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 第二部 魔国統一編 戦士の休息

「ハァ、ハァ、ハァ」


 僕は暗い大地に寝っ転がる。熱くなった体にその冷たさが気持ちいい。地獄の時間だった。下半身丸出しで、小一時間は騎士たちと走り続けた。まだ筋肉茸で強化しているのに何で追いついて来れるような奴があんなに沢山居やがったんだろうか? アルカディア騎士団強すぎだろ。

 あっ、思い出した。傷ついた騎士たちをキノコで癒して強化したんだった! それを解除してたら、あんなに苦労しなかったのに……


 とりあえず疲れた。めっちゃ疲れた。なんて悲惨な1日だったのだろうか。

 奈落に突き落とされ、でっかい狼と戦って。あ、そうだ狼の皮。

 川縁でルシアンに燻製にされかけて。あ、ルシアンも多分隷属って奴させたんだよな。

 断崖絶壁を下ってやっと街を見つけたら投獄されて、沢山食用茸を出して王城で少し寝たと思ったら、戦場に駆け出した。

 そして、骸骨ぶっ飛ばしまくってロザリンドに病気うつされて、死んだふりでしのいだ。

 ルシアンとロザリンドの一騎打ちのあとにロザリンドと一騎打ち。ロザリンドを倒したと思ったら、ルシアンとの戦い。

 思い出すだけでも戦ってばかりだな。よく生き残れたもんだ。


 もう、キノコ一本召喚する力も無い。当たり前だな。今日1日でどんだけ召喚したんだよ。

 僕は空を眺める。星が瞬いている。星並びは僕が今までの人生で見てきたものと同じ。いや、おかしい。北斗七星がめっちゃ低い所にある。北極星が無い。と言う事はここは南半球? そう言えば半分以上の星は見たことが無い。いや教科書で見たことがあるような気がする。カメレオン座、テーブルマウンテン座とか訳が分からない名前の星座が南半球では見えるって昔勉強したけど、実物を見てないからあやふやだ。と言う事は星を見ても方角が分からない。ま、どうにかなるだろ。とりあえず寝よ。


「呑気なものね。お前様、こんな所で寝たら風邪引くかしら」


 横から声がする。


「お、おう、おおうっ」


 つい、奇声を上げてしまう。見ると地面から首が生えている。さっきまで僕としのぎを削った美幼女ロザリンドのものだ。


「お前、首だけになったのか?」


「そんな訳ないでしょ。影から首だけ出してるのかしら。ロザリーはもう寝るからコレをお前様に貸してあげるのかしら」


 影から手が出てくる。その手には服みたいなもの。つい受け取ってしまう。


「寝冷えしないように。お腹、暖めるのかしら」


 ロザリンドはズブズブと影に沈んでいく。なんだったんだ? 僕の呼び方が『お前』から『お前様』に変わっている。隷属の効果か? どうやら敵意は無いみたいだが、安心出来ないな。けど、キノコ力はすっからかんだ。休んで回復しないとな。

 ロザリンドから受け取ったものを星明かりで確認すると、それはロザリンドのゴスロリドレスだった。しかもそこはかとなく甘い香りがする。なんか複雑な気分でそれでお腹を温めて眠りについた。



『私の名前は賢者茸』


 目の前にまるで神話に出てくる女神様みたいな女性がいる。白に金刺繍が施されたダボッとした貫頭衣のようなものを纏い、その手には2匹の蛇が絡みついた形の杖を手にしている。白い肌にサラサラした金髪。それに大きな緑の目に小顔に通った鼻筋。美術館とかにある女神像が人間になったらこんな感じなんじゃないだろうか。

 とても美しいけど、残念な事に頭の天辺から大きな茸が生えている。昔図鑑で見た、『冬虫夏草』みたいだ。アレはセミにキノコが生えているけど、その人間版みたいだ。

 彼女は足を組んで赤いクッションがついた玉座のようなものに腰掛けている。

 大理石の柱が大理石の天井を支えていて、まるで古代からある神殿の中のようだ。外の景色は白くぼんやりとしていて判別出来ない。まるで夢の中にいるみたいだ。


『私の名前は賢者茸』


 再び彼女が口を開く。なんか言えよって事か? 気付くと僕も玉座みたいなものに腰掛けている。やっぱ夢だよなコレは。


「僕の名前はアシュー・アルバトロス」


『存じております。私は貴方、貴方は私のようなものですから』

  

「訳が分からないな」


『そうですね。私は所謂キノコで、この世界にある全てのキノコから集まった叡智を統べる者です』


「分かりやすく言ってくれ」


『簡単に言うと物知りなキノコです』


「で、その物知りなキノコが何の用だ?」


『貴方が望んだので、参りました。今、貴方は眠って夢を見ているような状態です。貴方が望んだのは自分の体に起こった事、自分の能力を知りたいという事です』


 うん、まあ、確かにそうは思ったな。


『私が貴方と意思疎通すると、それだけで貴方の脳の容量は限界まで達します。簡単に言うと、私と会話すると、五感が全て失われて気絶したような状態になります。それ故、貴方が気絶やした時や、睡眠を取ってる時に私は貴方の力になろうと思います。どうしても覚醒時に私とコンタクトとりたい時には気絶状態になる事を厭わなければ可能です』



 まさか、寝てる時さえもキノコと関わる事になるとは……



 まあ、物知りって自分で言ってるくらいだから、色々尋ねてみるとしようか。



 



 このお話は他サイトノベルピアさんで先行配信しております。下にリンクを張ってますので、ぜひお越し下さい。


https://novelpia.jp/novel/2658



挿絵(By みてみん)


 この表紙絵が目印ですっ!


 読んでいただきありがとうございます。


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