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1話

ーー俺は今、暗闇に閉じ込められていた。


(動けない、聞こえない、何にも見えない)


この暗闇はただ暗いだけではない。体は思うように動かせないそれは何か重りがつけられて動かしにくいわけでも、ましては何かに縛り付けられているわけでもなく、ただ体はあると認識しているのに動かない。


それは体だけではなかった。口もそうだ。動いていると認識しているはずなのに耳にはなんの音も聞こえてこない。自分が発する声だけではなく周りの雑音や風の音も何もかもが聞こえない。


暗闇は暗い。つまり見えない。それは分かっている、だが一切光の元となる光源がない場所なんてない。暗くても目が慣れていき少しずつ見えてくる。だけどこの場所は、この場所だけは本当に光源はなく暗闇しかなかった。


そんな俺がいる場所は……ブラックホールの中だ。


なぜ俺がブラックホールの中にいるのかというとそれは偶然だった。


いや偶然っていうレベルじゃないなかったな。


俺は宇宙飛行でもなんでもないので宇宙には行っていないし、地球の近くにブラックホールが出来て徐々に吸い込まれていっているってわけでもない。


それならなぜ俺がブラックホールに吸い込まれたのかそれは……突然として目の前に黒い穴が出来たからだ。そしてあっ、って思った瞬間にはもうすでにブラックホールへと吸い込まれていた。最初は何か考える間も無く吸い込まれたのでブラックホールとはわからなかったが、時間が経つにつれ、一切体が動かず、一瞬の音もなく、一筋の光もない場所、それは俺が思いつく場所として思ったのがブラックホールの中だった。


もしかしたら違うのかもしれないが別に名前を知ったからどうにかなるもんじゃないので気にはしていない。


そんなことよりどうしたらこのブラックホールから抜け出せるのかそれを考えている。


(ブラックホールって永遠に吸い込まれ続けて行き止まりはないって聞いたことがあったな)


嘘か本当かブラックホールには終わりがないと聞いたことがある。いや違うなおそらくだが観測出来ないというのが答えだろう。だってこの光すらない中をどうやって観測するというのだ、もしライトなど自ら光る物を持って行ったとしても無意味、意味がない。光ることができたとしてもそれを光だと認識すらできないだろう。それほどにこのブラックホールの中は暗いのだ。


(お腹……空かないな?)


ブラックホールに揺られる?こと…時計はないので体感的に1時間、吸い込まれる前が朝ごはんを食べようとコンビニに向かっていたのでお腹がぺこぺこなはずなのにお腹が空いていないことに気がついた。うん、満腹とか空腹とか熱いとか寒いとかなんも感じられないことに今更気がついた。


(眠くなってきたな~)


さらにあれから体感的に3時間、なんだか眠たくなってきた。食欲はないのに睡眠欲が出てくるって不思議だな~と思いつつそのまま目をつぶってるかはわからないけど寝た。


(おぉ~喉も乾かないし、トイレにもいきたくならない!)


何時間経ったんだろうか?眠っている間は意識がないので体感的にどれくらい時間が経っているかは分からないがここで新たに気がついたことがあった。まさに新発見、喉が乾かないことに気がついた。さらにトイレに行きたくならないということにも。トイレはまぁこの中にはないのでいきたくなってもトイレはないし、そもそも動けないのでよかったって言えるのか微妙なところではあるが垂れ流しにならなくて本当に安心した。


(ん?なんだがむず痒い?)


あれからどれくらい経っただろうか、1日経っているかもしれないし、もしかしたら1分も経ってはいないのかもしれない、だがもうすでに体感も狂いはじめ時間など数えてもいないし気にもしなくなりはじめてきた。そんな時に体のあちこちで何というかむず痒いという感じがしてきた。あくまでも何となく感じるレベルなのでしばらくしたら治るだろうし気にしないことにした。


(あれ?何だが痒い?)


さらに時間が経ったと思うが気にしていなかったがむず痒いのが痒いと感じられるまでになっていたことにふっと気がついた。だけどまぁ気にしないことにした。


(これはおかしい!)


失っていた何か大事なものを取り戻したかのように息を吹き返した。どうやら長いこと何もせず、何も出来なかった俺は意識が薄れていき朦朧となってしまっていたようだ。


よかったっと思うのもつかの間、意識を取り戻すきっかけにもなった体の異変について俺は対処しなくてはならなくなったのだ。


(痛い! 痒い! 痛い!)


体が全身作りかえられているかのような激痛が走り始めたのだ。体を何度も何度も引きちぎられるかのようなかつて味わったことのないような痛みに声にならない声をあげる。だがその声は口からは出ることはなく音になることなく俺の頭の中でしか響くことはない。


(痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!………!)


壊れかけたラジオのようにただ同じ言葉を何度も何度も繰り返し、しまいには壊れてしまったのか言葉にすらならなくなっていた。




ーーピコーン



『スキル【粒子化】を手に入れました』




頭の中に突如として誰かの声が聞こえた、そんな気がした。

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