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 茸ハロウィン


「なんだ、この町は、アンデッドばかりじゃないか?」


「え、もしかして、アシュー知らないの?」


「何がだ? もったいつけず早く言え」


「ハロウィンよハロウィン!」


「ん、ヘロウィン? なんだそれは? 新種の麻薬かなんかか?」


「それはヘロインでしょ? ボケてるのそれとも本当に知らないの?」


「知らないから聞いてる。もういい。そんなの知らんでも困らないからな」


「もう、そんな事で拗ねないで。ハロウィンって言うのはね。みんなで仮装するパーティーみたいなものよ」


「と言う事は、アレは仮装なのか?」


「そうよ」


「なんか俺達だけ仮装してないってのは、逆に目立つな。そうだな。アレが使えそうだな。魔道王アシュー・フェニックスの名

において命ず。出でよ『着ぐるみ茸』!」


「うわ、ナニソレ? でっかいでっかいキノコ! え、中が空洞? な、何やってるのアシュー?」


「お前もさっさと着ろ。『着ぐるみ茸』は根元がすぐに取れる。俺が今やったみたいに着てみろ」


「分かったわ。ここから顔と手を出すのね。うわ、サイズぴったり。なんかカビ臭いわね。けど、意外に暖かいわね」


「フッ。まさか俺が心血を注いだ『着ぐるみ茸』が役に立つ日が来ようとは……」


「ねぇ、アシュー。あたしたち無駄に目立ってない?」


「まあ、そうだな。他には茸の仮装してる奴は居ないみたいだしな。それより、お前はとっても茸が似合ってるぞ」


「なんか、嬉しくないわね。なんかアシューの傘の所から粉みたいなの出てるわ」


「そりゃそうだ。茸だからな。これは胞子だ」


「アシュー。なんか生えて来てるわ」


「そりゃそうだ。胞子からは茸が生える。これで俺達も目立たなくなるだろう。しかも『着ぐるみ茸』は食える」


「トリック・オア・トリート!」


「なんだお前は? それは呪文か?」


「アシュー。子供を威圧しない! それはイタズラかお菓子をって意味よ」


「菓子か? 持ってないな。しょうが無いな子供には優しくしないとな。出でよ『甘露茸』」


「うわぁ、茸?」


「それは甘い茸だ。それを食べると甘い夢も見られる」


「アシュー! 子供になんてもの渡してるのよ!」


「冗談だ。ただ甘いだけの茸だ」


「キノコのおじちゃんありがとう!」


「え、キノコもらって嬉しいの?」


「お、おじちゃん……」


「まあ、しょうがないわね。けど、今、気付いたけど、あたしたちなんでキノコの格好してるの? ハロウィン関係ないんじゃ?」


「ハロウィンがなんかは知らんが、俺の茸を舐めるなよ! ほら見てみろ。町の連中も気付いて『着ぐるみ茸』を着始めてるだろ。これからこの町は末永くハロウィンというので茸の仮装をする者が出てくる事だろう」


 かくして、この町には数え切れない程の『着ぐるみ茸』が生い茂り、末永くその食料事情を助ける事になった。そして、この町ではハロウィンとはキノコを祭るものになったのであった。   Fin



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