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 第二部 魔国統一編 影渡り


「フフッ、なんか体中からキノコを生やした変な生き物が暴れてるかと思ったら、人間じゃないの。お前、頑張ってたけど、その傷じゃ、もうお終いかしら。頭からガブリと食べてあげたい所だけど、急がないと、ルシアンに逃げられちゃうわ」


 金色のカールした髪の毛を揺らして、膝をついた僕の横を歩いていく。


「待て! お前が大将か?」


「あらあら、しぶといお人形さんかしら。ロザリーは退場をわきまえない人形は嫌いよ」


 シュッ!


 風を切る音がして、少女のつき出した人差し指から細剣のようなものが伸びて僕の胸に刺さる。爪? 爪を伸ばしたのか? 鎧茸を簡単に突き抜けるなんてどういう硬さしてんだ。けど、大した事無いな。体中に張り巡らせた変幻茸が血管を塞いでいるから少ししか血は出ない。


「捕まえたぞ」


 僕は口のはしを上げる。


 その伸びた爪を両手で掴んで胸にから引き抜く。体の中の変幻茸を操作して、腹を突き抜けた剣を背中から押し出す。


「お前? なんて体してるのかしら? もしかしてアンデッド!」


 失礼だな。怪人とかアンデッドとか。


「いや、正真正銘人間だ。だが、結構痛かったぞ。子供のおいたにしては度が過ぎるな。お仕置きの時間だ」


「何、何なのよ人間! おかしいわよ。なんで死なないの?」


「さてな。武器が悪いんじゃないか?」


 爪を掴んで少女を大きく投げる。少女はクルリと空中で回って着地する。


 そして、微笑むと華麗にカーテシーをする。白く細い指がスカートを摘まんでいる。その可憐さにここは戦場だと言うのお忘れ、少し見とれてしまった。


「どうやら、侮ってたみたいね。私の名前はロザリンド。アビス公国の公女よ。巷では10大魔王と呼ばれているわ」


 ロザリンドはドヤ顔で髪の毛をかきあげる。10大魔王って何なんだ? そんなドヤるほどのものなのか?


「そうか、それならその10大魔王って大した事ないんだな。子供でもなれるって事は王様みたいに世襲制なのか?」


「そんな訳ないでしょ。魔王は実力でなるもの。さっきから子供、子供って、お前、楽には死ねないと思いなさいよ」


「そうだな、俺は力があるから、そう簡単には死なないな。それより、なあ、お前、もう戦うの止めないか? 出来れば女子供を殴りたくない」


「だから、子供って言うなって言ってんだろ! 気が変わった。すぐコロス」


 ロザリンドが宙に跳び上がり、大きく手を広げる。そしてその手が伸び黒い皮膜がついた翼と化す。そして、その顔は口が頬よりも広がり盛り上がり、鼻が上を向きびっしりと黒い毛が生えて顔全体を覆い耳が大きく膨れて立つ。


 コウモリ、大きなコウモリが目の前に浮いている。


 僥倖だ!


 少女はあんまり殴りたくないけど、コウモリなら思う存分殴りまくれる。


 僕は大コウモリに向かって駆け出し、拳を繰り出す。だが、奴は浮き上がったと思ったら、遠くへと飛んで行って見えなくなった。


「逃げられたのか?」


 ブシュッ!


「くっ!」


 後ろから背中を下から上に切り裂かれ、たたらを踏み、なんとか持ちこたえる。


「逃げる訳ないじゃない。もうすぐロザリーの時間が来るわ。日が沈んだらロザリーは無敵よ。お前の影は覚えた。ロザリーの十八番は影渡り。一度通った影ならいつでも通る事が出来るのかしら」


「おいらなんでそんな事教えるんだ?」


「そりゃ、絶望が浮かんだ顔を見るのが好きだからかしら。まあ、今見えるのは目だけだけど。確かにお前は、強いわ。どうやって不死身に近い体を維持してるのかは分からないけど。所詮人間。ほーらなんかクラクラしてきたでしょう。私はね。たっくさんの病原菌をもってるのよ。さっきお前の背中から打ち込ませて貰ったわ」


 なんか、急に悪寒がし、体が燃えるように熱くなる。


「な、何をしやがった?」


「コウモリ熱よ。私はそう呼んでるかしら。2.3日くらい高熱が出るって病気よ。あらあら、大変ね、もうお熱が出てきたのかしら」


「絶対ぶっとばして、お尻ペンペンしてやるぞ。ガキにはお仕置きしないとな……」


「負け惜しみね。さすがに首を刎ねたらお前も死ぬかしら。ちゃっちゃと終わらせて。アルカディアの騎士達を早く追っかけないと」


 敵が疲弊した所を狙ったり、病原菌を使ったり、なんて嫌らしい奴なんだ。それに「影渡り」って何だ? 反則過ぎるだろ。


 まだ力が足りない。あと少し、あと少し力があればコイツを倒せそうなのに。ルシアンには燃やされそうになって、コイツには熱病を貰ってる。熱いのヤダ。トラウマになりそうだ。

 頭がクラッとしたと思ったら大地に横たわっていた。時間稼ぎのために体が地面に接している所から変幻茸の菌糸を地面に伸ばす。


 ブシュッ!


 飛んでる大コウモリの爪が伸びて、僕の首を切り裂く。血飛沫が舞う。そして、僕はコウモリが飛んで行くのを眺める。


 いなくなったな。


 地中に変幻茸で予備の血管を作って繋げていたから命に別状はない。けど、息が! 急いで首を繋いで大きく呼吸する。頭痛いし、さっき演出で血を使い過ぎたから少しクラクラする。

 何はともあれ、少し休むとしよう。



 このお話は他サイトノベルピアさんで先行配信しております。下にリンクを張ってますので、ぜひお越し下さい。


https://novelpia.jp/novel/2658



挿絵(By みてみん)


 この表紙絵が目印ですっ!


 読んでいただきありがとうございます。


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