プロローグ3・超能力
「私はね、俗に言う超能力者なんだ」
2人でマンションの階段を降りていると、千寿がいきなりそんな事を言ってきた。
「超能力者って、スプーンを曲げたりするアレか?」
「そうそう。まぁ、私の場合はそんな事はできないんだけどね……」
「は? なら何が出来るんだよ?」
「それは、さっき言ったじゃん」
「え?」
彼女は僕の前に出ると、こちらを見て、後ろ歩きで説明をし始めた。ここは普通の平坦な道ではなく階段のため、見ているこちらがヒヤヒヤとする。
「私の超能力は、他者の残りの寿命を貰ったり、その貰った寿命をまた別の人にあげたりすることが出来る能力。組織からは『生命与奪』とか呼ばれてる物だよ」
「ソシ……キ?セイメイ……なんて?」
「まぁ、一度で理解できないのは普通だから気にしないでいいよ」
「……」
「何よ?いきなり黙り込んで」
「いや、超能力って……」
あ、これ、頭大丈夫?とか言われるヤツだ、と千寿は思っだろう。
「頭大丈夫?」
「そのまんまかよ!? マジかよ!? 少しは捻っ
千寿がいきなり叫んだので、慌てて口を塞いだ。
「ま、まみを?(な、何を?)」
「(今は夜の11時だ、当然寝てる人もいるッ! 近隣の方々の睡眠を妨げるなッ!)」
「ふ、ふいまへん……(す、すいません)……」
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僕は、周りに人がいなくなったタイミングで、彼女に話しかけた。
「さっきの超能力の話……。あれって本当か?」
「え?そりゃあ、もちろん。ってか、嘘をつく必要ある?」
「ならさぁ……」
彼女に真剣な顔を向ける。
そして、懇願するかのような声で頼んだ。
「僕の母親の寿命を買ってくれないか?」
夜風が、彼女の髪をたなびかせた。