セクシービキニ茸
他サイトのノベルピアさんで、第二部 魔国統一編を毎日投稿中です。第1回のコンテストに参加中で暴れまくってます。オリジナルの表紙つきです。ぜひ応援お願いします。
「アシュー! アシュー! アシュー!」
フレイヤが俺の名前を連呼する。相変わらず五月蠅い奴だな。
「なんだ? 聞こえている!」
つい、俺の語気が荒くなる。なぜなら、今俺は忙しいのだ。新しいキノコについての考察を脳内会議していたところなのだ。俺はフレイヤとは違いただウロウロ旅をしてる訳では無い。新しい土地で見つけた新しいものを魔界に送ったり、それらのものを参考に新しいキノコを開発している。この俺の旅が、魔界にさらなる発展をもたらしているのだ。
そんな俺が今しがた考案していたのが、『カニキノコ』だ。昨日立ち寄った町で食べたカニはたいそう美味だった。あのカニの味をキノコで再現するのはそこまで困難じゃ無いだろう。俺の十指の1人に任せてある、『魔道王キノコ研究所』にカニのサンプルを送ったから、程なくしてカニ味のキノコは誕生する事だろう。だが、問題がある。やはりカニと言えば殻から身を引きずり出す瞬間に至高の歓喜が生まれるものだ。綺麗に沢山の身が取れた時には、正直感動で体が震える。そう言えば、昨日、ズルリッと剥け出たその時最大のカニ身をそこにいる食いしん坊女にまんまと食われたんだったな。俺は食べ物程度で腹を立てる小物では無いが、この事は一生忘れない。いつかフレイヤにも同じ悲しみを与えてやる! 閑話休題、さすがにカニキノコでカニ身を引きずり出す感激や、甲羅を外した時のあの高揚感を再現するのは難しいか。まあ、キノコの性質上、あの身が裂ける食感は再現しやすいと思うから、カニキノコについては味と食感だけの再現の方向で進めるか。
「アシュー、アシュー、アシューさーん!」
くっ、またフレイヤが俺の高尚な思考の時間を邪魔する。なんだと言うんだ?
「もうじき天然温泉につきますよーっ!」
あ、そうだった。なんで俺らがこんな足場が悪い山道を登っているかと言うと、フレイヤたっての希望で、山の中にある天然露天風呂に入りに来たんだった。キノコに夢中でつい失念していた。
「アシュー、アシュー、足湯よ!」
目の前の少し開けたスペースに、岩に囲まれた小さな露天風呂みたいなのがある。丁度岩に腰掛けられるようになっていて、『足湯』と書かれた看板が立っている。
「ほう、足湯か。初めての体験だな」
「そうなの? とりあえずやってみましょう」
俺はフレイヤに促されて靴と靴下を脱ぎ、『足湯』なるものに挑戦してみる事にした。
「ほう、中々いいものだな」
足だけしかお湯に入れていないのに、なんだか体がポカポカしてくる。これはいいなそうだなカニキノコの次は足湯キノコを開発するか。今、俺が持っているドラム缶風呂キノコやジャグジーキノコを小型化するだけだからそう難しくは無いな。
「アシューが足湯に入ってる」
隣でフレイヤがなんかほざいている。
「気が効いた駄洒落を言ったつもりなのかもしれんが、全く微塵も面白くないぞ。俺ですら、即、頭に浮かんだが口にしなかったんだぞ」
「ふふふっ」
俺の辛辣な言葉にもフレイヤは終始笑顔だ。そんなに何が楽しいのか?
