表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

プロローグ2・違う景色

 

  僕は、目の前の少女の言っている事が理解が出来なかった。それこそ、自分が聞き間違えただけなのではと思う程に。


「すいません。よく聞き取れませんでした」

「なんで、そんな人工知能みたいな言い方するの?」


  千寿(せんじゅ)は軽く首を傾ける。


「いや、聞き間違いだと思うんですけど。君が、僕の残りの命を年単位10万円で買い取るって聞こえたもので」

「確かにそう言ったよ?」

「は? それは、どういう事?」


  彼女は、面倒くさそうに頭をかく。


「やっぱり説明しないとダメか……」

「……お願いします」


  その時。まるで見計らっていたかのように、雨が降り出してきた。たとえ今が夏だとしても、夜に濡れた身体(からだ)で外にいると風邪をひいてしまうだろう。

  しかし、そんな事は、龍化(りゅうか)にはどうでもよかった。

  所詮、今から絶とうとしていた命。千寿(せんじゅ)に声をかけられていなければ今頃死んでいた命。

  本当にどうでもよかった。

  たった一歩を踏み出す。それだけでいい。


  なのに。


「あ……、れ?」


  それなのに。


「……な、んで?」


  その一歩がとても重く感じた。


 クスりと、後ろから小さく笑う声が聞こえる。


「ねぇ、君。今、死にたくなくなったでしょ?」

「うん。なぜだか分からないけど、今は絶対に死にたくない」


  そう、と彼女は軽く答える。


  先程まで見ていた景色が、また違った(ふう)に捉えることができた

  自然と笑顔がこぼれる。

  その時。ひょこっと、隣から千寿が顔を(のぞ)いてきた。


「な、何だよ……」

「君、いい笑顔(かお)するね」

「んなっ!」


  何だか照れくさくなり、思わず顔をそらしてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