12話 王がオーガに劣るのか?
「おう、坊ちゃん、気でも違ったのか? あれで生きてるのは驚きだが、また始末するだけだ。ケニー出てこい」
物陰から5人の黒装束が出て来て俺を囲む。残念だが、もうこいつらの処理は終わっている。俺が得意な屋内戦になったのがこいつらの運の尽きだ。俺は座ったまま足を組み替える。
ドゴッ!
天井の一部が崩落して、1人を押しつぶす。
「な、なんだ?」
その叫んだ1人はいきなり口を開けた床に呑み込まれ挟まれる。
ガッ!
あと1人は飛んできた壁に吹っ飛ばされて、もう1人は床に呑み込まれる。全員気絶させただけで殺してはいない。
あとは昔俺の靴を脱がしたケニーと言う奴だけだ。
「なんだ、お前は妖術師なのか?」
アレックスは警戒して後ずさる。
「え、アシュー、何をしたの」
フレイヤは訳が解らないのか呆然としている。
俺は自分の靴を踵を引きずってずらして蹴って遠くに放る。
「ケニー。一度だけチャンスをくれてやる。死にたく無ければ俺に靴を履かせろ」
俺の傍で呆然として佇んでいたケニーが我に返り、アレックスの方を見る。アレックスは頷き、ケニーは俺の靴を取って戻ってくる。そして靴を履かせてくれるがその時にチクッとした痛みがはしる。
「ヒャーッハッハッ。お前は馬鹿か暗殺者を自分から近づける奴がどこにいるんだ。腐っても脳みそお花畑のお貴族様だな」
ケニーは哄笑をあげながら右手を開いて見せつけてくる。中指に嵌めてある指輪から小さな針がでている。
「これはオーガスレイと呼ばれる毒だ。オーガですら一撃で殺す猛毒だ。のたうちまわって死ね!」
なんかこいつらオーガって言葉使いたがるな? オーガがそんなに好きなのか?
「王が、オーガごときに劣るとおもうのか?」
中々の出来かな?
「アシュー、何くだらない事言ってるのよ!」
フレイヤは辛辣だな……
「うぼっ、うぼぼぼぼぼっ!」
突然、ケニーは愉快な叫び声をあげながら顔を押さえてのたうちまわる。
そしてふらつきながらアレックスの方に歩いていく。目が見えて無いから上手く俺の力で床を動かしてアレックスの方に誘導してやる。
ケニーはちょうどアレックスの前で覆面をとる。ケニー、ナイスタイミングだ!
「ひ、ひいっ!」
フレイヤは軽く悲鳴をあげる。
「け、ケニー……」
アレックスは息を呑む。ケニーの顔には目、鼻、口、耳、体中の穴という穴からシメジのような茸が生えている。
「さっきこいつに茸の菌糸を打ち込ませて貰った。生憎俺にはあらゆる毒は効かない。よく目に焼き付けろ。それがお前の末路だ」
まぁ、末路と言っても気道は確保してあるから死にはしないのだが。こいつらをここで殺すのはもったいなさ過ぎる。俺の国でたっぷり働いて貰わないとな。
「これが『茸使い』の力か……恐ろしい力だな。けど、子供騙しにすぎねーな。暗殺者の力見せてやる」
そう言うとアレックスの姿は掻き消える。




