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 第二部 魔国統一編 最終決戦


「隷属? なんだそれは?」


 僕はルシアンに尋ねる。


「そっか、お前は見た目は怪人だけど、人間って言ってたわよね。知らないのね。魔族はね、魔物や魔族を倒したら、その能力を一部自分のものに出来るのよ。あと、敗北を認めた時に勝った者に能力の一部を譲渡する事が出来るのよ。けど、お前は人間なら何故?」


 ルシアンは小首を傾げる。


 僕には思いあたる事がある。魔物である狼をメッチャ食べたから、それによって、もしかしたら僕の一部は魔族に近いものになってるのかもしれない。


 能力の譲渡。


 なんか素晴らしい響きだ。という事は、僕はもっと強くなれたという事か?


「で、何でお前は俺にそんな事を教えてくれるのか?」


「それはお礼よ。何も知らないまま死ぬのは嫌でしょう? ロザリンドを倒してくれてありがとう。さすがに燃やし尽くしても再生するような化け物とは私は相性が悪過ぎるわ。これでお前を倒したら、私がロザリンドを隷属させる事ができる。アルカディアも大陸制覇に名乗りを上げられるわ」


「俺を殺す? 何言ってやがる。お前は俺の戦いを見て無かったのか?」


 悠然とルシアンは僕の前に立つ。


「見てたわよ。それが何か?」


 僕はルシアンに回復茸と一緒に打ち込んだ変幻茸でその体の自由を奪う。まあ、顔だけは勘弁してやる。コイツは魔力切れだから休むまではもう魔法は使えないだろう。


「ふーん。動か無いわ。体が。さっきは癒してくれてありがとう。けど凄いわね。人を癒したり、体の自由を奪うキノコがあるなんて。そういえば、初めて会った時には燃やしちゃってごめんなさいね。けど、キノコって火に弱いのね」


「おい、何を言ってる。お前も降伏しろ」


 僕はまた違和感を感じる。なんで、騎士たちは誰一人として加勢しないのか? 遠巻きでこっちを見ているだけだ。


「私が魔力切れでもう魔法が使えないと思ってるでしょ。けど、私たちの角って何であると思う?」


「そんなの知るか」


「大っきいし、邪魔だし。切り落とした方が生活しやすいと思わない?」


「それがどうした?」


「私たちの角にはね、魔力を貯める事が出来るのよ。あと2回は極大魔法を使えるのよ。それにもう魔法の準備は終わってて。あとは解放するだけ。じゃ、さようならキノコさん」


 キィーーーーン!


 空気が軋むような音を立てる。ヤバいと思った時には僕は思いっきり後ろに跳んでいた。少しは魔力ってものが感知出来るようになってて良かった。これは魔力、膨大な魔力だ。まだ、隠し球をもっていたのかよ!


 角を起点にルシアンの体が燃え上がる。一瞬にしてルシアンの中のキノコたちが燃えて消えたのが解る。ルシアンの着ていた服も燃え上がっているが、体が炎と化していて、体の詳細は見えない。残念。

 そんな事考えてる場合じゃ無い。まずいぞ、全身を炎にする魔法か。これは、近づかれたら負けだ。最初に会った時は抜け殻モグラ作戦で切り抜けたが、さすがに二番煎じは通じまい。


 僕は心を落ち着ける。


 僕のキノコに不可能は無い。


 火と言えば火事。火事と言えば放水。頭の中でカチッとはまる。いた、最適のキノコが!


「アシュー・アルバトロスの名に於いて命ず。出でよ『放水茸』!」


 僕の手に召喚されたのは丁度僕の腕くらいの太さの松茸のようなキノコ。色は焦げ茶色の立派なキノコだ。そのキノコの傘のてっぺんには縦にはいったスリット。キノコと心を通わせた僕には分かる。このキノコはここから無尽蔵に放水できる。詳しい仕組みは解らないけど、どうやら空気から水を作る能力を持ってるみたいだ。


 炎の塊と化したルシアンがゆっくりとこちらに歩いてくる。距離はあるのに熱い。呼吸するだけで喉が焼けそうだ。まずは試し撃ちだ。


 バシュッ!


「グワッ!」


 軽くルシアンに向けて水を放っただけなのに僕は軽く後ろに吹っ飛ぶ。なんだこの反動は? 筋肉茸で強化した体なのに。肩が外れそうになった。これは両手で押さえないと駄目だ。力が入る姿勢。子供の頃にやった綱引きを思い出す。腰に近い所で引っ張ったら力がはいる。反動を全身で押さえるために、放水茸を腰に押し当てて両手でしっかりと掴み構える。少し見てくれは悪いが、これも勝利のため。いつでも勝者は美しいものだ。


「ちょこざいな。燃やし尽くしてくれる!」


 さっきの水の一撃でルシアンは少しバランスを崩したが、体勢を立て直し僕に向かって駆けてくる。


「俺のキノコを舐めるなよ! 目にもの見せてくれてやる! 猛ろ! ぶっ飛ばせ俺のキノコ! 出して出して出しまくれ!」


 僕は放水茸を握る手に力を入れ、腰を落とし身構える。


「ファイヤーーーーーーッ!」


 僕は放水茸から水を撃ち出す。ファイヤーって言ったけど、出してるの水だよな? それは置いといて。すげぇ! こんな小さな口からなんでそんなに出るのかと思う程、大量の水が勢いよく噴き出す。凄まじい反動だ。足を踏ん張りなんとか腰をでキノコを押さえつける。激しい水流は一直線にルシアン目がけて突き進む。


 ジョボボボボボボボボーッ!


 ジュジュジュジュジューーーーっ!


 大量の水がルシアンに当たり蒸発し、辺りは蒸気に包まれる。


 意地をかけた勝負だ! 


 ルシアンの魔力が尽きるか? それとも僕のキノコ力が尽きるか?

 


 このお話は他サイトノベルピアさんで先行配信しております。下にリンクを張ってますので、ぜひお越し下さい。


https://novelpia.jp/novel/2658



挿絵(By みてみん)


 この表紙絵が目印ですっ!


 読んでいただきありがとうございます。


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