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 第二部 魔国統一編 生還


 ボコッ!


 あー、マジで死ぬかと思った。


 僕は川縁の地面から顔を出す。モグラになった気分だ。太陽が眩しい。それにしても、人間死ぬ気になるとなんでも出来るものだな。僕は地面から抜け出す。相変わらず全裸だ。


 さっき僕はルシアンが一瞬目を離したスキに蝉の抜け殻みたいに鎧茸だけ残して、変幻茸を使い最速で地面に穴を掘り潜り込んだ。そして、ルシアンが居た方、要は川に向かって穴を掘り進み反撃に出ようとしたんだが、熱による僕の損傷が激しくどうやら気を失ったみたいだ。変幻茸の菌糸を伸ばして辺りに動くものが居ない事を確認して、今地表に出てきた。回復茸のお陰で怪我などは無いが、もう少しお腹が減ってきた。キノコ使いの能力は強力だけど、消耗が激しいな。

 ちなみに、呼吸は口から変幻茸の管を伸ばしてなんとかした。良かった、川縁で地面が柔らかくて。もし、ここがさっき通ってきた荒野だったら、僕は為す術無くやられていただろう。


 それにしても凶暴な奴だな。ルシアンは会話は通じたけど、聞く耳もたずだった。殺されかけたから、復讐してやりたいところだけど、今の僕では間違いなく返り討ちにあうだろう。とりあえず、もっと強くなるまでは、もし見かけたとしてもルシアンには近づかないようにしよう。

 まあ、それに僕自身にも、少しは非がある。鎧茸を纏った状態は自分自身では格好いい騎士のような外見だと思っていたが、他から見ると魔物にしか見えなかったようだ。


 あ、川に狼の毛皮が浮いてる。そうだ投げつけたんだったな。流れてなくて良かった。これは今の僕の全財産だからな。とりあえず、毛皮を回収する。上手く岩に引っかかってた。

 そして水面に自分自身を写しながら鎧茸で体を覆ってベストなスタイルを模索する。

 まあ、これでも貴族の端くれ。身だしなみは重要だ。

 兜、しかもフルフェイスは僕は大好きだし、なんかあった時に頭が覆われていないと不安だ。けど、どんなに頑張ってもキノコ兜を装備すると妖怪や、なんかキノコに操られてる人っぽくなるから諦める。戦闘になったら即装備するようにしよう。

 あと、筋肉茸も戦闘になった瞬間に使うようにしよう。体が極彩色のまだら模様になってるのを見ると、これも妖怪っぽい。

 そして、最終的に落ち着いた姿が、小手、胸鎧、腰鎧、脛当てにブーツの形に鎧茸を装備する事にした。なんか、貧乏剣闘士みたいだが、しょうが無い。服もってないもんな。鎧茸を纏ってない所は素肌丸出しで、お話とかに出てくる伝説の鎧、ビキニアーマーを纏ってるかのようだ。僕は男だから若干、いやかなり変態っぽい。パンツ穿いてないしな。けど、この装備が今の僕のベストだ。鎧茸で体全体を覆っていると、かなり動き辛いから、さっきのような有事の時に咄嗟に動けない。体の可動部分に鎧茸を装備してないのはそういう理由だ。

 そして、川縁で今の姿で軽く体を動かして、筋肉茸の即時召喚、鎧茸重戦士化などを試していく。


 なんか武器欲しいな。


 見渡して素材になりそうなのは岩と木くらいしか無い。岩は重そうだし脆そうだから木だな。力任せに適度な枝をへし折って小枝をむしり取って棒にする。太い枝を削って棍棒にする事も考えたけど、刃物が無いから時間かかりそうなので諦めた。棒を振ってみる。叩きつけたら強度的にすぐ折れそうだけど、突く分には若干マシだ。戦いに於いて間合いは大事だからな。リーチが伸びたのはでかい。

 リーチ、それなら地面に張った変幻茸の菌糸でなんか攻撃出来ないだろうか? 


 色々試してみたが、余り力が無いので、絡みつかせる事は無理そうだ。今度ルシアンに遭遇した時に、下から触手で絡め取ってやろうかと思ってたが諦める。

 けど、集めて盛り上がらせる事くらいは出来る。遠距離でこっちに向かってくる者の足を引っかける事くらいはできそうだ。頭の中でこっちに走ってくるルシアンを想像しながら、変幻茸で足を引っかける練習をする。地味だけど、戦闘で役立ちそうだ。

 そして、僕の頭に閃いたのは男のロマン。分身の術だ。変幻茸の力なら可能なんじゃ? 古今東西、冒険ものや格闘ものの物語とかではほぼ確実に分身の術を使う者が登場する。もう一人の自分を戦わせたり、攻撃でやられた時に「悪いな、それは分身だ」と言ってドヤる。うん、いい。まあ、そういう分身する奴は主人公より脇役やかませ犬の事が多いがこの際それは置いておく。


「キノコ分身の術!」


 適当に格好いい印を結んで技名を叫ぶ。必殺技は叫んでやった方がよりインパクトを与える事が出来るというのは僕の持論だ。

 地面から変幻茸の菌糸が持ち上がりより集まって人型を成す。


 失敗だ。


 なんか木の根っこで出来たゾンビみたいなものがゆっくりと動いている。なんか呪いの人形みたいだ。正直気持ちわるい。僕をイメージして作ったんだが、似ても似つかない。まあ、だが、なんかの約に立つ事はあるだろう。さっきみたいに身代わりにしたりとかで。


 ひとしきり、能力の確認も終わったし、最低限の身だしなみを整える事も出来たので、川伝いに下って行く事にする。多分下流には集落があるはずだ。

 今まで見た限り、川の上流には人がいた痕跡が無かった。さっき遭遇した魔族の女の子ルシアンは持ち物は大剣と服だけだった。魔法の収納持ちかもしれないけど、軽装でうろついてたと言うことはそばに集落がある可能性が高い。 



 このお話は他サイトノベルピアさんで先行配信しております。下にリンクを張ってますので、ぜひお越し下さい。


https://novelpia.jp/novel/2658



挿絵(By みてみん)


 この表紙絵が目印ですっ!


 読んでいただきありがとうございます。


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