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子育て竜の迷宮暮らし  作者: デビルピート
9/9

9 レベリング

[??年??月??日]【迷宮主になって4日目】19:34





 口周りについた、体液や食べかすを下を使ってべろべろと舐める。【竜】の迷宮主として肉体が変わったことで、下の長さ、太さ、可動性が良くなった。舌で、目やにを舐め取れる程だ。まぁ、舐めなくても《息吹》を纏えば普通に汚れとか無くなるんだが。


 湧いていた鱗虫を3匹残らず食べるとお腹がいっぱいになった。


「ごちそうさまでした、と、本当に美味かったよ。何でこんな美味しいのやら」


 見た目は、地を這うダンゴ虫が最終進化したみたいな見た目しているのに生で食っても、ぜんぜんたべれ る。内臓部分は少しビビったが、生まれたばかりで寄生虫も消化途中の食べ物も無くイケる。足部分は中身は神経が通ってるだけで、どうやって体を支えているの不安になるくらい。足単体だと今一歩だが、身や内蔵と一緒に食うと、肉の味が引き立つ。体の棘も似た感じだ。頭部は一番生理的に食いたくなかったけど、一口勇気を持っていってみると意外に美味。パリパリした頭殻の中に柔らかい肉が入ってる。これだけでも食が進むが、足や棘を折らずにディップしながら食べると根菜系のスティックサラダを食ってる気になる。肉だが


 ぱっと見虫系だけど姿形だけで中身はただの動きがとろい生きた旨い餌だなこりゃ。


「しかし、何でこんな美味いんだ?こんな美味くちゃ、ただの餌になってしまうのに」

『【施設】系統よりうまれる食料は魔力を使い味を向上できるだけ上がっておりますが、そこまで夢中になれるものでもなかったはずなのですが』

「俺が昔食ってた味を再現しようとしてるのかね。全然文句はないし、感謝したいくらいだ」


 よく分からないことは、置いといていま出来ることを進めていくことが大事だ。今の食事でどれくらいのレベル上げに繋がっているのかとか。

 早速、《低位鑑定》技能を自分に発動する。


 [ステータス情報]

 名称:レックス

 種族:迷宮主

 階級:騎士爵

 性別:男

 年齢:20

 職業:なし

 レベル:1

 経験点:1

 生命力:224/224

 魔力:192/192

 〈技能〉

 竜卵の産卵〈 Ⅳ 〉

 竜園の湧出〈 Ⅴ 〉

 竜境の千変〈 Ⅰ 〉 

 低位鑑定〈 Ⅰ 〉

 息吹(弱)〈 Ⅰ 〉

 魔力操作〈 Ⅰ 〉

 魔力感知〈 Ⅰ 〉

 迷宮管理〈 Ⅰ 〉

 〈特性〉

 精神汚染〈 Ⅰ 〉

 保温〈 Ⅰ 〉

 生命力自動回復(微)〈 Ⅰ 〉

 魔力自動回復(微)〈 Ⅰ 〉

 物理耐性〈 0 〉

 魔法耐性〈 0 〉

 感覚強化〈 0 〉

 竜語:共通〈 0 〉

 〈称号〉

 〈熱ある蜥蜴〉〈異邦人〉


「うん?微動だにしてないな、レベルが」

『1度の食事で劇的に肉体が変わる生き物は、そういません。毎日の食事がやがて強靱な肉体を作ります』


 食事もあくまでレベル上げの一助でしかないわけだ。というか、そんな簡単にレベルが上がってたら、話が早いんだがな。


『今後は、迷宮拡張の合間に食事も取り入れましょう』


 食事もしたし、今日も卵の周りで横になる。卵は、橙色の淡い光を放ちながら中で何か蠢いているような形作っているような動きが見える。《低位鑑定》技能で状態を確認しながら、実際に目でも傷がないか等確認していく。卵自体に鑑定が通るほどには生物として通用する竜の卵。柔らかい地面に置いてるとはいえ、素人の子守でも上手くやれてるのは喜ばしい。








[??年??月??日]【迷宮主になって5日目】4:35


 今日も今日とて、目を覚まして柔軟したあとは、朝飯を食いに入り口前の大部屋に向かう。四つの柱、手が届かない位置にある天井、俺が縦横無尽に動いても余裕のある空間。

 そこらかしこに、鱗虫もわさわさしておりいつもの風景というにはまだ慣れてはいないが、ぱっと見異常はないようだ。


 早速近くにいる鱗虫を拾い食事を始める、昨日と同じようにまるごといただく。三匹を食い、自分のステータスを見てみるがまぁレベル上がってないよねと確認してから、()()に座るとコアから驚く報告があった。


