生のキノコはダメですよ!
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「どうするのよ。アシュー、囲まれちゃったわ」
フレイヤが俺の手を引く。そんなの知ってる。相変わらず五月蝿い奴だ。確かに敵は多いだが所詮ゴブリン。この魔道王アシュー・フェニックスが相手にするには小物すぎる。
『茸王様、わたくしめが露払い致しましょうか?』
頭の中に女の声が響く。念話。遙か魔族の世界から俺に直接話しかけている。1の指ルシアン。この世界で言う所の所謂魔王の1柱にして俺の忠実な僕。
『駄目だ。お前はやり過ぎる。これぐらい俺が何とかする』
『かしこまりました……』
残念そうだな。まあ、もっと楽しそうな相手の時に遊ばせてやるか。
「グギョ、グガッ!」
俺たちの回りをゴブリン達が囲む20匹くらいか。どうするかな。そうだな、腹も減ってきたし、俺の知恵の凄さをフレイヤに見せてやるか。食事をしながらゴブリンを討伐してやるか。
「ふん、ゴブリンなど所詮低能なサルと一緒。見とけフレイヤ。人間様の叡智を」
「叡智? そんなものアシューにあるの?」
「失礼な奴だな。アシュー・フェニックスの名に置いて命ずる。出でよ『魔舞茸!』」
魔舞茸。言いにくい名前だ。俺の回りの大地から魔舞茸が生えまくる。
「ゲギョッ! ゲゲッ!」
ゴブリン達は驚いて後ずさる。茸如きに驚いて不甲斐ない奴らだ。俺は手にデリシャス茸を召喚する。所詮ゴブリンは獣。人を襲うの腹が減ってるからだろう。食い物を目にしてわざわざ危険な人間狩りはしないだろう。
「ほーら。見ろみろ。立派なキノコだぞー!」
僕は優しい声で、デリシャス茸を掲げてゴブリン達に見せつける。ゴブリン達の目は俺のキノコに釘付けだ。フレイヤの目も俺の立派なキノコに釘付けだ。デリシャス茸は素晴らしい香りを放つ。まあ、魔舞茸も結構いい香りがするんだがな。
俺がキノコを振ると、それに合わせてゴブリン達とフレイヤの視線が動く。そしておもむろに俺はキノコにむしゃぶりつく。
「う、美味いぞーーーーーーーーーっ!」
一気にデリシャス茸をかっ込むと、俺は両手を上げてその味の素晴らしさを表現する。
ゴクリッ。
何者かかが唾を飲み込む音がする。
「さあ、俺のキノコを口に入れまくれ!」
僕は食べるジェスチャーをする。これでゴブリン達も飢えを満たせる事だろう。
「「「グギョ! ゲギャッ! ゴゴッ!」」」
辛抱たまらんとばかりにゴブリン達は魔舞茸に群がる。そして勢いよく貪り始める。
「あ、アシュー。私も食べていいの?」
「フレイヤ。お前は人間だろ? もっと文化的に調理しようとか思わないのか?」
「そうね。たしかに。キノコって生よりも、塩振って焼いた方がいいわ、ギャアアアアアアアアーーーーーッ!」
なんかけたたましい声を上げてる。うるさい奴だな。
「あ、アシュー! ゴブリン達が……」
「当然だろ。舞茸は肉を溶かすからな。魔舞茸は肉を溶かしてそれを栄養にして成長してくんだ」
ゴブリン達は全て地に伏せてその頭は無くなり代わりに舞茸が生えている。しかも徐々にその浸食は首から下へも進んでいる。
「何よアシュー! あんたあたしにそんな危険なもの食べさせようとしたの?」
「うるさい奴だな。舞茸はしっかり火を入れると肉を溶かさなくなるから無害だ。むしろ美味しい。フレイヤ、そこに新しく生えたやつをむしって来てくれ。手袋はつけろよ。これでゴブリンを駆除して飯にもありつけて一石二鳥だ」
「誰がゴブリンから生えたキノコを食べるのよ。気持ち悪いわ」
「だが、お前もこれで勉強になっただろ。舞茸を生で食べたら口の中ジガジガするのは口の中が溶けてるからだ。キノコは生で食べられるものとそうでは無いものがある。生でキノコを食べる時には俺に確認するんだぞ」
「そもそも、生でキノコなど食わんわ!」
そして俺はゴブリンだった魔舞茸を焼いて美味しくいただいた。フレイヤは何故かそれを口にしないから、しょうがなく生で食える肉キノコをくれてやった。
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