1 はじまり
[??年??月??日]
はっと目を覚ました。
目を開けても、周りは全く何も見えない黒い空間がどこまでも続いているように見える。明らかに自分の部屋ではないことに、いきなりの緊急事態に、混乱した。
「何なんだ、一体ここはどこだ」
声は響くことも無く、空間へと消えていった。前も後ろも上も下も右も左も黒い、黒い、黒い、黒い。下の方は、手で触るとふかふかの毛布に硬さを与えたような不思議な感触だった。
「何も見えないぞ、下は地面のような感じだが」
ふと、自分の服装が気になった為何となく体を見てみると何か違和感を感じた。先程と変わらず見えないのだが、何故か心細い。具体的に言うと、大事なところが守られてない気がする。
「もしかして、俺服を着てなかったりする?」
手をあそこに当ててみると、嫌な予想が当たった。簡単に言うと全裸だ。
「えー、マジかこれどういう状況なの?てか、自分ってこんなに冷静に物事考えられたっけ?」
今、思うと目覚めた時何故叫ばなかったのかと思うほど自分の今までの行動は自分らしくないと感じた。
「自分?自分らしくない?あれ、自分の名前なんだっけ」
背中に嫌な汗が流れた気がした。自分に関しての記憶も、この状態に関する記憶も全く思い出せないからだ。
「自分には記憶がないということを認識することはできるのだが、全く過去についての記憶が思い出せないぞ」
ヤバいなと思いつつも、どこか他人事のように自分の状況を観察している。
「このまま、考えてても埒が明かない。ちょっと歩いてみるか」
そして、歩いた瞬間、何かに躓いて
思いっきりこけた。
「痛っ……くない」
下がふかふかの謎素材のためだろう。本当、この空間何なのか分からなくなってきたが、足に躓いた何かが気になった。だって今までなにも見えず、聞こえずだったのだ。
「この何かがこの状況を解決してくれるといいのだが」
足元の方に、手を探りながら伸ばしていくと何か手が当たった。固い、そして熱い。物理的な熱さではなく、エネルギー的な何かあるように感じられた。
「いや、何で俺そんなこと当たり前のように分かるんだ?」
すると、頭の中に突然声が聞こえてきた。
『再起動用魔力を使い、【迷宮】を再起動します。なお、その際の【迷宮主】資格は貴方へと移されます』
「はい?というかダンジョンって聞いたことある名前だなー」
その瞬間、酷い頭痛が襲ってきた。鈍器で頭を殴りつけるような痛みではなく、頭が爆発するのではないかいうくらいの頭痛だ。それに加えて、体も内側からの激痛によるダブルパンチだ。
(死ぬ!?ヤバい、本当に頭が破裂しそうだ!?)
『【迷宮】の再起動に伴い、地上部の再活性化と魔力吸収も同時に開始致します。マスター、どうかいつまでもこの【迷宮】を管理、支配していきましょう』
頭への膨大すぎる負荷と体の痛みで何も考えてたくないほどの中、機械のように非常に起伏の少ない声が頭の中に聞こえていたのがそれまでの俺の記憶であった。
自分の趣味です