5 派生技能
[??年??月??日]【迷宮主になって3日目】
瞼がじょじょに軽くになっていく、頭からモヤが消えていき思考がハッキリしてくるのを感じた。頭に平坦な波がどんどん響いてくるのに気づいた。
『…スター、…きて………い。……クス様、も…、8…になり…すよ』
大きく息を吸い込み、休めていた体に力を端からいれていき、卵を割らないように起き上がった。卵用に作った窪みから少し、離れて、背伸び等をして体を動かした。やはり、この体の寝起きの良さは素晴らしい。俺は、昨日より大きくなっている最初に目覚めた部屋、仮称最奥部屋を見回した。
部屋は、《息吹(弱)》を応用した照明を設置したからほんのりと光が出て、より部屋を見やすくなっている。地面はほぼ平坦で、部屋の面積は縦35m、横35m、高さはコアの薦めで300mほど取っている。高さがだけがやけに高く感じるがこれでも成体となった竜にとっては低すぎて足りないというのだから、部屋の環境作りに魔力を大量と必要になる。何とかして、魔力を増やさないと迷宮を拡張することすらままならない。
他にもこの部屋には、必要な物があるらしい。それをコアから聞いたら魔力が本当に枯渇してしまう。魔力自動回復と迷宮の効果で1時間で10%ほどは回復するので、何とか部屋の整備や拡張を何とか終えれた。
「コア、今日もおはよう、昨日よりかは安全となった我が家での起床はよいな」
『はい、おはようございます。レックス様、今日はどうなさいますか?』
「そうだな、迷宮を拡張もしていきたいが技能をもっと上手く使えないかの実験もしたいな」
技能の応用の一環として《息吹(弱)》の照明として活用などと、この技能は火でも口から出すのかと思ったらそうではなくてエネルギーを生産し、放出する技能らしい。俺は竜系の迷宮主になったがまだまだ竜としてはかなり弱い部類に入るらしいが、それでも外の獣や攻撃性のある植物、岩石程度なら十分な損傷を与えられるとのこと。
コア曰く《低位鑑定》で見える技能とは、対象が扱うことができる技能だけではなく、全く使い方の分からない技能も載っていることもあるらしい。つまり、適正の話だ。この能力は対象の適正や特性、能力を把握してより効果的に迷宮の魔物を支配していくためのものらしい。因みに、どんな物に対しても発動するとの事だ。もちろん、低位なのであまり過信しない方がよいらしいが。
これを聞いた時、まさしく迷宮主として最適な技能だなと思った。配下の迷宮の魔物達をよりよく育て、強くしていくためにはありがたい技能だと思う。
『これらの技能を完全に熟達するのは容易ではありません。これらは、ある一定の上達を果たすと経験点から自動で1点振られ技能のレベルが上がります。そして、迷宮主はこの経験点を振ることが可能です』
「ほー、つまり本来なら何年も必要とする技能の熟練度を一瞬で上げれる訳か」
この《鑑定》技能は迷宮主にとっては基本技能とのことだ。つまり、自分も含めて全ての迷宮主はこの能力を使って、自らの配下を都合よく育てる。普通なら不可能な速さの成長ができるようになる訳だ。迷宮主が積極的に討伐されるわけがまた分かってしまったよ。
『はい、そして既に取得している技能の他にも取得することができる技能などもあります。それは派生技能です。この技能はある特定の技能及び特性のレベルを一定値上げると、取得可能になる技能です。それがどのような技能かは、経験点を技能か特性に振って上げてみないとわかりません』
「あー、その情報は権限をもってないとわからないということか?」
『いえ、単にその情報は存在しないだけです。種族特有の属性が無く、迷宮核だけの特化型迷宮主は初めての存在らしく、どのような進化をしていくかがわからないだけです』
また、異界人だからというハンデが現れたってか、種族特有の属性もあれば少しは参考になったということか。済んだことは仕方ないし、今あるもので何とかするしかないか。
『しかし、基本的に創造系統の技能のレベルを上げれば、役に立つ技能が覚えられるようになりますからをあげるのはお勧めしますますよ。レベルを4まであげれば大体の技能は派生技能を取得可能になるので』
経験点をどのように使うのがいいのか上手く使う方法が思いつかなかったし、勝手に経験点が振られるくらいならば俺が必要に感じている技能に振る方がいいだろう。
そして、《低位鑑定》を自分に使って《竜卵の産卵》に3点程振ったところで何か起きることも無かった。新しく技能を手に入れた合図も特に無かった。しかし、ステータス画面には新しい技能が出ていた。
[ステータス情報]
名称:レックス
種族:迷宮主
階級:騎士爵
性別:男
年齢:20
職業:なし
レベル:1
経験点:7
生命力:224/224
魔力:192/192
〈技能〉
竜卵の産卵〈 Ⅳ 〉
竜園の湧出〈 0 〉
低位鑑定〈 Ⅰ 〉