『昨晩、レックス様が就寝の間に侵入者がおりました』

「え、なにそれ怖い」


 自分の寝るところに無断で侵入されるという根源的な嫌悪感が心から湧いてくる。そして、ひとつの疑問が浮かんできた


「コアはどうして俺を起こしてくれなかったんだ?」

『危険が無いからです』

『そして、その侵入者は現在もいます』


 勝手に人の寝場所に入っておきながら、危険性はないってなると迷宮の魔物でも入ってきたのか。地味に背景と似ている為か何処にいるかまで目視では分からんぞ。

 そういうことなら、《迷宮管理》技能を発動しマップ上から【迷宮の魔物】を表す緑色の点が今寝ている場所にあるか確認した。

 すると、自分を表す青と緑が重なっているように見える。

 つまり、俺が座っているこの椅子が魔物だと。いい感じに座り心地がよさそうだから何となく腰を下ろしてしまったが、まさかの【迷宮の魔物】だったとは。


 座っている椅子が動き始めた。俺の重さなど感じさせない力強い動きだ。トゲトゲしてた鱗虫とは違い、ツルッとした表面。上からどいてまじまじと見る。岩っぽい見た目の置き椅子って感じの見た目だな。


「また違う見た目のが湧いたんだな。色々と湧くものなのか」

『いえ、その魔物は共食いをして生き残った個体が存在進化(しんか)した結果生まれた魔物です』

「え?!こいつらって共食いするのか?!魔物は魔力だけ食べてるエコな種族なのでは」

『魔物は確かに魔力さえあれば大人しいですが、それは知恵のある理性的な個体だけです。本能が強い魔物は、もうひとつの衝動に駆られます。それは、進化欲です』

 

 コアは、迷宮主は存在進化出来ないので関係ないと前置きをしながら語る。

 基本、魔物が通常の生き物と違うところは、環境への適応力では言い表せない程の肉体の変異。すなわち、存在進化(しんか)が出来るところだ。

 これは、個体ごとに求められる魔力と存在進化をしたいという欲から行われる。迷宮主の視点で観れば、レベルが高くなり、技能等を高い水準で収めた個体がなるものだと言う。


「じゃあ、迷宮主はそういうところもコントロールしなきゃいけないのか」

『そうですね。魔力を多く必要とする個体が増えると迷宮の魔力の絶対量が減少してしまい、迷宮が弱くなります』

「ん?特に、《迷宮管理》の技能でそういったものを見た覚えは無いけど」

『《迷宮管理》の位階が低いため、それに応じた機能しか使用できないためですね。見えないだけで、存在しない訳じゃありませんよ』

「それ聞くと、ますますレベル上げないとって思うわ。この下にいる岩虫みたいに、鱗虫を倒せばレベルは上がるかな」

『普段の日常生活レベルの負荷では、いわゆるレベルを上げる為に必要な経験は少ないです。命を懸けたものだからこそ、椅子になっているその岩虫、正式名称は大鱗虫といいますが、僅か1日に満たない時間で存在進化することが出来たのです』


 俺がレベルを上げるなら、それ相応の経験となる戦いが必要という訳か。


『しかし、それはあくまで《低位鑑定》で確認出来るステータス上の話です。《息吹(弱)》の特訓や迷宮の攻略させないための拡張、配下の強化など、技能では見ることが出来ない面を今は強くしていきましょう。出来ることからです』

「なるほどな、ありがとう、コア。じゃあ、まずはこの大鱗虫をどうするかを考えるか。俺としては、もっと強くさせる為に鱗虫を倒させようと思ったけれど」

『うーん、それはよくありません。レックス、あなたと同じ理由で格上の存在は格下との戦いではあまり経験値はもらえません。彼のステータスを確認して、向いていることを任せるのはどうでしょう。これからも大鱗虫が定期的に生まれるでしょうし、餌兼鳴り子代わりの鱗虫とは同じ運用はできません』

 論破されながら、それもそうだなということで早速《低位鑑定》でステータスを確認してみた。


[ステータス情報]


 名称:

 種族:大鱗虫

 階級:眷属

 性別:男

 年齢:0

 職業:なし

 レベル:14 level up!(+13)

 経験点:19

 生命力:42/66

 魔力:11/18

 〈技能〉

 毒生成〈 Ⅱ 〉rank up!(+1)

 栄養返還〈 Ⅰ 〉

 〈特性〉

 竜の体:劣〈 Ⅴ 〉rank up!(+4)

 鱗硬化〈 Ⅰ 〉new!

