15話 茸王、王都へ向かう
「アシュー、あなた、家族とアッシュが雇った暗殺者に殺されかけたのね……」
フレイヤが呟く。その美しい瞳に哀しさを湛えて。
「アッシュに会いに行く。何処にいる?」
俺はフレイヤに尋ねる。
「それが、アッシュも去年居なくなったの……」
フレイヤは目を伏せる。
「そうか……」
まずはここのドブネズミ達を片付けよう。
「ロザリンド、来い!」
「仰せのままに」
俺の影からロザリンドが現れる。
「今度は幼女……」
フレイヤは呆れた顔している。失礼だな。
「ロザリンド、この屋敷の人間を全て茸農場に運びこめ、死ぬまでこき使ってやれ」
アレックスとその部下達はどんどんロザリンドから伸びた影に吸い込まれていく。
俺の国では戦乱が収まったおかげで奴隷が少なくなって、茸を栽培する農場は慢性的な人手不足に陥っている。クズでも殺すのはもったいない。俺の為に役立って貰う。
こいつらは、これから自分達に生えた茸を食しながら一生俺の茸の世話をする事になる。魔族の看守に見守られながら。
俺に敵対したものはすべて、死ぬまで俺の茸の世話をさせてやる!
「行くぞ」
後かたづけが終わり俺は歩き始める。
「本当だったんだ、魔界に行ったのって……」
「ああ」
「あたしは、どんなにアシューが変わっても、なにがあってもアシューの味方だよ。アシューはどうなの?」
フレイヤは俺の目をじっと見つめる。その目は澄んでいてまるで宝石のようだ。
「ああ、俺だっていつでもお前の味方だよ」
俺はフレイヤの頭をガシガシしてやった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ありがとう、アシュー。何時でも帰って来ていいからな」
ケイン兄貴と俺はしっかり握手をする。
伯爵領の全ての住民には食用茸が行き渡り、攻めて来た帝国軍は茸兵とロザリンドが一蹴した。ロザリンドは屋敷が気に入ったようで拠点を兄貴の屋敷にしている。
「アシュー、早く行くわよ!」
フレイヤが俺の手を引く。
「おい、馴れ馴れしいな。なんでお前もついてくるんだ?」
『アシュー様、あやつを追っ払いましょうか』
頭の中にルシアンの苛ついた念話が届く。
『大丈夫だ』
正直事あるごとでウザイ。
「あたしも本当の事知りたいから。危険な事があっても茸王様が守ってくれるでしょ!」
フレイヤは満面の笑み浮かべる。それはずるい。断れなくなってしまう。
「ああ、じゃあ行くとするか」
俺達は王都に向かう事にした。親父ともう1人の兄貴に制裁を与えるのと、アッシュの行方を追うために。
けど、旅を楽しむのもいいかもな。美味いものも食いたいし、綺麗な景色も見てみたいし。
そんな事を考えながら、俺はフレイヤに引っ張られて行った。
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