を開いているって言ってたよな。ツンデレか?


「ちょっと待ってよ。お前、不意打ちばっかだったじゃない? どこが正々堂々よ」


 ロザリーがルシアンに食ってかかる。


「私は、私がもつ力、知略を全て使っただけだ。これを正々堂々と言わず何を正々堂々という?」


 むー、ルシアンには一度正々堂々の意味をしっかり教えないとな。


「お前、牛乳(うしちち)女。前回はなんか不完全燃焼気味だったから、ここで1回決着をつけようかしら? お前の言う所の『正々堂々』と」


 ロザリーは音をたてずに立ち上がる。多分ここでの『正々堂々』とは、搦め手、不意打ち何でもありの下劣極まりない戦い方の事だよな。


「良いだろう。骨の髄まで燃やし尽くしてやろう」


 ルシアンも手をポキポキ言わせながら立ち上がる。まじ、コイツら猿か?


「止めろ止めろ。そんな事より、これからどうするか考えろ」


「「チッ」」


 二人は舌打ちをシンクロさせて座る。仲良しかよ。


「俺はスノークィーンに会って話をしてみたいがどう思うか?」


「速攻氷漬けにされるかしら」


 ロザリー即答。さすがに氷漬けは勘弁して欲しい。キノコの世界と心をリンクさせるが、さすがに氷点下で戦えるキノコは無いみたいだ。


「だが、戦うとなっても勝てる気がしないな」


 ルシアンが言うとおり、僕にも勝利のビジョンが浮かばない。


「ロザリーは相性的に難しいけど、他の魔王に頼み込むなり、けしかけるなりしてスノークィーンにぶつけるのはどうかしら?」


 ロザリーは目をキラキラさせている。何が嬉しいんだ? けどそれはアリだな。


「その前に俺はその十大魔王って言うのは知らないんだが」


 この世界から出来るだけ早く抜け出す事しか考えて無かったから、そんな奴らとは関わる事は無いと思ってたからな。


「まずは、わたくし、死王こと吸血公女、影渡りのロザリンド。魔王の中では最新参かしら」


 ロザリーはそう言うと立ち上がってカーテシーを放つ。うっ可愛い。


「あんたが話すと長くなるから、私が話すわ」


 ムッとした表情でルシアンが口を開く。


「1番強いのが大魔王、それに続くのが獣王、空王、海王。あとはどっこいどっこいで、鼠王(そおう)腐王(ふおう)、智王、氷王スノークィーンよ」


 指折り数えてみるが、ロザリーを入れても一人足りない。それを見てロザリーが口を開く。


「あと、もう一人は魔法王オルランド。亡くなってるけど、ルシアンの父親よ」


 なんか口を開き辛い空気が流れる。けど、今のロザリーの言葉はおかしい。ルシアンの父親が亡くなったって言った。いつもだと死んだって言いそうなのに。敬意をもってるのか?


「じゃあ、今は九大魔王って事か?」


「アシュー様。この事については私めが説明致しましょう」


 ここで、初めてルシアンのじいが口を開く。


 その話によると、前までこの大陸は氷王スノークィーンの永久凍土、ルシアンの父、魔法王の治めるアルカディア王国。ロザリーの父が治めるアビス公国の3つに分かれていたそうだ。争う事はあっても小競り合いだったと言う。それが数年前からアビス公国が全面戦争を仕掛けてきて、ルシアンの父は命と引き換えにロザリーの父と3人のロザリーの兄と姉を倒して今に至るとの事だった。


「ロザリーは魔法王に感謝してるかしら。お陰様でクズの父親と兄弟から解放されたから」


 ロザリーがクズって言う事は、かなりヤバい奴らだったんだろう。


「父様は邪悪を滅して正義を成した。私はそれを誇らしいと思う」


 ルシアンは複雑な顔だ。肉親の死だからな。


「ルシアン様は魔法王の名を引き継ぐおつもりなんですが、まだその力を示していないので魔王として認められて無いのですよ」


「て、事はロザリーは何かしたのか?」


「ロザリー? ロザリーはただ魔大陸で一暴れしてきただけかしら」


 魔王として認められるだけの一暴れ。なんか聞くのが怖いから止めとこ。


「差し出がましいかもしれませんが、今までの事を鑑みるに、皆様は一度魔大陸に行って何か氷王への対抗策を見つけて来た方がよろしいのではないでしょうか? 氷王はかつて、獣王と腐王には撃退されたと言われていますし、彼の地には何らかの策が眠っているのやもしれません」


 じいの言葉で、僕らは魔大陸って所に行く事になった。その前に魔大陸ってなんなんだろう。それに獣王はなんとなく分かるけど、『ふおー』って何なんだろう? 感嘆詞なのか?


 このお話は他サイトノベルピアさんで先行配信しております。下にリンクを張ってますので、ぜひお越し下さい。


https://novelpia.jp/novel/2658



挿絵(By みてみん)


 この表紙絵が目印ですっ!


 読んでいただきありがとうございます。


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