 爪牙強化〈 Ⅰ 〉new!

 強き体〈 Ⅰ 〉new!

 竜力察知〈 Ⅰ 〉


「生命力が増えてるのは分かるけど、レベルが上がった割には、そこまで増えてないな」

『そもそもが、餌ですからね。生命力や魔力の増加はあまり期待しない方がいいかと。よっぽど、戦闘型の特化してでもない限りは』

「正直いって、あの袋ネズミにすら勝てるか怪しいぞ。あの粘着力は強いからな。鱗虫には負けないって感じでしかない」

『その鱗虫には負けないので十分ですよ。俗に言う、群れのボス役にはなりますよ。魔物は進化するほど、基本的には格下を無闇に狩ろうとしなくなります。そこで、格下の近くにいさせることで、ある程度育った他の魔物を刈り取ります。つまり、一定範囲内の無駄な進化を抑えることができるのです』


 進化した魔物が増えすぎると、迷宮が弱まってしまう。しかし、進化した個体に進化前の個体を管理させることで、無駄な進化が減り迷宮が弱まることがなくなる。そして、進化した個体、より強くなると。いい具合に育ったヤツを食べて経験値にするわけだな。今回で言うなら、この大鱗虫に進化したてほやほやの大鱗虫は始末させると。


 俺もレベリングしてぇけど、虫相手じゃ経験値にならないな。俺がやるとしたら、社会を作る程度には頭良くて、武器をつくるような種族じゃないとダメそうだな。

 つまり、人間みたいな種族で養殖しないといけないのか。そう考えると、今から大鱗虫にやらせることってエグいな。


「考えはまとまったし行動に移るか」











[??年??月??日]【迷宮主になって5日目】18:04


 今日もまた、ひたすら壁を掘り、岩を運び、入口の穴に投げ捨てる。10時間以上の休憩1時間を挟んだ労働を終え、奥の方で寝る準備に入る……その前に今日はちょっとしたイベントがある。

 とある平和な国の人間から見ると酷く命を軽視した秩序に悖る出来事だか、争いごとが多い国の人間からしてみたらよくあること。命と命を懸けたやり取りが始まる。


 先ほど、新しく進化したばかりの大鱗虫が真っ直ぐに歩む。ある程度距離を詰めたところで、先に進化したほうも近づく。お互いの攻撃射程内に入ったところで、重心を低くして身体を押し合った。

 鱗虫は、その名通り甲殻の代わりに竜の鱗を纏った魔物だ。しかし、この竜の鱗がなかなかに重いらしく、移動するのがすごく遅いのだ。つまり、体を動かすのが下手糞。なので、鱗虫同士の戦いの場合、相手をひっくり返してお腹を出させればそこで勝負が決まる。

 野生の動物なら、最後までやらずある程度のところで終わらすだろうが、魔物は違う。特に、本能が強い虫系列は猶更だ。

 腹を曝したら、そのまま乗っかり、牙で腹を裂けばそこで勝負ありとなる。

 戦い自体は、心が躍るような激しい高揚は得られないが、カブトムシ同士の戦いを見ていてワクワクするような楽しさはある。それに虫だからあまりグロくないからな。


 徐々に、挑戦大鱗虫が少しづつ押されて、体勢を崩していく。ボス大鱗虫は、どんどん押し込んでいき、挑戦者をひっくり返した。

 そのまま、上に乗っかり腹を牙で裂いた。挑戦大鱗虫は最後まで、抵抗していたが、体を元に戻すことは出来ずそのまま負けた。

 

「んー、オッズが低い方が順当に勝ったって感じだなあ」

『兵士としての役割は求めていないので、先に進化した個体が負けたところで困ることはないですが、強くなるに越したことはないですからね』

「何気に冷たいこというなぁ。しかし、呑気に拡張して、配下を強化することが出来るのは嬉しいが、何故侵入者特に、知恵ある種族が入ってこないんだろ」

『私の記録では、停止する前までしかないので、外がどう変わってるかはまだ分からないんですよね。よっぽどの環境の変化が起きたのか』


 頭をボリボリ掻きながら、ボーッと大鱗虫の捕食シーンを眺めながら喋る。大鱗虫を見てたら、鱗虫の美味しさを思い出した。なんというか、寝る前の夜食を食べたい気分だな。


『せっかく育ったまとめ役を食べるのはオススメしないですよそれに成長した分不味くなってますよ』


 え、そうなの?


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