雷様と携帯電話
リチャードは生唾をゴクリと呑み込み希の顔を見て問いかける。
「希さんのファッションと時空が関係あるのですか。」
「ノンはお腹出す格好が多いでしょ。ウエストのくびれを作るのに空間を捻じ曲げてるの。」
芽虹美は間髪を入れずにリチャードに言い、希に答える隙を与えない。
希は芽虹美に言い返す。
「馬鹿な事言ってないの。仮説で良いから解り易く説明しなさい。」
「つまりノンのお腹の中に龍が棲んでるの。中身そのものが龍かもしれない。お腹を隠すと龍は閉じ込められと勘違いして暴れる訳。」
芽虹美の突拍子も無い言葉にダイアナは
「ノンさんは龍と共棲してるんですか。」
と真顔で視線を芽虹美から希に移した。
「そう、胃袋が頭。十二指腸が首。小腸が胸。大腸は腹。直腸か尻尾よ。」
まるで見たように芽虹美が喋ると留学生の三人は真剣に聴いている。
「メグ、いい加減にしなさい。ここは食事する場所よ。」
希は芽虹美を睨みつける。
「やはりブラック・ジョークですよね。事実だったら龍になった姉が何処かで生きているかなと思いました。現実はファンタジーじゃないですもの。」
エリザベスは視線を落として喋った。
「ほら、見なさい。あなたの無神経な言葉はエリザベスを傷つけたのよ。」
希は自分の事を芽虹美に言われている間は呆れた顔をしていたが、今は険しい表情になっている。
「エリザベス、ごめんね。」
芽虹美は謝った。
「いえ、こちらこそ申し訳ありません。最初に質問したのは私達ですから。」
「メグ、今度はちゃんと答えるのよ。」
希は険しい表情のままそう言った。
「簡潔に言うね。身体で一番時空の歪みを感じるのがお腹なの。私は陸上の短距離やってるけど、内臓が前に引っ張られる感覚だと記録が伸びた。上だと走り幅跳びの記録がいいのよ。走り高跳びだともっと顕著かなって友達に聞いたけど彼女はそうじゃなかった。それで最初は風のせいだと思った。でも風向とは関係なかった。」
芽虹美の言葉に希が付け加える。
「私は最初聞いた時〈また、おかしな事を。〉程度だったの。でも本当だった。」
「希さんはどうやって感じるようになったんですか。」
ダイアナが質問する。
「軟体は毎日やらないと身体かすぐ硬くなるから、時間があれば色んな処でトレーニングするの。すると筋肉の伸びや筋膜の剥離が起きやすい場所があるような気がした。でも錯覚だった。筋肉や筋膜じゃなくて内臓が右に引っ張られたり左に引っ張られたり。筋肉のせいで体質だと気に留めなかったら、180°方向を変えて気付いた。時空がズレてる処で頭と脚の位置を逆にしたら引っ張られる方向も逆になる。つまり内臓が一定の方向に引かれる。この話をメグにしたら閃いたのか〈もしかして龍が昇る場所があれば重力が逆で正確には急激に滑り降りてるのかなぁ、竜の飛翔も。〉って言うの。それがさっきの龍と竜の話。」
希は少し長めに喋った。
「ノンは検証しないと気が済まない性格。だからお腹を大きく露出したり捲り上げてお腹を出し易い服装が多いの。自慢のくびれも見せつけたいしから私もさっきみたいに協力する訳。」
今度は芽虹美が付け加えた。
「私、お腹出すの好きだけどメグは所構わずやるから困るわ。露出狂ってコソコソ言われたり、SNSで〈今日は出してるよ。〉ってリアルに書かれる。半分はメグのせいよ。雷様におヘソ取られるんじゃなくて携帯で撮られて拡散されてる。」
希が言い終えるとエリザベスが
「試してみようかしら。」
と言い、ダイアナまでが
「私も。」
と便乗した。
「僕は幸せだ。」
と言うリチャードにダイアナは
「リチャードがいない時だけね。」
と言う。
「それはあんまりだ。」
リチャードは苦笑いをした。




