思い出に残れる後輩ですか
多分、一目惚れだった
すらっと高めの身長
整った顔立ち
少し着崩した制服
同級生だったらいいのにな__
なんて期待はネクタイの色を見てしまえば
儚く消え去るわけで
赤が基調のネクタイに
3年は黒、2年は銀、1年は金の刺繍が施してある
そして、その人のネクタイには銀の刺繍
1つ上の学年か、名前なんて言うんだろうな
何組の人かな、なにか部活に所属してるかな
姿かたちを見ただけ
学年がわかっただけ
たったそれだけなのに
高校生活は想像していたよりも
遥かに輝いて見えた
そんな高校初日から早くも2年が経とうとしている
あの後、入学式の翌日に行われた
新歓で、さっきの人がサッカー部なのを知った
その日から3日にわたって行われる
部活動体験は全てサッカー部に行った
元々球技の中でも好きな方だし
ルールも分かる
動機こそ不純だが
精一杯やれると思った
体験期間が終われば
直ぐに入部届けを書いた
サッカー部にマネージャーは居なくて
仕事を教えてくれたのは2年生だった
基本的にはこいつに教えて貰えよー
と言われたのはあの人で
顔が赤くなるのを必死で隠した
この人と、2年間部活ができる
2年間、話す機会がある
期待に胸が高なった____
けど、特に関係が変わることなく
先輩と後輩として、今日この日を迎えてしまった
『卒業式』
今日、この日が来ることなんか
ずっと前から分かっていて
覚悟だってしたはずだった
クラス代表だって、自分で手を挙げた
部活のお別れ会を企画したのもほとんど自分だ
なのに、なのに
なぜ、こんなにも涙が溢れるのか
気持ちを伝えなかったのだって
自分の意思じゃないか
後悔しない道を
また進める道を、選んだはずじゃないか
ほら、あの人は笑顔じゃないか
涙なんて流していないじゃないか
あの人に後悔はないんだ
あの人に心残りはないんだ
それでいいじゃないか
好きな人が笑顔なのが1番じゃないか_____
式も、お別れ会も全部終わって
片付けもして、あとは帰るだけ
でも、なんだか帰る気分じゃなくて
もう誰もいない3年の教室を訪れる
あの人の教室の
あの人の席
教室の窓から見えるソメイヨシノが
あまりにも綺麗で、また涙が溢れた
誰も聞いていない
誰も見ていない
行き場のなくなったこの気持ちを
未練がましく吐き出すことぐらい許されるだろう
「好きですっ……好き、でしたっ……」
『涙を流した分だけ、悲しみも流れていく』
誰かが、小さな頃に教えてくれた
この気持ちも、未練も
涙と一緒に流れていくだろうか
感傷に浸り出せば
後悔なんて、溢れ出てくるもので
もっと話しておけばよかった
もっと仲良くなりたかった
もっと一緒に居たかった
今更、どうしようもないのに
引っ越してから私が好きだったって気付く、みたいな
少女漫画的な展開があればいいのに
そしたら、すぐにでもOKの返事をして
休日返上で逢いに行くのに
あの人の中で、私はただの後輩でしかないんだろうな
可愛い後輩でいれたかな
あとを任せられる後輩になれたかな
思い出に残れる後輩だったかな
今だけ、今だけですから
貴方に想いを馳せることを許してください
2年間、とても短い間でしたが
貴方のことが、大好きでした______
なんか、スッキリせん終わり方になってしまった