息吹(弱)〈 Ⅰ 〉
魔力操作〈 Ⅰ 〉
魔力感知〈 Ⅰ 〉
迷宮管理〈 Ⅰ 〉
〈特性〉
精神汚染〈 Ⅰ 〉
保温〈 Ⅰ 〉
生命力自動回復(微)〈 Ⅰ 〉
魔力自動回復(微)〈 Ⅰ 〉
物理耐性〈 0 〉
魔法耐性〈 0 〉
感覚強化〈 0 〉
竜語:共通〈 0 〉
〈称号〉
〈熱ある蜥蜴〉〈異界人〉
ステータス画面には新しく、《竜園の湧出》と言うスキルが表記されていた。技能レベルもゼロでまだどのようなものかはわからない。おそらく、レベルをあげれば使い方も理解し、扱うことができるようになるのだろう。今まで見たことも聞いたことも無いワザを。これは、本当に凄いな。俺は、《竜園の湧出》に経験点を1点だけ振り、技能の発動を確認した。
『どのような、技能でしょうか。系統的には、迷宮の魔物をより強化し、洗練させる施設系統の技能だと思うのですが』
「ああ、コア。まさしく、その通り。我々の配下にして、息子娘にして、強靭で恐ろしい竜になるであろう俺の、いや迷宮主の迷宮の魔物を大量に産卵させることに役に立つ能力だ」
◆◆◆
「《竜園の湧出》」
早速使うことしたこの能力、これは竜の群れをつくることすら可能にするだろう。レベルⅠの能力の概要としては、要となる核を創造し、どこか適当な迷宮内に置く、すると要核を中心に半径5mの内にいる竜の成長速度を上げることができるのだ!これだけなら、ただの強力な技能だろう。しかし、当然の様に、欠点も備えている。1つ目は、この技能をつかうのにコストが300もかかることだ。今は、後先考えず使ってしまったが迷宮の拡張のことも考えると、毎日使えるような能力ではない。ちなみに卵1つでコストは20かかっている。
2つ目は、効果範囲に入れる限度についてだ。範囲内に1個だけなら2倍になって素晴らしいのだが、2つにすると、1.5倍に、3つにすると1.3倍とどんどん成長率が落ちていくことだ。より高レベルの技能を使えば、もっとよい要核を作れるかもしれないが、おそらくコストが膨大なため、多くは作れないだろう。
そして、3つ目は1階層に1つしか置けないことだ。新しい階層を作るには、より多くの魔力と生命力が必要となるがまだ先のことなので置いておこう。問題なのは沢山置いて、効率を上げることはできないという事だ。コアは、余り置きすぎると迷宮が安定しないから迷宮主の本能で置けないなどと言っていたが、おそらく沢山置いても大丈夫な程、魔力量が増えれば幾つか増やせるかもしれない。
しかし、それを考慮しても十分に良い能力であろう。俺は、卵を2つ効果範囲内に置くことにした。小竜の卵を《低位鑑定》した所(孵化まであと5日と18時間)とあったのが成長速度が加速して、(孵化まであと2日と21時間)になっていた。
見た目は、《迷宮管理》で作った小さな穴に埋めただけだ。(卵を置きやすいように窪みは作っているが)要となる核は直径10㎝で手に収まる大きさだ。核の作りは、石のようなゴツゴツした鈍い黒色の外殻部分と中心からほんのりと橙色に光っている中心部分からなる。これ一つで300コストも必要と思うと、大事に使わないとな。
しかし、こういう能力があると言うことは、竜の成長方針は時間がかかるのかな。
「というか、コスト300はやはり疲れるな。魔力も生命力も限界に近いし。かなりだるい」
うん、ステータスがある程度の目安とはいえ、あれだけ使うと疲労感や頭痛、吐き気までしてくる。横になって休みながら、《低位鑑定》をしてみた。今の状態はこんな感じ。
[ステータス情報]
名称:レックス
種族:迷宮主
階級:騎士爵
性別:男
年齢:20
職業:なし
レベル:1
経験点:6
生命力:114/224
魔力:2/192
〈技能〉
竜卵の産卵〈 Ⅳ 〉
竜園の湧出〈 Ⅰ 〉
低位鑑定〈 Ⅰ 〉
息吹(弱)〈 Ⅰ 〉
魔力操作〈 Ⅰ 〉
魔力感知〈 Ⅰ 〉
迷宮管理〈 Ⅰ 〉
〈特性〉
精神汚染〈 Ⅰ 〉
保温〈 Ⅰ 〉
生命力自動回復(微)〈 Ⅰ 〉
魔力自動回復(微)〈 Ⅰ 〉
物理耐性〈 0 〉
魔法耐性〈 0 〉
感覚強化〈 0 〉
竜語:共通〈 0 〉
〈称号〉
〈熱ある蜥蜴〉〈異界人〉
今も少しずつは回復しているが、この状態が続くのは非常につらい。魔力自動回復に経験点を振るか?
「気になったんだが、経験点はどうやったら手に入るんだ?」
『種族のレベルを上げることにより、経験点は加算されます。それ以外には、方法は無いですね。レベルは生物無生物問わず、魔力や生命力をもっているものと戦ったり、殺したり、食ったりすると上がります』
やっぱり戦い、殺す必要があるのか、食ったりでもいいのは意外だが。これは要検証が必要かな、そもそも卵が孵化しないと意味のない話だが。
今日は、魔力が回復するまではゆっくりしておこうと思った瞬間、迷宮内に何かが侵入してきたのを感じた。