「じゃ、そろそろ本日のメインイベント、温泉にゴーしましょ!」
フレイヤは謎テンションだ。まあ、仕方無いか。俺は毎日お湯に浸かってるけど、コイツは多分毎日水風呂か体を拭ってるだけだからな。久々の入浴が嬉しいんだろう。
「うわ! すっごーーーい!」
フレイヤ大喜びだ。俺たちの目の前には大きな露天風呂がある。その横に脱衣所と思われる小屋がある。
「水着無いから裸で入るしかないわね。アシュー、一緒に入る?」
顔を赤くしてフレイヤが上目遣いに俺を見る。俺たちはしばし見つめ合う。
「一緒に入る訳ないだろ。俺はまだしばらく足湯を堪能させてもらう」
「嘘よ、嘘。本気にしないでよ。一緒に入る訳無いじゃない。アシュー、覗かないでよ」
「誰が覗くか」
そして、俺はフレイヤに背を向けて足湯へと向かう。もし、俺が一緒に入るって言ったら、フレイヤは何と答えたのだろうか?
「キャアアアーーッ!」
絹を裂くようなフレイヤの悲鳴がする。なんだ? 俺は即座に足湯から露天風呂へ向かう。
「アシュー、オーガよ、オーガ」
フレイヤが裸で、大事な所だけ隠してこっちに走ってくる。つい一瞬見とれてしまう。胸、でけぇな……
それは一瞬で、俺が目を向けるのは露天風呂の前に立つ角が生えた巨漢。ほう、あれがオーガか。片手に棍棒、そしてもう片方の手にはフレイヤの服を抱えている。痴漢か? どうする。あいつをぶちまけたらせっかくの温泉が台無しだな。
「オーガ如きが、俺のキノコを舐めるなよ! アシュー・フェニックスの名に於いて命ず。出でよ『ホーミングミサイル茸』!」
俺の目の前に召喚された、大人の胴くらいの太さのホーミングミサイル茸は過たずオーガに命中し、その体に突き刺さったまま遠くへと飛んで行く。そして、空で爆散する。きたねー花火だぜ。
「え、何アレ、あ、あたしの服……」
うん、フレイヤの服も爆散したね……
俺はフレイヤの方を見る。
フレイヤは恥ずかしそうにモジモジしている。当然、胸とお股は隠している。俺はすぐに目を背ける。
「デスベリー! ビキニ茸を出してやれ」
「承知いたしました」
どこからともなくデスベリーの声がする。そう言えば、フレイヤとデスベリーは同化しているが、いつもはデスベリーはフレイヤのどこに寄生しているのだろうか?
「フレイヤ、これで恥ずかしく無いだろう」
フレイヤの双丘と下半身をビキニ茸が覆っている。良かったもしもの時のためにデスベリーにビキニ茸の菌糸を渡しておいて。そして、双丘とお股の間に生えてそそり立つ立派なキノコ。デスベリーのセンスか? なかなか斬新な水着だな。
「ギョエエエエエエエエエエエエエーッ! なんじゃこりゃあ!!」
またフレイヤが叫んでいる。相変わらず五月蠅い奴だ。耳がキンキンする。
「心配するな。似合ってるぞ」
美人は何でも似合うって言うのは本当だな。
「こないなもん似合ってたまるか! 脱ぐ! 脱ぐ! 抜いでやる!」
「おいおい、はしたないぞ。脱いだら裸になっちまうぞ」
「黙らっしゃい! こないなもん着てるくらいだったら裸の方がマシじゃ、ボケェ! ゲッ! 脱げない! 脱げない!」
何をそんなにフレイヤは怒り狂ってるんだ?
「茸王様。この破廉恥娘が暴走しないようにビキニ茸から菌糸を伸ばしてこの娘の体と一体化させてあります」
「でかしたぞ。デスベリー」
俺も男だからフレイヤの裸に興味が無い訳ではないが、なんて言うか恥じらいを持って欲しいものである。
「破廉恥なのは、お前らじゃーっ!」
フレイヤは水着から伸びたキノコを引っ張って遊んでいる。頭大丈夫か?
そして、しばらくして、やっとフレイヤは裸になるのを諦めて、俺たちはゆっくりと温泉に浸かった。女の子が考えてる事はよくわからんよ。




