1話 奈落への転落
本日中に完結します。よろしくお願いします。
「じゃあな坊ちゃん。今度は大好きな茸にでも生まれ変わるんだな。ヒャッハッハッハッハー」
顔の右目の所に大きな切り傷がある男、暗殺者ギルドの幹部アレックスは僕の腹に痛烈な一撃を加えた。内臓にダメージを負ったのか、僕は嘔吐いて鮮血を吐き出す。僕はうつ伏せに倒れ、それを拭う事も出来ない。後ろ手に縛られていて立ち上がれない。
アレックスの後ろには5人の手下がいる。ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべて僕を見ている。僕は首を上げてその顔をじっくりと眺める。こいつらの事は忘れない。なにがなんでも生き延びて今日の事を後悔させてやる。
「グワーッ!」
僕の口から苦痛の叫び声が溢れる。僕のお尻を多分アレックスが踏みつけて僕の股間に激痛が走る。
「おめー、まだ14って事は、その茸もまだ未使用だろう。お前茸使いなんだろ、今すぐここで使ってみせるかぁ」
アレックスは僕のお尻を固い靴でガツガツ踏んでくる。
「「ギャハハハハッ」」
手下たちから下卑た笑い声が起きる。その中には女もいるのに下品な連中だ。
しばらく踏みつけられたあと、アレックスは僕の髪を掴んで顔を上げる。
「ブッ!」
僕はアレックスに血の混じった唾を吹きかける。
「きったねーな、このクソガキがもう少し遊んでやりたい所だけど気が変わった。もうぶっ殺す。お前らこいつを押さえとけ!」
手下の男と女が僕の肩を掴んで引き起こす。
「ケニー靴を取れ」
ケニーと呼ばれた男が僕の靴を脱がせる。そして断崖に揃えて並べる。僕が自殺したように見せかけるのか?
「念のためだ。死ねや」
アレックスは錆の浮いた汚らしいダガーを出すと僕の腹に突き刺した。
「ウギャーーッ!」
お腹に火がついたみたいだ。痛いのでは無くて熱い。
「ブッ!」
アレックスはポケットに手を入れて嬉しそうに笑うと、僕の顔に汚らしい唾を吐きかけた。
『汚いダガーと汚い唾をくれてありがとう』と、このあと何度も感謝する事になるとは、僕はこの時は微塵も思っていなかった。
「あばよ、穀潰しのくず野郎!」
アレックスがポケットに手を突っ込んだまま僕の腹を蹴り飛ばす。肩を掴んでいた2人は手を離し、僕は後ろにのけぞり、たたらを踏みながらなんとかその場に踏ん張ろうとする。その努力虚しく、僕の足下の地面は無くなる。
「ヒャーッハッハッハッハッハ!」
アレックスがポケットに手を突っ込んだまま、涙を流しながら笑っている。それが僕が最後に見たものだった。
「アアアアアアーッ!」
僕の体は奈落に真っ逆さまに落ちて行った。